M&Aブログ

M&Aの成否を左右する企業価値の評価・計算方法とは

2021.06.04

2021.06.04

M&Aにおいて、売り手は長年かけて育てた大切な会社を1円でも高く売りたいと考えています。 買い手は当然、1円でも安く会社を手に入れたいと思うでしょう。しかし、安い金額を希望し続けていては意中の会社に出会える可能性は低くなりますし、必要以上に高い金額を出してしまうと投資金額の回収が困難になります。 売り手と買い手が全く正反対の立場で行われるのが企業価値評価、いわゆるバリュエーションです。

今回はM&Aの成否を左右するといっても過言ではない企業価値評価について解説したいと思います。

企業価値評価を行うタイミングと重要性

M&Aとは、Mergers(合併)and Acquisitions(買収)の略で、複数の企業が合併する、あるいは企業が別の企業を買収する企業戦略です。 そのプロセスの中で、企業の価値を評価する、つまり売却(買収)価格を決めるバリュエーションは大変重要な意味を持ちます。

私たちは普段、食料品や日用品を手に入れる時、少しでも価格の安いスーパーマーケットを利用したり、値が下がる夕方の時間帯を狙って訪問したりしていませんか。 規模は比較になりませんが、M&Aは企業の売買取引です。 そのため、買い手は少しでも安く良いものを求めます。 また、無駄なものや効果の低いものを手に入れようとは思いません。

その思いとは裏腹に、売り手は客観的な評価よりも価値を高く見積もりがちです。 10年、20年と我が子のように育ててきた会社、そして一緒に働いてきた従業員への思いは、客観的な視点を失わせるからです。

『売りたい・買いたい・会社を良くしたい』という気持ちは双方同じでも、お互いの思いを鑑みて、最適な答え(価格)を出すのは一筋縄ではいきません。 企業の価値を算出する作業はM&Aにおける最も重要なプロセスと言っても良いでしょう。

バリュエーションはどの段階で行われるのか?

M&Aを進めていくにあたり、いつバリュエーションは実施されるのでしょうか。 そのタイミングは一度ではありません。

その1.まずは売り手が価格を決める

まずはM&Aに乗り出すことを決定した売り手が自社のバリュエーションを行い、売却希望価格を設定します。 買い手の元には、売却希望価格の明示されたノンネーム資料が複数掲示されますが、その価格を参考に買い手は、M&Aの候補企業を選定します。

その2.ネームクリア後、買い手が購入希望価格を明示する

選定候補を絞り、トップ同士の面談を行う前段階で、買い手企業は売り手企業の希望価格を許容できるかどうか、それとも相談が必要かの意思を示します。 トップ面談をする際に、買い手がいくら位での買収を想定しているという意思を示さねば、交渉が始まらないからです。

この段階では、あくまで買い手による自社の希望額の明示であり、最終決定ではありません。 お互いに希望価格を出し合い、今後の交渉段階に入ったら徐々にすり合わせを行っていきます。 前述もしましたが、この時点において、「高く売りたい」売り手と「安く買いたい」買い手、双方の思いは真逆ですので、M&Aアドバイザーがしっかりと間に立ち、調整をする必要があります。

信頼できる仲介アドバイザーをお探しの場合は、ぜひ一度TOMAにご相談ください。

その3.交渉の結果を鑑みて、買い手が意向表明書に金額を明示

交渉を進めていくと、書類だけではわからない、売り手企業の強みや良さがより明確になります。 M&Aが完了した後のシナジー効果の輪郭も徐々に、見えてくるはず。 そこで、より現実的な買収希望価格を意向表明書に掲載します。

しかし、意向表明書はデュー・デリジェンス(買い手企業が売り手企業の価値やリスクの調査)の前に提出することがほとんどのため、ピンポイントでいくらと決めることが困難な場合があります。 その場合は、〇〇円〜〇〇円という幅をもたせた金額を明示することも可能です。

