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【2023(令和5)年度版】 地域別最低賃金の最新情報と今後の動向を考察

記事作成日2023/08/18 最終更新日2023/10/06

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2023年3月、物価が上昇する中、岸田首相は最低賃金の全国加重平均を1000円に引き上げる目標を示しました。2022年は31円の上昇幅で961円となり、話題になりました。今回は1000円を目指すため、これまで以上の賃上げが必要になります。

1971年に「地域別最低賃金」が設定されて以降、最低賃金は引上げが続いていますが、人事担当者の皆様にとって「賃金」は日々の業務に直結する話題ではないでしょうか。

今回のブログでは「地域別最低賃金とは何か?」という今更聞けない基本知識から今後の動向、対応方法まで最低賃金のいろはを解説します。

最低賃金とは何か

最低賃金とは、1959(昭和34)年施行の最低賃金法によって定められた、国が定める最低限度の賃金のことです。使用者は労働者に対して最低賃金以上の賃金を支払わなければなりません。たとえ労働者と合意の上であっても最低賃金未満の賃金での契約は法律により無効となります。

最低賃金には、『地域別最低賃金』と『特定最低賃金』の2種類があります。

地域別最低賃金

「地域別最低賃金」とは、産業や職種にかかわりなく、都道府県ごとに定められた最低賃金です。
地域別最低賃金は、①労働者の生計費、②労働者の賃金、③通常の事業の賃金支払能力を総合的に勘案して定められています。

2022年度の地域別最低賃金は東京の1072円が最大で、青森や秋田など11県が定める853円が最低です。
全国の最低賃金を都道府県ごとの労働者数を勘案し、平均した金額を「全国加重平均額」と呼びます。
2022年度の全国加重平均額は961円となっています。

特定最低賃金

特定最低賃金とは、関係労使が基幹的労働者を対象として、「地域別最低賃金」よりも金額水準の高い最低賃金を定めることが必要と認める産業について設定されている最低賃金です。
2022年3月31日の時点で、全国で227件の特定最低賃金が定められています。

最低賃金法違反は企業ブランドを大きく傷つける

最低賃金法で定められた賃金未満しか支払わなかった場合、最低賃金額との差額を支払わなければなりません。
地域別最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合は、50万円以下の罰金(最低賃金法)、特定(産業別)最低賃金額以上の賃金額を支払わない場合は、30万円以下の罰金(労働基準法)と罰則が設けられています。

また、最低賃金法など、労働基準関係法令に違反した場合、企業名と事案内容が公に公表されます。
企業ブランドを大きく傷つけるリスクがあるため、毎年改定となる最低賃金には最新の注意が必要です。

厚生労働省労働基準局監督課が2023年4月28日に公表した「労働基準関係法令違反に係る公表事案」では、2022年4月1日〜2023年3月31日までの1年間に、全国で61件の企業が最低賃金法違反で送検されています。

最低賃金で気をつけるポイント

最低賃金法に抵触しないと思っていても、気づいたら違法だったというケースも少なくありません。
最低賃金は以下の点に注意をしましょう。

1:地域別最低賃金は毎年変更する

地域別最低賃金は例年7月下旬~8月初旬頃に改定額の目安が公表され、10月から施行されます。
毎年更新されるものなので、忘れずに確認するようにしましょう。

2:最低賃金が適用される範囲

最低賃金は、パート・アルバイト、契約社員、派遣社員などの雇用形態に関わらず、すべての労働者が対象です。

研修期間中であっても、最低賃金を下回ってはいけません。一般の労働者より著しく労働能力が低いなど特定の条件がある場合は、都道府県労働局長の許可を受けることで最低賃金の減額が認められています。

