自社の組織について考える時、1人の上司が管理できるのは何人までだろうと考えることはないでしょうか。また、企業の成長について50人の壁や100人の壁があると言われますが、それは何故だろうと疑問を持つことはないでしょうか。
組織という仕組みが正しく機能することとメンバーの数は、無関係ではありません。組織を構成するのは人間だからこそ、私たちは人間が関わりを持てる現実的な範囲を知っておくことが大切です。
モンゴルの十進法とダンバー数
昔、モンゴル帝国には千戸制という仕組みがありました。支配下のすべての遊牧民を複数の千戸集団に編成し、それぞれ千戸長という指揮官を任命したそうです。
千戸の中は、百戸、十戸とピラミッド型の組織になっており、千戸長は10人の百戸長を、百戸長は10人の十戸長を、十戸長は10人の兵士を管理していました。どの隊長の下にも10人の部下しかいません。これは、どんなに優秀な隊長でも管理できるのは10人が限度であると考えていたからなのです。
編成された千戸は、軍事だけでなく政治、行政すべての元となり、千戸長は軍事指揮官でもあり行政官でもありました。この十進法の考え方こそが、大モンゴル帝国を築いたのです。
面白いのは、千戸を構成する遊牧民の出身はまちまちであったことです。有力な族長がそのまま自分の部族をひきいて千戸長になった例もあれば、まったく出身の異なる者同士を集めて編成されることもありました。ただし、敵対する者同士はあえてバラバラにしたそうです。組織を作るとき、一定の人間関係に配慮するということは、昔も今も変わらないようです。
また、ダンバー数をご存じでしょうか。ダンバー数とは、1人の人間が関係を結べるのは150人までであるという考え方で、イギリスの人類学者ロビン・ダンバーによって提唱されました。
ここでの関係性とは、気のおけない関係性です。町で出会った時に、自己紹介は必要ない、知らないふりをするより声を掛けるのが礼儀だろうとためらいなく挨拶できる関係性です。
ダンバーによるとこの数字は、単に顔と名前が一致するだけの関係性ではありません。佐藤さんと鈴木さんの2人に関わってもらいたい用事があるとしたら、佐藤さんと鈴木さんの関係を理解した上で働きかけるというレベルの関係性です。つまり150人という数は、人間が複雑な関係を維持できる上限という意味なのです。
また、この関係性は5→15→50→150というようにおよそ3の倍数で親密度が変わっていくそうです。関係性の限度が150人であれば、一番内側の5人は親友と呼べるほどの特別な存在だということです。
タテの関係とヨコの関係
モンゴルの十進法とダンバー数を自社の組織に当てはめて考えてみてください。すると、モンゴルの十進法はタテの関係性、ダンパー数はヨコの関係性の参考にできるのではないでしょうか。
いまや上司が管理する対象は、部下の仕事内容からモチベーションまで広がっています。定期的に1対1で面談をすることも求められていることを考えると、1人の上司が関わり切れるのは10人程度が限界であるということは、重要なポイントだと思います。
◉組織の人数をモンゴルの十進法とダンバー数で考える

また、会社としての一体感、拠点としての一体感を重視するのであれば、1人の人間が協力のために関わりを持てる限度が150人であるということも重要です。TOMAのように部門を超えた協力が当たり前の複雑な組織では、150人を超えれば拠点を分けるということを考えるべきなのかもしれません。
私たちが自社の組織を考える時、どうしても事業や機能といった役割に注目することになります。しかし組織を構成するのが人間である以上、人間の性質を無視して組織を作ったとしても上手くいかないでしょう。
もし皆さんの会社で問題が起きているとしたら、その原因は、社員個人の能力というよりも、今の組織が人間の性質に合っていないことかもしれません。
経営が上手くいくためには、社内に様々な仕組みを作る必要があり、組織もその重要な一つです。そして大事なのは、人間を理解することなしに優れた仕組みはあり得ないということではないでしょうか。
TOMAコンサルタンツグループ株式会社
代表取締役社長
市原 和洋
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<チェックポイント>
□人間が関わりを持てる現実的な範囲を知る
□タテの関係性は10人、ヨコは150人を限度とした場合に、現在の組織での問題点を考えてみる
□組織における優れた仕組みづくりのために人間を理解することに努める

