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行動指針が企業の未来を明るく照らす! 社員の気持ちと行動を導く方法とは?

記事作成日2020/12/25 最終更新日2022/04/18

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近年、行動指針を定め、浸透を図る企業が増えています。生産年齢人口の減少により人材の確保が困難になる中、企業にマッチした社員の育成、愛社精神の醸成、それらを結集させることによる業績のアップに行動指針が有効だからです。今回は、「行動指針とは何か?」という基礎から、現場への浸透方法まで解説したいと思います。

社員の気持ちを一つにする行動指針とは?

行動指針には、会社の現状を変えてしまうほどの力があります。

そんな馬鹿なと思ったあなたは行動指針の本当の力を知らないのかもしれません。もし自社に行動指針が無いのであれば、すぐにでも作った方がいいでしょう。行動指針はあるけれど、あまり成果がないと感じているのであれば、運用・浸透方法を見直しましょう。
会社の現状を変えてしまう、企業経営にとって行動指針はそれくらい重要な意味を持ちます。では、行動指針とは一体なんなのでしょうか。

行動指針とは、企業を形成する従業員一人ひとりの行動を正しい方向へと導くための規範です。
企業が目指す理想像、経営理念や目標(ビジョン)を達成するため、従業員が常に意識しておくべきルールといっても良いでしょう。
行動指針とはなにか

世の中に存在するほぼ全ての物事において、規範(ルール)があります。スポーツで例えるとわかりやすいでしょう。例えば、「サッカー」というスポーツがあります。サッカーにはキーパー以外、ボールを手で触れてはいけないというルールがあります。しかし、ピッチに立つメンバーが、このルールを知らなければどうでしょうか。みんなが手を使いボールを奪い合えば、もうサッカーというスポーツは成立しません。

これを企業に置き換えてください。日々、業務を行う中で、従業員一人ひとりが会社のルールを知らない、または、知っていながらルールを無視していたらどうでしょうか。それぞれがバラバラに好き勝手動いて収拾がつかなくなりますし、業績が上がるとも思えません。

行動指針には従業員が常に意識しておくルールを定めることで、社員の心を一つにする力があります。そして、行動指針が定着すれば、愛社精神・帰属意識の醸成にもつながるのです。

行動指針と経営理念は何が違う?

行動指針が会社にとって重要な要素であること、ご理解いただけましたか。行動指針の話をすると、よく「経営理念とは違うのか?」といった質問を受けることがあります。語感は確かに似ていますし、企業にとって重要という点は共通ですが、この2つは全く別のものです。行動指針との違いは以下になります。

●経営理念とは
会社の創業者あるいは経営者が、創業当時から大切にしている想いを表した言葉です。会社が経営を行う中で、決して変わることのない価値観・存在理由、そして最も大切にしている想いを表しています。

経営理念が「お客様第一主義」であれば、取引先やお客様を大切にしている企業だということがわかります。「世界の一歩先を行く技術開発」であれば、この世にまだないものを生み出し続ける先進性を大切にしているのだとわかります。

行動指針は従業員が日々の業務を行う上で参考にすべきルールなので、意味合いが違うのです。武道でいうところの「礼に始まり、礼に終わる」というのが、企業でいう経営理念と考えるとわかりやすいでしょう。行動指針は柔道や剣道の具体的なルールです。

行動指針が大切な理由と期待できるメリット

では、なぜ行動指針を導入する企業が増えているのでしょうか?どうして、行動指針には会社を変えてしまうほどの力があるのでしょうか?それは以下のメリット、効果があるからです。

その1.社員のモチベーションを向上させ、強固な帰属意識を育む

行動指針は、社員の仕事に対する姿勢を前向きにする効果があります。「どんな思いを胸にどんな行動をすれば正解なのか」という指針があると、社員は自信を持って仕事に打ち込むことができるからです。

行動の結果、売上目標の達成など成果が上がれば、それは社員にとってさらなる自信となり、社員のモチベーションを向上させるでしょう。また、行動指針が明確だと、全員が同じ価値観を持って行動することができます。それは、会社にとって必要な人材の発掘、能力を養うきっかけになります。

例えば、コーヒーショップの店員に求められるのはお客様に心地良い空間を提供する笑顔や清潔感、ホスピタリティ(おもてなしの心)、ラーメン店の店員に求められるのは長時間に及ぶ下ごしらえを愚直に行える精神や味への探究心だとします。

同じ飲食業界においても、求められる能力が全く異なるのです。行動指針を社員一人ひとりに浸透させることは、企業が必要とする人材の育成につながることがわかると思います。

最後に、同じ価値観を持って行動を続けると、組織内に一体感が生まれます。
社員全員が一つの目標を目指し、共に協力しながら仕事をしていると信頼関係が生まれ、愛社精神、帰属意識を育むことができます。
社員のモチベーションの向上

その2.経営理念の実現に近づく

行動指針に沿って行動した先には、事業計画・売上目標の達成があり、さらにその先には経営理念の実現があります。行動指針とは、企業が目指す理想像を実現させるため、社員一人ひとりに具体的な行動を促すものですから、行動指針に沿って行動をしていれば自然と社員の行動も一つにまとまります。

社員が一丸となり、行動指針を基に突き進めば経営理念の実現というゴールに近づくことができるのです。また、経営理念に忠実かどうかを図ることは難しいですが、行動指針に則って日々活動しているかは比較的容易に採点できます。

