企業が永続的に発展するために採用活動は欠かせません。ところがうまく採用活動ができずにミスマッチを繰り返してしまう企業も多いようです。今回は、採用活動をする上で大切な採用基準について解説します。
なぜ採用活動をしなければならないのか?
採用とは、求人広告や紹介などを通じて自社が必要とする人材を獲得する活動です。企業が成長していくには、採用活動は欠かせませんし、経営が順調な企業ほど積極的に採用活動を行っています。
頼りになる優秀な人材を多く採用できれば、企業のさらなる発展が望めるからです。ノルマをきっちり達成する営業マンは人件費の数倍、数十倍の売上を上げてくれます。業務をスムーズにこなすシステムを開発してくれる人材は、全社員の生産性を格段に向上させるでしょう。マネジメントに長けた人材は、会社の未来を切り開く優秀な後輩を育ててくれるはずです。
しかし、人を雇うからには人件費がかかりますし、優秀な人材を多く雇えばそれだけ人件費は嵩みます。また、採用にかかる費用は採用した社員の給料だけではありません。
●採用活動をする人事担当者の費用
●求人広告を作成し、掲載する費用
●採用した授業員の人件費
●教育にかかる研修やセミナー費用
●社宅や歓送迎会などの福利厚生費………etc
これらの採用に掛かる費用を「投資」として後の利益につなげるか、それとも「コスト」として抱え続けるかは、採用活動がうまくいくかどうかにかかっているのです。
特に、採用のミスマッチによって自社に合わない人材を雇ってしまうと大変です。会社に利益をもたらさない社員の給料は固定でかかるコストになってしまいます。また、自社業務をこなすだけの能力が足りない場合、教育を行うコストがかかります。
さらに、仕事をしない、あるいは目を離したらすぐにサボる社員がいる場合には、管理コストが必要です。一人のミスマッチ社員のために複数の人材の労働時間を割くことになってしまいます。
現在の日本のビジネスシーンでは、一度採用すると、客観的・合理的で社会通念上相当な理由がない限りは減給や解雇はできません。ミスマッチ採用は会社に多大な被害をもたらすため、綿密な採用計画、ミスマッチとならない採用基準が重要なのです。
採用基準を明確にする方法とは?
自社が求める人材とはどんな能力を有している人材でしょうか。
・頭の回転が早い人材
・専門技術、能力に特化した人材
・周りを巻き込むムードメーカー
・真面目にコツコツ仕事に取り組める人材
・話し手にも聞き手にもなれるコミュニケーション能力の高い人材
・時間を忘れて仕事に没頭できる人材
・相手の気持ちに立って仕事ができる人材
求職者はさまざまな個性を持っています。採用活動を成功させるためにまず大切なことは、自社にとっての「優秀」な人材の定義をはっきりとさせることです。どんな人材が自社にとって「優秀」なのかを明確にしておけば、採用担当者が複数いても同じ基準で採用活動が行えます。では、どのようにすれば、優秀な人材を導き出す採用基準を作れるのでしょうか。
その1.経営理念の実現に役立つ人材
何を基準に採用基準を決めれば良いのかわからない…。
そんな場合にまず立ち戻って考えるべき指標が「経営理念」です。経営理念とは、創業者の想い、会社が目指す理想像、社会における存在意義を表したものです。そして、経営理念は企業で働く社員にとって、すべての社会的行動における指針でもあります。
例えば、
「手段を選ばず売上をあげることに長けた営業マン」
「売上はそこそこだが、クライアントとの関係を築くことが得意な営業マン」
2人の求職者がいたとします。
経営理念が「100年続くお付き合い」だった場合、前者と後者どちらの人材が企業にとって「優秀」でしょうか。この企業では、お客様との関係を作ることに長けた後者の方が合っているかも知れません。しかし、経営理念が「100年続くお付き合い」であったとしても、会社が成長期にあり、競合他社の一歩先を行くために売上を伸ばしたいのであれば前者が活躍してくれるかもしれません。
このように、経営理念や中期計画に合わせ、採用基準は変化します。
・経営理念が社長の頭にしかない
・経営理念はあるが、ただのお飾りになっており、聞いても答えられない社員が多い
・過去に作ったもので現在の営業状況に合致していない
このような状況の場合、経営理念の作成または見直しをお勧めします。
その2.自社で活躍するための能力を書き出す
経営理念があり、それに基づいた経営が行われているという場合、自社で活躍できる人材はどんな能力を持っている人かを箇条書きにしてみましょう。
・仕事に対してどんな価値観を持っているか
・仲間や取引先との良好な関係を築ける性格か
・アクシデントが起きた時に的確な判断ができるか
・業務を遂行できる知的レベルを有している
いくつ書き出しても構いません。人事部だけで各部署に必要な適性能力を導くのは難しいので、採用をする現場の声を聞くのを忘れないでください。
その3.絶対に外せない能力を決める
書き出したすべての能力を有する人材が現れれば言うことありませんが、そんなにうまくは行きません。そこで、書き出した能力の中から「これだけは外せない」能力を3〜4個選びます。残りは「あった方が望ましい能力」という位置付けにします。
その4.NG条件を決める
外せない能力とは別に、面接や書類の中で「これがあったら不採用」というNG条件を決めておくのも一つの採用基準となります。
その5.各選考での基準を決める
面接を複数回実施する場合、どの面接で、どの採用基準を、どの程度適用するのかを決めます。例えば「志望動機」の場合、1次面接では「志望動機を簡潔に答えられるか」を基準とし、最終面接では「志望動機に対して深く掘り下げても論理的に説明できるか、矛盾はしないか」というように選考が進むにつれてレベルを上げていきます。
