「ロボットに仕事が奪われる」そんなワードを聞いたことはあるでしょうか。その正体の一つがRPAというロボットの導入です。しかし、人間の仕事が奪われて失業者が世に溢れるという話でありません。人間は人間にしかできない仕事に集中する、そのためのRPA導入なのです。今回はRPAとは何か、なぜ注目されているのかを徹底解説したいと思います。
目次
そもそもRPAとは何か
RPAとはRobotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)と呼ばれ、ホワイトカラーのオフィス業務の一部を代行するソフトウェアやその概念のことを言います。元々、RPAは欧米で誕生したシステムです。日本では2015年頃から導入が始まりました。2016年には日本RPA協会が発足し、2017年頃から導入する企業が急速に増えてきています。
「仮想知的労働者=デジタルレイバー」などと呼ばれ、従業員の一人にカウントしている企業もあります。一つの戦力としてRPAを認めた上で業務フローを構築する企業ほど、定着しているようです。RPAは「デジタル技術を用いて、『真の働き方改革』を実現させる」企業の生き残りをかけた最終兵器なのです。
RPA導入を検討し始めた企業から、必ずといって聞かれるのが「RPAはどんな機能が備わっているのか?」「何ができるのか」という質問です。RPAの機能は主に3つ段階に分かれており、業務の内容によって導入すべきシステムが変わります。
その1.RPA(Robotic Process Automation)
RPAの基本機能と言っても良いかもしれませんが、決められた業務、ルールに則った単純作業をミスなく、スピーディーに行います。例えば、Excelに記載されたクライアントの住所を地図アプリケーションで検索。地図をスクショしてWordに貼り付ける。フィールドセールスに出る営業の活動をサポートするツールとして、1日に何十回も同じ作業を繰り返している。
こんな作業はRPAに任せると良いでしょう。この他にも経理部門の帳票整理、人事部門の電子印鑑作成など、さまざまな部門のバックオフィス作業に利用されています。
その2.EPA(Enhanced Process Automation)
単純作業を一歩進化させた上位機能です。Enhanced Process Automation直訳すると「強化した手段の自動化」。主に、データの収集、そして集めた情報をもとに分析する機能です。ルールの決まっていない作業や、複雑な情報処理をすることができます。
例えば、過去の実績、営業の人数、市場変化など複数の要因を踏まえた売上予測を算出したり、アンケート集計から回答者の傾向を分析したりとRPAよりも複雑な作業が可能です。
その3. CA(Cognitive Automation)
EPAよりもさらに高度な作業が可能になるのがCAです。Cognitive Automationは直訳すると「経験的知識に基づいた自動化」。RPAに人工知能(AI)を埋め込んだように、学習及び自立した判断力を兼ね備えています。分析した情報やデータの中からCAが自ら判断し、意思決定までを自動化できるシステムです。
ディープラーニング、あるいは自然言語処理を可能とするより高度なCAもあります。膨大な情報データを活かし、経営戦略を立てる企業もあるようです。
以上のようにRPAはさまざまな使い方ができるツールです。自社の抱える課題に合わせた機能を選んで導入すれば、きっと企業の強い味方になるはずです。
企業でRPA導入が進む理由
では、なぜこれほどまでにRPAの導入を検討する企業で増えているのでしょうか。その背景を説明したいと思います。
その1.人口減少による労働力の減少
日本のみならず世界規模で進む高齢化は大きな社会問題となっています。それに加え、日本では少子化が進み、世界で最も早く超高齢化社会に突入。生産年齢人口は徐々に減少し、人手不足が常態化しているのが現状です。厚生労働省が発表した「日本の将来推計人口」によると、2053年には日本の人口は1億人を割ることが予想されています。
また、2065年には8,808万人になり、高齢化人口は4割に達する見込みです。社会の構造は今後50年で大きく変化するため、人間の働き方も変わらなければならない時期にさしかかっています。
その2.働き方改革の推進
国は前述した「少子高齢化に伴う生産年齢人口の減少」、そして「育児や介護との両立など、働く人のニーズの多様化」といった課題を解決する手段として「働き方改革」を推進しています。
就業機会を増やし、個人の持つ能力を存分に発揮できる環境を整えることが目的です。また、残業時間の制限や、年次有給休暇取得の義務化など、企業は従業員の限られた勤務時間の中で売上を最大化させねばならない事態に直面しているのです。
これまでのように長時間働いて、売上を伸ばすというビジネスモデルは今後通用しません。その中で注目されているのが、デジタル技術のイノベーションによって生産性を向上させるツール、すなわちRPAなのです。
その3.アウトソーシングの限界
労働を任せるに足りる人材の不足、働き方改革の義務化などの問題から、自社業務を他社にアウトソーシングすることで現状を打破するケースも増えています。しかし、どれだけアウトソースしても業務の成果に波があり、生産性の向上には限界があります。
その4.IT技術の目まぐるしい進化
製造業・建設業・鉱業などブルーカラーの現場では、作業工程全てを人の手で行っていることは稀です。これまでは職人と呼ばれる人材が細やかな作業をしていたものも、かなりのレベルまでロボットが再現できるようになっています。自動車工場でも、製造レーンではロボットが活躍しています。
RPAはブルーカラーにおける作業ロボットのホワイトカラー版です。これまでは人の手で作業しなければならなかった業務も、IT技術の発展によってロボットに代替させることが可能になったのです。
RPAとAIは何が違う?
