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【2024年版】5つの人事労務関連法改正をわかりやすく解説!人事労務担当者必見!

記事作成日2023/11/19 最終更新日2023/11/19

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経営者・人事労務担当者の方々にとって、毎年行われる法律の改正・新設情報は常にチェックしておきたいものです。

昨年は割増賃金率の引き上げなどいくつか重要な改正がありましたが、今年も、多くの業種で労働条件通知書の見直しの明示事項の追加が必須になるなど、4月1日からいくつかの労働に関する法律が改正されます。

今回のブログでは、経営者・人事労務担当者が押さえておきたい2024年の法改正情報について解説します。

法律の概要はもちろん、企業としての対応についてもまとめていますので必見の内容です(2025年版は下記をご覧ください)

1.労働基準法改正:時間外労働の上限規制の変更

2020年4月1日から中小企業では、時間外労働の上限規制が導入されています。具体的には、臨時的な特別な事情がない限り、時間外労働(休日労働は含まず)の上限は原則として、月45時間・年360時間に収めなければなりません。

臨時的な特別な事情があり、労使で合意が成立した場合でも、以下の要件を満たす必要があります。
・時間外労働は年720時間以内
・時間外労働+休日労働は月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内
・原則である月45時間を超えられるのは年6か月まで

すでに施行されている法律ですが、これまで建設事業、自動車運転の業務、医師については適用が猶予されていました。2024年4月1日からは上記の事業・業務においても適用となります。それぞれの適用内容は以下になります。

【建設事業】

2024年4月1日以降は災害の復旧・復興の事業を除き、上限規制がすべて適用されます。
※災害の復旧・復興の事業の場合は、時間外労働と休日労働の合計について、月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内とする規制は適用されません。

【自動車運転の業務】

特別条項付き36協定を締結する場合、年間の時間外労働の上限は年960時間となります。また、以下の上限規制は適用されません。

・時間外労働と休日労働の合計、月100時間未満、2〜6か月平均80時間以内
・時間外労働が月45時間を超えられるのは年6か月まで

【医師】

診療に従事する勤務医には、年960時間が上限(A水準)となります。

医療機関が、地域医療の確保などの必要からやむを得ず、年960時間を上回る時間外・休日労働を行わせる必要がある場合は、その理由に応じて都道府県知事から指定を受けることで、上限を年1,860時間とすることが可能です。

参考サイト
厚生労働省 時間外労働の上限規制わかりやすい解説
日本医師会 医師の働き方改革の制度について

時間外労働の上限が適用されるため、労働時間の削減に向けて、業務の見直しや特定の従業員に仕事が集中しないような環境の整備を推進することが肝要です。

2.労働基準法施行規則の改正①:労働条件明示のルールの追加

2024年4月1日から労働契約の締結・更新のタイミングの労働条件明示事項に新たな項目が追加されます。

就業場所・業務の変更の範囲

【明示のタイミング】
全ての労働契約の締結と有期労働契約の更新時。

【明示事項】
「雇い入れ直後」の就業場所・業務の内容に加え、これらの「変更の範囲」 についても明示が必要になります。「変更の範囲」は、将来の配置転換などによって変わり得る就業場所・業務の範囲のことです。※労働基準法施行規則5条の改正

更新上限の有無と内容

【明示のタイミング】
有期労働契約の締結時と更新時。

【明示事項】
更新上限(有期労働契約の通算契約期間または更新回数の上限)の有無と内容を明示。※労働基準法施行規則5条の改正
また、更新上限を新設・短縮する場合は、その理由を更新上限の新設・短縮をする前のタイミングで、有期契約労働者に事前に説明しなければなりません。

無期転換申込機会および無期転換後の労働条件

【明示のタイミング】
無期転換ルールに基づく無期転換申込権が発生する契約の更新時。無期転換ルールとは、同一の使用者との間で、有期労働契約が通算5年を超えるとき、労働者の申込みにより、期間の定めのない労働契約(無期労働契約)に転換する制度。

【明示事項】
無期転換を申し込むことができる旨(無期転換申込機会)の明示および、無期転換後の労働条件の明示が必要になります。

初めて無期転換申込権が発生する有期労働契約が満了した後も、有期労働契約を更新する場合は、更新のたびに、無期転換申込機会と無期転換後の労働条件の明示をしなければなりません。

労働条件通知書の見直しが必要です。また、有期労働契約の更新上限や無期転換後の労働条件についても確認しましょう。

3.労働基準法施行規則の改正②:裁量労働制の導入・継続の手続きの見直し

2024年4月1日以降、新たに、または継続して裁量労働制を導入するためには、裁量労働制を導入する全ての事業場で下記の手続きが必要になります。

専門業務型裁量労働制の場合

本人の同意を得る必要があります。同意を得られなかった場合、不利益取り扱いをしないことを労使協定に定めなければなりません。

また、同意の撤回の手続きと、同意とその撤回に関する記録を保存することを労使協定・労使委員会の決議に定める必要があります。上記事項を追加し、裁量労働制を導入・適用するまでに労働基準監督署に協定届・決議届の届出を行います。継続導入する事業場では2024年3月末までに届け出る必要があります。