3:地域別最低賃金と特定最低賃金、どちらも該当する場合

自社が地域別最低賃金と特定最低賃金の両方に該当する場合、金額の高い方が最低賃金として認められます。

4:事業所の所在地が異なる場合

本社と支社の所在地が異なる場合は、事業所のある所在地の最低賃金が適用されます。

5:時間給以外の報酬体系の場合

最低賃金は時間給で示されているため、日給や月給で賃金を設定している企業は、以下の方法で計算します。
・日給の場合:日給を1日の平均所定労働時間で割った額と最低賃金を比べる
・月給の場合:月給を1ヶ月の平均所定労働時間で割った額と最低賃金を比べる
最低賃金を下回らないように注意しましょう。

なお、最低賃金は毎月支払われる基本的な賃金が対象ですが、以下に挙げるものは最低賃金の対象とはなりません。
(1) 臨時に支払われる賃金(結婚手当など)
(2) 1箇月を超える期間ごとに支払われる賃金(賞与など)
(3) 所定労働時間を超える時間の労働に対して支払われる賃金(時間外割増賃金など)
(4) 所定労働日以外の日の労働に対して支払われる賃金(休日割増賃金など)
(5) 午後10時から午前5時までの間の労働に対して支払われる賃金のうち、通常の労働時間の賃金の計算額を超える部分(深夜割増賃金など)
(6) 精皆勤手当、通勤手当及び家族手当

令和5年度地域別最低賃金一覧表

全ての都道府県で地域別最低賃金の答申がなされました。

令和5年度地域別最低賃金額答申状況|厚生労働省

東京都の地域別最低賃金額は1,113円、全国加重平均額は昨年度から43円引上げの1,004円となり、昭和 53 年度に目安制度が始まって以降で最高額となりました。

最低賃金の上昇で、中小企業が取るべき一手は?

企業を経営する立場であれば、人件費をはじめとする経費はなるべく抑えたいところ。
一方、2022年度は消費者物価指数が前年度比3.0%上昇と、第2次オイルショックが起こった1981年以来、41年ぶりの水準となりました。

日本商工会議所と東京商工会議所が2022年4月5日に公表した「最低賃金引上げの影響および中小企業の賃上げに関する調査」よると、2022年に40.3%の会社が賃金を上げています。
また、45.8%の企業が「賃上げを実施予定」と回答しているなど、もう賃上げは社会的な潮流と言っても過言ではないでしょう。

この流れに乗り遅れると、従業員の生活を守れないばかりか、優秀な人材が待遇の良い企業へ流出してしまうリスクもあります。

最低賃金の引上げに対応するための方法は?

では、今後も引上げが予想される最低賃金にどうすれば対応していけるのでしょうか。業績が上向かないのに、賃上げを迫られても企業は疲弊する一方です。

今後の中小企業にとって、構造的に賃金引き上げに対応できる環境を整えることはこれまで以上に重要なタスクとなります。

方法は業種や企業規模によって様々ですが、製品やサービス価格の値上げ以外に、以下のような手段が考えられます。

賃金の適正分配

資格保有者への優遇措置、スキルマップの作成などにより、会社が必要とする人材の見える化により賃金を適正に配分する方法です。

賃金制度や人事制度の構築・見直し等により、賃金がより適正に配分されるシステムを構築します。
スキルマップ作成方法や活用方法についてはこちらの記事も参考ください。

生産性向上により生まれた予算を賃金に分配する

人材開発に注力したり、ITによる業務効率化などにより、生産性を高めることで売上の向上を目指すことも一つの手段と言えるでしょう。

最低賃金への対応はプロに任せる

業務標準化(業務マニュアルを作成する等)や、最低賃金のチェックなどの対応はその道の専門家に任せるというのもおすすめです。

特に、法的な項目に関しては疎かにした覚えはなくとも、勘違いなどから対応できていなかったというケースもあります。

最低賃金をはじめ、法令が頻繁に改定されるたびに対応を迫られていては本業に集中することはできません。
煩わしい事務作業がアウトソーシングし、販路の拡大など業績を向上させる施策に注力することで、賃上げにも対応できる環境を整えることができます。

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