TOMAコンサルタンツグループでは、多種多様なテーマに合わせたセミナーを開催しています。その実績は3,000回を超えるというから驚きです。今回は数あるセミナーの中の一つ「国税関係書類の電子帳簿保存セミナー」の様子をリポートします。
目次
近年、需要が高まる国税関係書類の電子帳簿保存
毎年、ダンボール何箱分にもなる国税関係帳簿書類。滅多に使わないのに、保管義務があるため捨てられない。なんとか電子化に乗り出したいけど複雑な法律・システムを理解するのは難しそう。そんな思いを抱く経営者や経理担当者は多いのではないでしょうか?
それを証明するように2月13日(木)に開かれた定員50名のセミナーは満席御礼。会場は多くの来場者で賑わいました。講師を務めるのはTOMA税理士法人 ITコンサル部 部長、中小企業診断士の資格を持つ持木 健太氏。中小企業診断士になる前は学習塾の講師兼SEをしていたということで、専門知識を噛み砕いたわかりやすい解説が人気の講師です。
持木氏はセミナーの冒頭「海外に比べ日本は書類の電子化が遅れている」と話します。ペーバーレス化が進む韓国と比較すると、日本の大手企業における1人あたりの書類の保管量は韓国の約5倍。ペーパーレス化のメリットは規模が大きければ大きいほどその恩恵を受けるため、電子帳簿保存に関する問い合わせは中小企業だけでなく大手企業からも多いといいます。
また、「e文書法との違いは何か?」と聞かれることがよくあるそうですが、e文書法は国税関係書類以外の医療や建設、不動産に関わる書類も含めた電子保存の法律のこと。電子帳簿保存法で定められている国税関係書類は国税関係帳簿、国税関係書類、電子取引に係る電磁的記録の3種類。近年では、請求書や納品書をメールなどでやり取りをするケースも多くなっています。その場合、特に申請の必要はありませんが保存の義務は発生するそうです。このように今回のセミナーでは法律や申請方法のイロハから企業からよく聞かれる疑問に対する答えなども交えながら解説が進みました。
規制が徐々に緩和され、導入の敷居が低くなり始めている
持木氏のセミナーでは、主に以下の項目について展開されました。
1.なぜ電子帳簿保存法は創設されたのか?
2.国税関係帳簿書類とは一体何を指すのか?
3.最新の電子帳簿保存法の概要とは?
4.スキャナ保存の要件がどう緩和されたのか?
5.電子帳簿保存の承認申請で注意することは何か?
「どれも電子帳簿に関心はあるけど詳細がよくわからない」という人にとって、喉から手が出るほど欲しい情報ではないでしょうか。
電子帳簿保存法が創設されたのは平成10年。もともとは欧米が始めた取り組みでしたが、日本もその流れを汲み、法律が整備されました。平成17年度になるとスキャナ保存制度が導入されましたが、保存に関する要件が紙より厳しいだけでなく3万円以上の契約書、領収書などの保存は認められないという制約があり、ほとんど浸透しなかったそうです。それから10年。平成27年になると規制が緩和され、3万円以上の保存も可能になりました。さらに、平成28年にはスマホ、デジカメで撮影したものもスキャンとして認められるようになり、世に広く浸透し始めました。
令和元年には請求書・領収書等の電子化要件緩和、スキャナ保存の期間制限が緩和されました。具体的な緩和項目はタイムスタンプを付与するまでの期間です。例えば、これまで書類を受領してからスキャン・タイムスタンプの付与までの期間が固定型スキャナを使用した場合、「7日以内」という決まりでした。しかし、この規制が「おおむね7営業日以内」に変更されました。「おおむね」、そして「営業日」という表記が追加されたことで、ゴールデンウィークや年末年始といった長期休暇に入る直前に受領した書類のスキャン・タイムスタンプ付与が連休明けでも大丈夫になったのです。このように、セミナーでは最新の申請に関する情報も解説されました。
電子帳簿保存の導入と業務改善は同時進行で
では、なぜ年々規制の緩和が進むのでしょうか。それには大きく2つの理由があると持木氏は語ります。
一つは、国税庁は税務調査を効率的に行いたいという意向があるからです。帳簿や書類が電子保存されていれば、大量のダンボールから欲しい情報を探すのではなく、パソコンで検索をかけるだけで情報が得られます。そのため、電磁的記録の保存要件には見読可能性の確保、検索機能の確保といった「可視性の確保」も条件に組み込まれています。