営業成績など目にみえる数値で人事評価を行う「定量的評価」と、勤務態度や仕事に対する姿勢を評価する「定性的評価」を合わせて採用している企業は多いと思いますが、行動指針はこの「定性的評価」の基準に最適です。
経営理念の実現に近づく

その3.採用活動に活用できる

大学卒業者の3割、高校卒業者の4割が3年以内に離職すると言われています。人口減少が続く中、苦労して貴重な若手社員を採用・教育しても、すぐに辞められてしまっては企業は成長機会を失ってしまいます。離職理由は千差万別だと思いますが、「企業風土が合わなかった」という理由が上位に来ることが多いようです。

経営理念だけでなく、行動指針までを募集要項に明示しておけば、企業の考えに賛同した社員を募集することができます。
採用活動に活用可能

その4.サービスレベルが向上する

「社員全員が独自に工夫を凝らし、事業のサービスレベル向上に取り組む」、そんなやる気に溢れる社員しかいない企業であれば問題ないかもしれませんが、実際はそこまで上手くはいかないものです。また、それぞれのサービスレベルを属人化・社員任せにしてしまうと個人差が生まれてしまいますし、全体の能力向上が望めません。

行動指針を定めると、さまざまなシーンにおける社員の行動・思考・価値観が共通のものとなるため、全体的なサービスレベルの水準を上げることができます。一点注意が必要なのは、「マニュアルと混同しない」ことです。マニュアルは決められた業務を機械的に行うこと。

「Aという事象が発生したらBの手続きをする」といったものです。行動指針は「Aという事象が発生したら、社員各自が自ら考え、CやD、E、Fの対応をする」というものです。行動指針には自ら動ける社員が育ち、お客様にも喜ばれる、一石二鳥の効果があるのです。
サービスレベルの向上

行動指針を作成するポイント

さまざまなメリットがある行動指針ですが、作成する方法や手順に決まりはあるのでしょうか。はっきり言って行動指針の作り方に決まりはありません。各企業がそれぞれ特徴・風土に合わせた指針を作ることができれば問題ないのです。

しかし、初めて行動指針を作成しようと思っている経営者、人事担当者にとっては、何から手をつけて良いのか困ってしまうと思いますので、作る上でのポイントをご紹介します。

ポイント1.経営層が自社をしっかり省みる

まず、行動指針に絶対的に必要なのは、経営層の自社をどうしたいかという確固たる意志です。

・顧客にどうなってもらいたいか
・社員にどう成長してもらいたいか
・社会にどんな貢献ができるか
・これらを実現するために会社がどうあるべきか

まずは経営層が自社をどうしたいのかをじっくり考えてみてください。それが行動指針の軸となります。

ポイント2.ボトムアップで作成する

行動指針を作成する際には現場の声を聞くことが大切です。経営層や人事だけで決めると「会社の考えを押し付けられている」「ルールの強制で社員をコントロールしようとしている」という反発の意識が生まれるからです。また、現場の意見を取り入れボトムアップで作成すると、その過程自体が行動指針の浸透へとつながります。

一定の規模になると全社員参加の会議は難しくなりますが、社員全員が作成に関わったという意識付けは大切です。そのため、行動指針作成に対する現場へのアンケート調査を実施すると良いでしょう。

最後にボトムアップでの作成では、必ず経営者が直轄で管理するようにしてください。経営層が直接関わっているということ自体が「本気の姿勢」として社員には映るからです

ポイント3.経営理念や目標の設定

自分の会社がどんな使命を持ち存在しているのか【経営理念・ミッション】
その使命を実現させるための具体的な目標は設定できているか【ビジョン】
目標を達成するために、社員がどんな意識・価値観で行動すればいいのか【行動指針】

以上のように、行動指針には企業の根底にある経営理念、そして、経営理念を実現させる目標の設定が不可欠です。

経営理念とは端的に言うと、」経営者の哲学や信念に基づき、企業の根本となる活動方針を明文化したものです。創業者の思いが形となったものでもあります。ビジョンは「売上額・利益額・店舗数・社員数・業界シェア率」といった定量的な数値目標です。

すでに経営理念や行動指針がある企業は、今一度間違いや現状とのズレがないかの再確認をしましょう。ない企業は経営層が中心となり、社員を巻き込んでゼロベースから作成しましょう。

ポイント4.クレドカードを作成し、社員に携帯させる

経営理念・ビジョン・行動指針は作るだけでは意味がありません。社員一人ひとりに浸透させる必要があります。そのためにはWebサイトに掲載しているだけ、事務所の片隅に掲げているだけ、年に1回の社員総会での確認程度では不十分です。

常に行動指針を確認できるよう、クレドカードを作成し、社員に携帯させると効果的です。
>>クレドについて詳しく知りたい方はこちら

行動指針を作成する時のポイント

クレドカードで行動指針を浸透させる

以上、行動指針について解説いたしましたが重要性や作成のポイントが理解できましたでしょうか。企業にとって重要な行動指針ですが、作成と同時に効果が出るというものではありません。社員に浸透してこそ、企業の文化として定着していくものです。社員に行動指針が定着していくと愛社精神の醸成、帰属意識の向上につながります。

行動指針を浸透させるためにはどうしたらいいのか。社員を巻き込んでクレドカードを作成することをおすすめします。

TOMAコンサルタンツグループでは、クレド作成に関する相談も随時受け付けています。自社のビジョン(目標)やミッション(使命)、バリュー(価値観)を明確にすることで、さまざまな課題の解決が期待できます。初回相談は無料ですので、お気軽にお問い合わせください。