※専門業務型裁量労働制の対象業務は、2024年4月からM&Aアドバイザーの業務が追加されて19業務から20業務に拡大

企画業務型裁量労働制の場合

以下の内容を労使委員会の運営規程に追加します。

①労使委員会に賃金・評価制度を説明

使用者から労使委員会に対する説明に関する事項に対象労働者に、適用される賃金・評価制度の内容を労使委員会の運営規程に定なければなりません。また、対象労働者に適用される賃金・評価制度を変更する場合、労使委員会に変更内容の説明を行うことを労使委員会の決議に定める必要があります。

②労使委員会は制度の実施状況の把握と運用改善を行う

制度の趣旨に沿った適正な運用の確保に関する事項を労使委員会の運営規程に定めます。

③労使委員会は6か月以内ごとに1回開催する

6か月以内ごとに1回、労使委員会を開催することを労使委員会の運営規程に定めます。

④定期報告の頻度の変更

労使委員会の決議の有効期間の始期から起算して初回は6か月以内に1回、定期報告を行います。その後1年以内ごとに1回になります。
労使委員会の運営規程に上記の①②③を追加します。

そして、決議に「本人同意の取得・同意撤回の手続きの定め」と「労使委員会に賃金・評価制度を説明する旨」を追加し、裁量労働制を導入・適用するまでに労働基準監督署に協定届・決議届の届出を行います。継続導入する事業場では2024年3月末までに届け出る必要があります。

参考サイト
厚生労働省 裁量労働制の省令・告示の改正

4.フリーランス保護法(新設)の新設

2024年の秋ごろに施行されるのが「フリーランス保護法」です。この法律では、以下の2つを目的としています。

・フリーランスと企業などの発注事業者の間の取引の適正化
・フリーランスの就業環境の整備

具合的に、企業はフリーランスに業務委託をする際、以下の義務が発生します。

①書面等による取引条件の明示

②報酬支払期日の設定・期日内の支払

③禁止事項
例)フリーランスに責任がないのに、発注した物品等を受け取らない
発注時に決めた報酬額を減額する…etc

④募集情報の的確表示

⑤育児介護等と業務の両立に対する配慮

⑥ハラスメント対策に係る体制整備

⑦中途解除等の事前予告

フリーランスに対する義務は発注事業者の要件によって異なります。

発注事業者は現況に合わせて契約書を見直す必要があります。また、必要に応じて、フリーランスからの相談体制の整備や従業員教育に取り組みましょう。

参考サイト
厚生労働省 フリーランスの取引に関する新しい法律ができました

5.健康保険・厚生年金保険法の改正:社会保険の適用対象が拡大

2024年10月から従業員数51人~100人の企業で働くパート・アルバイトが社会保険の適用になります。
従業員数はフルタイムの従業員と週の労働時間がフルタイムの3/4以上の従業員数の合計です。(現在の厚生年金保険の適用対象者)

以下の条件を全て満たしたパート・アルバイトが社会保険の加入対象者になります。

・週の所定労働時間が20時間以上30時間未満
・所定内賃金が月額8.8万円以上
・2ヶ月を超える雇用の見込みがある
・学生ではない

対象となる企業は、パート・アルバイトに社会保険の被保険者になることを通知し、必要に応じて個人面談や説明会を実施しましょう。事業主と従業員、双方に社会保険料の負担が発生します。加入対象となる従業員に対しては、加入による影響を説明し、必要に応じて雇用契約を見直すといった対応も考えられます。

参考サイト
厚生労働省 社会保険適用拡大特設サイト

より詳細な法改正情報をセミナーで解説します!

TOMAでは、下記のとおり2024年の法改正情報に関するセミナーを開催予定です。毎年のように改正される法律の情報をゼロから仕入れようとすると、大変な時間と労力を必要です。セミナーでは数ある法改正の中から、中小企業の経営者や人事労務責任者が優先的に対処すべきものを中心に解説します。

本セミナーでは、人事労務に関する改正施行済みから、目前に迫った法改正、厚生労働省において改正が議論されている項目について幅広くお伝えします。会社にとってまず何が必要か優先順位付けをし、早急な対応を要する項目について整理していきます!

また、TOMAでは定期的に人事労務に関するメールマガジンを配信しております。こちらもぜひご登録ください。

2024年の法改正に関しご不明なことがあればお問い合わせください

いかがでしたでしょうか? 4月から変わるものから秋口に予定されているものまで、2024年の人事労務関係の法改正についてまとめました。もしご不明な点があれば、下記までお気軽にお問い合わせください。