BLOG

専門家によるブログ

行政書士業務ブログ

一般社団法人の理事と監事の権限と責任

記事作成日2020/04/14 最終更新日2023/06/26

X
facebook
copy

一般社団法人の理事と監事はどのような権限が与えられ、業務の決定や執行はどのように行うのでしょうか?また、義務違反を行った場合は、どのような責任を負うのでしょうか?この記事では、これらの理事と監事の権限と責任について解説します。

TOMAでは定期的に無料のメールマガジンを配信しています。こちらもお気軽にご登録ください。お申込みはこちら。

1.理事の権限

一般社団法人の理事の権限には、業務執行権限代表権限の2つがあります。理事個人の権限の範囲は、その一般社団法人が理事会を設置しているか、していないかによって大きく変わります。

※業務執行:実際に法人の業務を執り行うこと、具体的な事業活動を遂行することです。

【業務執行権限について】

  1. 理事会を設置していない場合(理事会非設置型一般社団法人)

理事会を設置していない一般社団法人の理事は、定款の別段の定めがある場合を除いて、一般社団法人の業務執行権限を有します。
原則として、理事が2人以上いる場合は、理事の過半数をもって業務執行を決定します。

  1. 理事会を設置している場合(理事会設置型一般社団法人)

理事会設置一般社団法人の業務執行権限は、まず、業務執行の意思決定と、その業務遂行に分けることができます。業務の意思決定は理事会に、その業務遂行は代表理事・業務執行理事がそれぞれ担当します。

業務の意思決定→理事会
業務執行→代表理事・業務執行理事

なお、個々の理事は、代表理事・業務執行理事に選定されない限り、理事会のメンバーを構成するにとどまり、それぞれが業務執行権限を有しません。つまり、当法人業務の意思決定を行うメンバーの一員であるだけになります。

【代表権限について】

  1. 理事会を設置していない場合(理事会非設置型一般社団法人)

理事会を設置していない一般社団法人は各理事が代表権限を有します。したがって、理事会非設置型の一般社団法人の理事は、選定手続きを経ることなく、当然に代表理事になります。

理事が2人以上いる場合は、業務執行権限とは異なり、理事は各自一般社団法人を代表します。
なお、代表理事を選定した場合は、代表権限を持った理事を1人とすることも可能です。

また、その代表権限は、一切の裁判上、裁判外の権限に及びますので、そこに制約を加えたとしても、善意の第三者には対抗できませんので注意が必要です

  1. 理事会を設置している場合(理事会設置型一般社団法人)

理事会を設置している一般社団法人についての代表権限は、理事の中から代表理事と選定された者のみが有します。選定されなかった理事は、代表権限を有しません。
尚、理事全員を代表理事に選定することも可能ですが、その場合、理事会非設置の一般社団法人とほぼ同様の規制が入ります。

2.理事の責任

理事は、一般社団法人に対し、委任契約に基づいて善良なる管理者としての注意義務を負います。
また、理事は、このほかに法令、定款、社員総会の決議を遵守し、一般社団法人の為に忠実に職務を行う義務もあります(忠実義務)。
その他、一般社団法人には競業避止義務も課せられています。

理事が上記の義務違反を行った場合、一般社団法人に対し、これによって生じた損害を賠償する責任を負います。
尚、理事の一般社団法人に対する任務懈怠責任については以下の方法により免除または制限をすることができます。

1.総社員の同意による免除
2.社員総会の決議による一部免除
3.定款の定めに基づく理事等による一部免除(※登記しなければなりません。)
4.定款の定めに基づく契約による外部役員等の責任の制限(※登記しなければなりません。)

なお、一般社団法人の理事は、悪意または重大な過失によって第三者に損害を与えた場合、その第三者に対しても損害を賠償する責任を負います。

一般社団法人では、名誉職的に名前を貸して理事に就任する方が多いのですが、実際には一般社団法人の活動には関わっていない名前貸しの理事でも、これらの責任を負うリスクがあります。ですので、前述の善管注意義務や忠実義務など理事に課せられている義務を履行する意思がない場合は、理事への就任はお勧めできません。

また、理事として報酬を受け取っていない場合も同様です。役員報酬を受け取っていないからといってこられの責任を免れるわけではありません。

3.監事の権限

一般社団法人の監事は、理事の職務執行の監査を行う権限を持っています。

具体的には、いつでも理事や使用人に対して事業の報告を求めることができ、また、法人の業務及び財産状況を調査することができます。

もし理事が法令や定款等に違反する行為をすることで、法人に著しい損害が生じる恐れがあるときは、理事に対して、その行為をやめることを請求することができます。

このように監事は法人の運営が適正に行われるための重要な役割を担っています。そのため、監事は理事や使用人(雇用関係にある従業員)と兼任することはできません。

4.監事の責任

監事には、理事会への出席義務や理事会及び社員総会への報告義務、理事と同様に善管注意義務を負います。

これには、監事として名前だけ貸している、名誉職的に監事に就任しているなど、実際に一般社団法人の役員として活動を行っていない場合でも、監事としての義務は課せられます。

義務に違反した場合はその責任も負う可能性があるので、義務を果たす意思が無い場合は、安易に監事に就任することはお勧めできません。

また、監事としての役員報酬を受け取っていない場合も同様です。監事としての職務、義務、責任は報酬の有無とは関係なく課せられますので、注意が必要です。