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株式移転による事業承継対策のメリットと手続きの流れ

記事作成日2020/02/05 最終更新日2021/01/22

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事業承継対策の一つとして、株式移転があります。株式移転によって一体どのような恩恵を受けられるのかをみていきましょう。また、こちらでは実際に行う手続きの流れも一緒に説明いたします。

■株式移転の定義とは

株式移転方式とは、既存会社が単独または複数で、新しく完全親会社を設立することです。保有する株式をすべて移転して、親会社は「純粋持株会社」という位置づけになります。既存会社は完全子会社となるため非上場の扱いとなり、完全親会社が代わりに上場するのが特徴です。

つまり、株式移転には「親会社を新設する」という定義があり、親会社は必ず株式会社でなくてはなりません。また株式移転では、資産を親会社に引き継ぐことができません。

■事業承継における株式移転のメリット

資産を引き継ぐことができないということは、資産の承継手続き、負債への配慮が不要といえます。さらには債権者保護手続き、労働者保護手続きも原則必要ありません。

事業承継では、ほかにも3つの株式移転のメリットが存在します。

◇持株会社の設立による株式評価額の低減効果

持株会社を通じて事業会社の株式を間接的に所有すれば、株価の計算方法に違いが生じてきます。このことをうまく活用することで、直接保有する場合と比較して相続税評価額を引き下げられるでしょう。

すなわち、株式の評価額の低減効果を期待できます。会社の業績が下がらないかぎり、持株会社保有の株式評価額は控除率が大きいとされています。

◇再編手続きがスピーディ

株主と会社の仲介的な存在でもある、持ち株会社。株式移転とは、持ち株会社を誕生させる組織再編行為の一つです。この持ち株会社が資金調達や人事などをまとめて担当することで、権限と責任の範囲をわかりやすくできます。

また株式移転では、同時に2社以上の会社と共同で行えます。「持株会社がグループ全体の方針を担い、各子会社が実務の権限を持つ」といった事業再編もスピーディに処理できるのが魅力です。

◇リスク分散

会社の損害に関しては、同じ会社内であれば複数の部署が対応に追われます。逆にいえば、別の会社にしておくことで責任の範囲を限定できます。

さらに持ち株会社が中心となり、子会社を抱えている状態であればM&Aで個別に売却可能です。資本金不要で「株式移転による持株会社設立」も行えるため、事業承継時のリスク分散につながります。

■株式移転の手続き

 株式移転の手続きは、以下のとおりとなっています。

1.完全親会社と完全子会社の条件合意

2.取締役の承認

3.株式移転契約の締結

4.株式移転契約書の事前開示

5.株主総会の特別決議による承認

6.反対株主の株式買取請求

7.債権者保護手続き

8.移転の効力発生(移転契約書に定められた日)

9.事後備置書類による開示

10.変更登記

株式移転では、略式手続きや簡易手続きが存在しません。もし親会社が既に設立済みである場合、「株式交換」という手続きになるため注意してください。

また、特例有限会社の株式移転では、商号を変更します。そして株式会社を設立後に、有限会社を解散しなければなりません。

ほかにも、株式移転にはさまざまな注意点があります。完全子会社が株券を発行していれば、株券等提供公告が必要です。商業登記の際に、添付書類として提出しましょう。株券を発行していなければ、株券等提供公告は不要となります。会社によって若干手続きが変わるため、余裕のあるスケジュールで株式移転を行いましょう。

■まとめ

事業承継時に株式移転で会社を設立すると、節税効果につながり、スピーディな再編手続きを実現できます。また、一つの会社で責任を負う必要がなくなるため、リスクの回避も見込めます。ただし株式移転の手続きでは、取締役や株主の承認が必要です。資産や負債の引き継ぎを行わなくて済む株式移転ですが、実施にあたりきちんと準備を進めておきましょう。

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