「RPAとAIの違いは何なのか?」これもRPA導入を検討する企業からよくいただく質問です。ロボットに作業を任せるというと、人間のように意思を持ったロボットが仕事をするというイメージがありますがそうではありません。RPAは決められたルール通りに、ミスをすることなく素早く作業を行う機械です。
自動車工場のロボットが自ら意思を持って作業をしているとは思わないでしょう。それとおなじでRPAに「意思」はありません。AIには意思決定をする「学習能力」が備わっています。過去の流れや蓄積されたデータを分析し、自ら状況を判断します。
RPA導入によって得られるメリットは?
無料のRPAツールを利用するなら別ですが、ある程度の機能を有するRPAを導入するにはそれなりの費用がかかります。高いものであれば数千万円という高価なものも存在しますが、それだけの費用をかけて導入するメリットはあるのでしょうか。
メリット1.業務改善・効率化
RPAを導入することの一番のメリットは作業の効率化を図ることができます。業種業態に限らず、単純作業は全体業務の6割を占めると言われています。専門技術を要する美容業界や飲食業でもこの割合は変わりません。
例えば、美容師が勤務時間の6割を接客以外に取られているとした場合、RPA導入によって作業時間が減ればその分接客に集中することができます。結果、売上を伸ばすことにつながるでしょう。
オフィスワークにおいても、生産性のない単純作業をRPAに任せることができれば人間は人間にしかできないクリエイティブな仕事・生産性の高い仕事に専念することが可能になります。
メリット2.コスト・リスクの削減
ロボットに数百万、数千万というと「非常に高い」と感じるかもしれません。しかし、人間の数倍のスピードで、ミスなく作業をこなす「従業員の一人」として考えた場合、それほど高価でしょうか?一度導入すればランニングコストはそれほどかかりませんから、人件費と考えれば数年でペイすることが可能です。
「RPAに社員番号を与え、名簿に加えている」
「新しい企画を立てる時、RPAがある(いる)こと前提に組織を組み立てる」
というように、従業員の1人としてRPAを考えている企業も少なくありません。
また、RPAはライフイベントによる退職や休職のリスクがないこともメリットです。一度覚えた仕事は決して忘れませんから、雇用側、管理側の作業効率を上げることにもつながります。
メリット3.単純作業のミスが激減
「ていねいなミスの少ない仕事」をする従業員は会社の財産と言えます。しかし、人間はミスをする生き物です。その日の体調や気分、食前食後などさまざまな要因によって集中力が上下します。その点、RPAは覚えた仕事は24時間いつでも稼動が可能です。
帳票や顧客情報など、ダブルチェックをしているような企業にとって、RPAは心強い存在となるに違いありません。
RPAが得意とする業務は?
RPAは業務によって得手不得手があります。特にRPAに向いている業務として、以下の3つが挙げられます。
その1.規則性がある業務
毎日、毎月一定の工数をかけて行う単純作業や、入力に規則性のある業務はRPAが得意とする業務です。
- 書類の中に、未記入の箇所はないかといった不備のチェック。
- 問い合わせメールを内容別に分けて格納。
- クラウドシステムの情報をダウンロード、精査し自社基幹システムに登録…etc。
その2.同じ作業を何度も行う業務
コピーアンドペーストを繰り返す業務やワードの情報をエクセルに転記する業務、問い合わせ件数を集計してグラフ化する業務、日々の売上や商品を申し込んだ顧客情報を基幹システムに登録する業務など毎日・毎週・毎月繰り返して行う業務もRPAに向いています。
「そんなに時間がかからない、どうせ毎日やっているから手間でもない」と思うのは大きな間違いです。毎日30分の作業が短縮されれば、年間120時間。同様の作業を行う社員が10人いれば、1200時間の削減につながります。
この空き時間を別の仕事に従事できると考えたらRPAの存在がいかに重要かがわかると思います。
その3.パソコンのコントロールで完遂できる業務
・営業の日報から活動内容を集計する。
・集計した情報を各営業にメールし情報を共有する。
・売上確定後の事務処理作業…etc。
外部サーバーやアプリケーションとの連携など、多少作業が複雑であっても、PCで作業可能であれば、RPAに代替することができます。
以上のように、パソコンに張り付いて単純作業をしてくれる従業員を雇いたいと思うなら、人間の新入社員よりもRPAの方が断然有益です。
導入の際に気をつけることは?