【番外編】選考者が抑えておくべき、選考基準にしてはいけない内容
厚生労働省は採用活動にあたり、「応募者の基本的人権を尊重すること」、「応募者の適正・能力のみを基準として行うこと」の2点を基本的な考え方として実施することが望ましいとしています。また、採用選考にあたり適正・能力と関係ない事項を面接で聞いたり、エントリーシートに書かせたりすることは職業差別につながるおそれがあると定めています。
●本人に責任のない事項
・本籍、出生地、家族、住宅状況、生活環境、家庭環境に関すること
●本来自由であるべき事項
・宗教、支持政党、人生観、生活信条、尊敬する人物、思想、購読新聞、雑誌、愛読書、労働組合に関する情報(加入状況や活動歴など)、学生運動など社会運動に関すること
●採用選考の方法
・身元調査などの実施
・合理的・客観的に必要性が認められない採用選考時の健康診断の実施
平成28年度にハローワークで行われた調査によると、家族に関することや思想、住宅状況といった内容が面接の現場で聞かれているようです。最近ではアットホームな雰囲気の面接を心がける企業も少なくありません。場の雰囲気を和ませ、応募者の緊張をほぐすために何気なく質問してしまうこともあるようですが、注意が必要でしょう。
(1)選考通過者が少なすぎる場合
選考基準が厳しすぎて通過者がほとんど出ない場合は基準の緩和を検討すべきです。
(2)そもそも志願者が集まらない場合
募集段階での基準が高すぎる、給与水準が低すぎるなどの可能性があります。スキルや資格を必須条件から歓迎条件に変えるなど、ハードルを下げる取り組みが必要です。
(3)外部環境に変化が起きた場合
新型コロナなど予測不可能な災害の影響によって失業者が急増することもあります。このように外部環境が大きく変わった際には採用基準の調整が必要になります。
(4)面接担当者によって採用した人材の質に差がある場合
採用基準を決めたのに合格者にブレがある場合、面接担当者間の認識にズレがある可能性があります。ミーティングの機会を設けて意思を統一する、わかりやすい採用基準に修正するなどの対策を講じましょう。
質の高い採用基準の構築にはクレドが有効
前項で、経営理念をもとにすることが採用基準を作る大切なポイントであることを解説しました。経営理念の見直し、または新たに作成をする場合、TOMA ではクレドの作成をおすすめしています。
クレドとは経営者の想いを言語化した経営理念、その想いを実現させるために達成するべき中期計画、日々の業務を行う際に心に刻んでおくべき行動指針などをまとめたカード型のツールです。
クレドの歴史は古く、その始まりは1943年アメリカの医薬品・健康関連用品を扱う「ジョンソン・エンド・ジョンソン」と言われています。同社の『我が信条』というクレドは大変有名で、同社を襲った倒産危機を回避し、社会的信頼の低下を防いだと今も語り継がれています。
日本にクレド経営が広がり始めたのは2000年代中頃です。食品の産地偽装やデータ改ざんなどの問題が頻出し、コンプライアンスの遵守やCSR(社会的責任)の強化が急務とされ、社員一人ひとりの意識改革が求められるようになった頃に導入する企業が増えました。
クレドにはさまざまな形がありますが、主に以下の3つの項目が記載されることが多いです。
●ミッション(使命)
企業が目指すべき理想像、達成すべき目的、企業の存在価値。
●ビジョン(目標)
ミッションを達成させるための中期計画や定量的な数値目標。
組織を強力に方向付ける要素となる。
●バリュー(価値)
業務を行う中で、社員が意思決定をするための行動指針や経営指針。
マニュアルやルールではなく、ミッション・ビジョン達成のための価値観をまとめたもの。
これらがまとめられたクレドカードを常に携帯するということは、社員にさまざまな影響を与えます。
・仕事に対するモチベーションの向上
・離職率の低下
・ブランドイメージの確率
・優良顧客の創出、売上の伸長
・従業員の結束、帰属意識の醸成
もちろん、企業の採用活動にも有効なツールです。その効果は大きく分けて3つあります。
まず、明確な採用基準を作ることができます。
自社で活躍できる人物像を明確にすることができるだけでなく、面接官による合否ラインのばらつきを揃えることが可能です。
次に、自社が大切にしていること、目指していることを外部にアピールすることができます。
求職者は自分が応募する会社がどんな企業なのかを事前に知ることが可能です。また、面接の際にクレドの内容を説明し、共感を得られるかどうかを確認することでミスマッチ採用のリスクも軽減できます。
最後に、クレド経営が定着すると、離職率を下げることができます。
離職率が下がることで、新たな採用活動を行う必要がなくなり採用コストの削減が可能になります。
TOMAの提案によってクレドを導入した企業では、さまざまな好影響が出ています。
・クレドを説明しながら採用面接を行なった社員は離職率が低い
・自身の仕事に誇りを持つ社員が増え、売上が伸びた。
・社員同士のコミュニケーションが活発になり、商品・サービスの品質が向上した…etc
以上、簡単にクレドについてご紹介しましたが、よりクレドについて知りたい方は以下の記事も併せてご確認ください。
・5分で理解!クレドの基本
・クレドが社員の意識を変える! 基本の「き」から徹底解説
TOMAでは、採用基準の見直しはもちろん、経営理念の策定・見直し、クレドカードの構築・作成まであらゆるサービスをワンストップで提供していますので、ぜひお気軽にお問い合わせください。サービスの詳細はこちら。