もう一つは、グローバル社会の中で日本企業が勝ち抜くために必要だからと話します。日本企業だけ紙の保存等に多くのコストかけていれば、海外企業より不利益な条件で戦う必要があります。確かに、日本企業の成長は、国益に直結する問題です。国が本腰を入れるのも納得できます。
前半のセミナーではこのほかにも、書類の受領者が海外出張などで長期間、国内にいない場合はどうすればいいのか。郵送で送られてきた重要書類を経理が受領した場合、受領者は誰と考えるのか。万が一、入力、保存に不備があった場合はどうすればいいのかなど、よく質問が出るポイントを解説。長年のコンサルタントの経験からの事例を踏まえ、わかりやすく話してくれました。
最後、電子帳簿保存の導入について一番大切なことは「電子帳簿保存を導入・運用できる社内の体制づくり」だと持木氏はいいます。利便性の高いシステムを導入しても、社内にそれを使いこなそうという風土が醸成されていない。また、従来の業務にプラスオンする形で新システムを導入したため、逆に業務量が増えてしまったという事例を持木氏は何度も目の当たりにしてきたそうです。そのため、電子帳簿保存の申請と社内の業務改善は同時進行で進めるべきだといいます。
そして、「国税関係帳簿をデータ保存したいのか、国税関係書類をデータ保存したいのかによって申請の方法は異なります。すべてを同時に申請するのは大変なので、自社にとって最もメリットのある電子化は何かを見極め、段階的に申請するのがいいでしょう」と持木氏はいいます。
70分のセミナーはあっという間に過ぎ、前半のセミナー終了後には、持木氏の前に質問をする受講者の行列ができていました。
信頼の電子帳簿システム「DataDelivery」
セミナーの後半は、JFEシステムズ株式会社 プロダクト事業部 シニアセールスマネージャー 橋本 裕之氏、原田 聡氏によるシステムの採用事例についての紹介が行われました。JFEシステムズ株式会社では「DataDelivery」という電子帳簿システムの開発、販売を行っています。シリーズ累計において、2,300社以上の申請実績があります。※(セミナー開催時)
また、公益社団法人日本文書情報マネジメント協会(略称:JIIMA)の法務委員会に所属していて、実際に電子帳簿保存に取り組んでいる企業から出た情報をまとめ、所轄省庁などに要望をあげる活動も行なっています。まさに国税関係書類の電子帳簿保存のプロフェッショナルです。
「DataDelivery」が高い支持を受けるのは申請実績だけではありません。シンプルな分かりやすいシステムかつ、短期間で導入できるのも魅力。
また、数十万件の大容量の仕訳データであっても高速検索が可能です。
さらに、長年、国税関係書類の電子帳簿保存に関わる中で、顧客のニーズをひろいあげ、より利便性の高いシステムに仕上げています。JIIMAの法的要件認証制度を受けて、お墨付きをもらっているというから安心です。
「DataDelivery」で業務時間とコストを大幅カット
セミナーでは実際にシステムを導入し、ペーパーレス化を実現させた事例も紹介されました。最初に紹介されたのは、工業用ゴム・プラスチック製品の製造・販売などを行っている専門商社の事例です。販売先に発行する納品書と請求書の「控え」を全国にある事業所と、本社に保管するという二重管理が課題となっていたそうです。「DataDelivery」を導入後は、経理担当者のファイリングの手間、紙を倉庫に保管する必要も無くなり、クライアントの希望であった業務の短縮とコスト削減を実現しました。具体的には年間516時間の業務時間が短縮されたというから驚きです。
申請からみなし承認までは3ヶ月かかりますが、その3ヶ月の間にシステム構築も同時に進めたことによるスピーディーな導入もお客様に喜ばれたポイントだと原田氏は語ります。
まとめ
今回のセミナーでは、業務改善のプロフェッショナルと、システム構築のプロフェッショナルが連携してお客様の課題解決に取り組んでいることがよくわかりました。
セミナー費用は無料。個別相談も初回は無料ということなので、国税関係書類の電子帳簿保存を検討している企業は一度参加を検討してみてはいかがでしょうか?
業務改善・効率化の情報収集
電子帳簿保存を始めとした業務改善・効率化を実現するためには専門的なノウハウや最新の情報収集が欠かせません。TOMAコンサルタンツグループでは電子帳簿保存セミナーなど業務効率化に役立つ情報をセミナーを通じて提供しています。