その4.デュー・デリジェンスを経て、最終譲渡契約を締結

買手候補が複数ある場合には、売手はそれぞれの買手候補から意向表明書を取得した後、その中から1社と基本合意書の締結を行います。 基本合意書によって独占交渉権が付与されますので、買手はコストを掛けてデュー・デリジェンスに進むことができます。

デュー・デリジェンスの結果、何も問題がなければ最終譲渡契約の締結という流れになりますが、簿外債務やセクハラ、パワハラ、残業代の未払いなど裁判に発展しそうな事案が見つかるケースもあります。 事案の大きさにもよりますが、それが元で契約がブレークするケースもゼロではありません。

しかし、デュー・デリジェンスの段階までくると、買い手企業もそれなりの時間と経費をかけています。 買収価格を調整することで、最終譲渡契約を締結することも少なくありません。

上記の通りM&Aでは、最終的な契約締結までのさまざまな段階で企業価値を評価する機会があることがわかります。 それぞれの段階で、どんなバリュエーションが必要なのか、全体の流れを理解しておくと良いでしょう。

企業を評価する際の注意点は?

では、バリュエーションを行う際に注意すべき点はあるのでしょうか。 大前提として押さえておくべきことは、企業の価値を「利益」で判断してはいけないということです。

外国に上場している企業と日本で上場している企業では、会計の基準が異なるため、同じ金額の利益が出ていたとしても、実際の利益額は異なる場合がほとんどです。 そのため、利益をベースとして企業を評価することはM&Aでは絶対に行われません。 M&Aにおける企業の評価はキャッシュフローで行うのが基本です。

キャッシュ・フローとは、企業活動や財務活動によってお金がいくら増えて減ったのかというお金の流れのことです。 キャッシュフローを原則として企業を判断すれば、売り手企業がアメリカに上場していようが、国内で上場していようが関係ありませんし、見かけの利益に惑わされることもありません。

企業の業態などに合わせて企業価値評価の方法も変わる

では、企業価値評価にはどんな方法があるのでしょうか。 企業価値評価(バリュエーション)方法は主にネットアセットアプローチ、インカムアプローチ、マーケットアプローチの3種類に分けられます。 それぞれのアプローチの中でも、代表的なもの紹介したいと思います。

時価純資産法(ネットアセットアプローチ)

ネットアセットアプローチとは、Net Asset=純資産、つまり企業が現在どれほどの資産を保有しているかを元に計算する方法です。

創業から現在までの成長過程を数値化するため、最も客観的に評価を下せる方法です。 簿価純資産価額法や清算価値法といったネットアセットアプローチが存在しますが、中小企業のM&Aにおいて、一番採用されるのが時価純資産法です。

時価純資産法は貸借対照表の純資産を企業評価額とする方法です。 ただし、土地や建物などの固定資産を時価評価したり、負債を抱えている場合はマイナス資産として計算に加えたりと、可能な限り客観的に企業を評価します。 この方法のデメリットとしては、創業から現在までの姿をありのままに評価するため、企業の未来、将来性を評価に加えていないという点です。

そのため、企業が持つブランド力や営業権、時間価値といったいわゆる「のれん」を加味することもあります(M&Aにおける価値計算では、純資産に営業利益の3〜5年分を加えた金額とする企業が多いようです)。

DCF法(インカムアプローチ)

インカムアプローチは売り手企業の将来性、M&Aによって発生する買い手企業とのシナジー効果やバリューアップ効果を評価する方法です。

中でも最もポピュラーなのがDCF法でしょう。 DCFはDiscounted Cash Flowの略で、将来のキャッシュフローを予測する方法です。 現状の評価よりも未来に目を向けた計算方法のため、先進技術を持ち合わせたベンチャー企業や、成長著しい企業、あるいは買収段階ではあまり利益の出ていない企業などで採用されることが多いバリュエーションです。

