2010年、65歳以上の高齢者の割合が21%を超えて超高齢化社会に突入したと言われてから14年。2022年の労働力調査では、高齢就業者は19年連続で増加し912万人となっています。一方で、若い世代の人口は減少し、転職を念頭においた働き方による定着率の低さもあいまって、人材不足に悩む企業が増えています。
そんな状況において、シニア社員の雇用は企業における共通の課題と言えるでしょう。
国も高年齢者等の雇用の安定等に関する法律(以下、高年齢者雇用安定法)において、65歳まで雇用機会を確保する措置を義務化するなどの法整備を実施しています。
シニア社員がのびのびと働き能力を発揮できる環境をつくれるかどうかは、企業の今後を左右しかねない重要な問題です。今回は、シニア社員が活躍できる職場環境の構築について解説します。
目次
シニア社員の雇用に関する法令
高年齢者雇用安定法は、少子高齢化が進行する中で経済社会の活力を維持するために、労働意欲のある人が年齢にかかわりなく活躍できる環境を整備するために制定されました。
現在は、65歳までの雇用の確保を目的に以下いずれかの措置を講じることが企業に義務付けられています。
・定年制の廃止
・定年の引上げ(65歳)
・継続雇用制度の導入(65歳)
また、2021年4月からは70歳までの就業機会の確保を目的に、「定年制の廃止」や「定年の引上げ」、「継続雇用制度の導入」に加え、「業務委託契約を締結する制度の導入」、「社会貢献事業に従事できる制度の導入」という雇用以外の措置を講じるように努めることが企業に求められています。
シニア社員の働き方が見直されている理由
では、なぜ国はシニア社員の活躍の場を確保しようとしているのでしょうか。
最大の要因は少子高齢化です。
深刻な人口の減少は歯止めが効かず、団塊の世代が75歳となる令和7(2025)年には、65歳以上が全人口の30%になると言われています。令和22(2040)年には、総人口は1億1,092万人に減少し65歳以上は全人口の35%になると推計されています。
そんな状況において、相応の能力を持ち、労働意欲のあるシニア人材に注目が集まるのは必然と言えるでしょう。2016年には「日本一億総活躍プラン」が閣議決定するなど、国も本腰を入れています。
近年では、女性・高齢者の労働参加が進み、労働力人口・就業者数は増加傾向にありますが、2012年以降は慢性的な人手不足が続いているのが現状です。コロナ禍が明けた令和4(2022)年以降はこれまで以上に人手不足に悩む企業が増えています。
シニア社員の働き方の実態
では、現在シニア社員はどの程度が労働に就いているのでしょうか。
2023年に厚生労働省がまとめた「高年齢者雇用状況等報告」によると、常時雇用する労働者が21人以上の企業における65歳までの高年齢者雇用確保措置の内訳は、定年制を廃止している企業は3.9%(9,275社)、定年の引上げをしている企業は26.9%(63,772社)、継続雇用制度を導入している企業は69.2%(163,768社)となっています。
70歳までの高年齢者就業確保措置を実施している企業も29.7%と前回調査よりも1.8ポイント増加するなど、シニア社員の働ける環境が少しずつ広がっています。
どのくらいのシニア社員が存在しているか
同調査において、社員31人以上の企業における60歳以上の常用労働者数は約457万と、2014年の調査と比較すると、約170万人(59.0%)も増加しています。今後もシニア社員の割合は増加傾向が続くでしょう。
シニア社員をどう雇用し、どんな業務を任せていくのかについて真剣に向き合う時が来ています。
シニア社員を雇用するメリット
では、シニア社員を雇用することのメリットは何でしょうか。
メリット1:人材不足の解消
真っ先に挙げられるメリットは人材不足の解消です。
また、新卒とは違い自社業務にフィットした経験豊かな人材を採用できる可能性があるなど、即戦力としての活躍が期待できるかもしれません。特に、専門性の高いスキルや知見を要する業務においては、若さよりもシニア社員の方が有用なことも少なくありません。
また、シニア社員のITリテラシーについて懸念されますが、総務省がまとめた「情報通信白書(2021)」によると、60代の7割以上がスマホやタブレットの利用を日常的に行っているという結果が出ています。
50代は9割以上となっており、今後はこの懸念も徐々に緩和されていくでしょう。
メリット2:後人の育成
これまでに培った業務に関するスキルもちろん、人生を通して得た経験を若手へと引き継ぐことは、シニア社員にしかできないことも多いです。
マニュアルだけではフォローできない現場の意見や知識を後人に伝えていくことは、企業力のボトムアップに繋がります。
会社と社員の意向に沿ったシニア社員の働き方とは
シニア社員の活躍のためには人事制度の構築が重要です。
まずは、自社におけるシニア社員の『活用方針』を明確にすることが第一歩です。
例えば、慢性的な人手不足、マネジメント層の不在に悩む企業では、60歳以上の社員を積極的に採用していく方針となるでしょう。
一方で人手が足りており、次の世代へのバトンタッチを進める場合においては、業務内容や責任の程度を軽くする方針となります。
シニア人材の活用方針が固まったら、次に『働き方の検討』を行います。
シニア社員を多く抱える企業では、社員一人ひとりの意向を尊重することも重要です。
1.正社員と同様の役割・労働時間
60歳を過ぎても他の社員と同様にバリバリ働きたいという社員もいるでしょう。その際には正社員と同様の役割と労働時間で働いてもらいます。パフォーマンスが著しく低下した際の処遇を定めておくことも大切です。
2.役割を小さく・労働時間は同様
多くの部下を抱える責任感、売上を伸ばすプレッシャーから解放されたいという社員には、役割を離れた働き方を提案します。
3.役割を小さく・労働時間は短縮
労働意欲はあるけれど、定年を迎えたら家族との時間や趣味などプライベートを充実させたいという社員には定型業務のみに従事してもらうのも一つの手段です。
短時間勤務、週休3日や残業なしなどフレキシブルな働き方を用意し、モチベーションを維持して働ける環境を整えましょう。
最後に、シニア社員の『処遇の決定』です。働き方に合わせた給与体系を構築します。
基本給、賞与、各種手当の水準や算定方法も決定しましょう。
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