RPAのメリットに触れると、経営者としては、「今すぐ自社にも導入してみたい!」と思うかもしれません。しかし、導入する際に注意すべきことがあります。
- 自社のどんな業務をRPAに任せるのか。
→闇雲にとりあえず導入しようと思っても絶対上手くはいきません。
まずは業務の棚卸から、課題抽出といった業務改善が必要です。そして、RPAに何をさせるのか、空いた時間を人間はどう活用するのかなど、細やかな計画を立てましょう。もし、業務改善の時点でつまずきそうであれば、TOMAコンサルタンツが一からお手伝いします。
業務改善コンサルティングについて詳しく知りたい方は以下をご参照ください。⇒業務改善コンサルティング
- その業務にあったRPAシステムの選定はできているか。
→RPAは現在たくさんリリースされています。自社課題を解決できるシステムの選定は大切なポイントです。
- 誰が主幹となり管理・運営をしていくのか。
→ITの専門知識が豊富でなければ扱えないシステムは多くありませんが、運用のリーダーがいないと社内に定着しない可能性があります。
- 導入後のPDCAを回し、他部門での展開も可能かどうか
→RPAを同部門でさらに展開できるかどうか、他部門でも応用できるかどうか、将来性も合わせて考えておくとなお良いでしょう。
RPAの導入手順
最後に、具体的なRPA導入までの流れを解説したいと思います。
手順1. 自社業務の「見える化」、RPA代替業務の選定
まずは、自社業務の棚卸を実施し、単純作業がどれほどあるか、その割合が全体のどのくらいかを把握しましょう。その中で、RPAに代替することで最も効果の上がる業務を選定します。費用対効果から選ぶ、業務改善度の高い順に選ぶなど、自社の課題に合わせて業務を選びます。
手順2. 無料トライアルを導入する
いきなりRPAを正式導入するのは、あまり得策とは言えません。なぜなら、一度導入してしまうと万が一失敗した時に変更ができないからです。無料トライアル期間があるシステムや機能が限定された無料ツールがリリースされている場合は、まずその導入から始めて試用するのが良いでしょう。
手順3. 試用導入から課題を抽出する
トライアルを行えば、「もっとこうしたい」「これができればより便利になる」など、必ず課題が見つかるはずです。それをただの意見で終わらせるのではなく、全員で共有し、より高いレベルのRPA導入を目指すことが重要です。トライアルのRPAで自社に合わせたカスタマイズが可能であれば、そのまま契約しても良いでしょう。
しかし、カスタマイズが出来ないなら別のRPAとの契約を検討すべきです。
手順4. 本契約、導入、運用
本格的に導入を開始したら、しっかりと定着するまでは主管がフォローをしましょう。そして、一定期間が過ぎたところで検証会議を行い、さらなるブラッシュアップが可能かどうかを検討します。また、上手く運用できているのであればさらなる業務の代替ができないか、別部門での展開を検討し、RPAの活躍の場を広げましょう。
RPAの導入で自社課題を解決する
必要であることがわかっていても、手間がかかる、面倒臭い、単純作業の繰り返しに倦んでくる。そういった業務はどの企業にも存在するはずです。そのような業務を文句ひとつ言うこともなく、延々と作業してくれるのがRPAです。
大企業の多くで導入が始まっていますが中小企業でも徐々に広がりを見せています。RPAの導入に必要なのは自社の現状把握からの課題抽出です。業務改善に本気で取り組もうとする意志をどれだけ持っているか重要なので、もし、導入を本格的に検討するのであれば、TOMAコンサルタンツにご一報ください。
初回の相談は無料で行なっていますので、RPAの疑問にお答えもしますし、御社の課題解決に合わせたシステムの紹介もさせていただきます。TOMAのRPAコンサルティングサービスに関してはこちらをご覧ください。