買収後の事業計画が明確なビジョンとして見えている場合にはオススメです。 なぜなら、DCF法では、実現可能性の高いビジネス、事業計画が存在していないと価値計算ができないからです。 しかし、中小企業において、綿密な事業計画が策定されている企業は多くないのが実情です。

また、DCF法は、計算方法が非常に複雑です。 専門書が発売されているくらいなので、素人がちょっとかじった程度で実践するのは難しいでしょう。 また、将来のキャッシュフローを計算するというのは言葉ほど簡単ではありません。 どうしても客観性が失われやすくなります。

一昔前に比べてビジネスの進化、成長スピードは速くなっていますし、世界情勢がいつどんな変貌を遂げるかも予測は困難です。 これはコロナの流行を見ても明らかでしょう。

DCF法ではさらに、ターミナルバリューという概念があります。 いくら将来のキャッシュフローを計算するといっても、実質可能なのは5年程度です。 ターミナルバリューとは、買収後、会社が永久にキャッシュフローを生み出すと仮定した場合の価値です。 予測期間の翌年のフリーキャッシュフロー÷(加重平均資本コスト−成長率)で計算します。

しかし、前述したようにビジネスでは何が起きるかわかりません。 企業が永久的に右肩上がりで成長を続けていけるかというとその可能性は限りなく低いでしょう。 また、ITを始めとする変化の激しい業界では、5年後の予測ですらも困難です。 DCF法にはこのような側面があることを頭に入れた上で、ターミナルバリューをどう評価に組み込むかは、経営者の重要な判断の一つとなります。

類似上場会社比較法(マーケットアプローチ)

マーケットアプローチとは、同じ業界の企業と比較することで企業価値を算出する方法です。

類似上場会社比較法はキャッシュフローや事業規模、業態が似ている上場企業の価値を売り手企業と比較します。 この計算方法のメリットは過去の取引実績などを参考に算出するため、売り手、買い手双方の認識にズレが発生しにくい点です。 過去の事例はどちらの立場においても客観的な事例だからです。

客観的な判断ができ、数値の計算方法も単純ではありますが、事例が見つからないといたずらに時間だけが過ぎてしまいます。 また、類似上場会社比較法はあくまで参考程度にとどめておく必要があり、これだけでバリュエーションを完結させるのは大変危険です。 他社の株価を見て、自社の評価はどのくらいだろうかと類推するだけの方法だからです。 業種が似ていても、全くの別会社の事例だということを忘れないでください。 類似上場会社比較法は他の方法と併せて利用するのが基本です。

今回紹介した3つの方法の他にも、M&Aにかかった投資金額が何年で回収できるのかという観点から計算する「回収期間法」や、投資によって得られると見込まれる利回りと、本来得るべき利回りを比較し、その大小により判断する「内部利益率法」などがあります。

「回収期間法」や「内部利益率法」は具体的な金額が算出される方法ではないので、バリュエーションの補助的な役割で利用されることが多いです。 実際にバリュエーションに取り組む際には、「回収期間法」や「内部利益率法」を用いて、案件の数を絞り込むこともあります。

その後、DCF法で将来のキャッシュフローを算出する、あるいは時価純資産法をベースに「のれん」を評価に加え、何年で回収可能かどうかを検討するというように、業種や規模に合わせて算出方法を検討すると良いでしょう。

M&Aには高度な専門知識が必要

以上、「バリュエーションの方法は一つではない」ということがお分かりいただけたと思います。

どの方法にも共通して言えるのが、高度な専門知識が必須であることです。 そのため、M&Aに不慣れな場合は自社だけで完結するのは難しく、バリュエーションはM&Aアドバイザーに任せるのがベターです。

TOMAでは、DCF法や時価純資産法に営業権を加味するなど、適切な企業評価⽅法の選定から、対象企業の収益⼒や実態純資産等を分析し適切な買収価額の算定まで万全のサポートをさせていただきます。

参考資料:M&Aの実務のプロセスとポイント

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