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事業承継の留意点を種類別に検証

記事作成日2020/02/05 最終更新日2021/01/22

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事業承継には、親族内・親族外・株式譲渡(M&A)といったさまざまな方法があります。会社の経営状況によって、どの事業承継が最適なのかも異なるものです。ここでは事業承継の種類別に留意点を検証していきます。きちんと把握しておくことで、より良い引き継ぎの方法が見つかるはずです。

■親族内承継の留意点

事業承継の6割 は、現経営者の子息や子女、甥、娘婿、配偶者などの親族が後継者とされています。親族内承継では、「関係者の理解」「後継者の教育」「株式・財産の分配」の3点に留意しましょう。

◇関係者の理解

もし後継者が複数いる場合には、後継者候補との意思疎通が大切です。また、親族の他にも役員、従業員、取引先、金融機関といった会社関係者に情報を共有しましょう。時期や段取り、今後の経営方針を公表することで、スムーズに事業承継を行えます。

◇後継者の教育

現経営者を支える経営幹部も、世代交代の時期を迎えます。後継者には、将来の経営陣の構成を踏まえたうえで社内外教育を促したほうがよいです。

◇株式・財産の分配

後継者に株式事業用資産を集中させたり、後継者以外にも相続人がいれば十分に配慮したりする必要があります。また、現状で株式分散が起きているのであれば、可能な限り買い取り等を実施してください。後継者の経営を安定させるためにも、資産の所有権をまとめておくことが大切です。

■親族外承継の留意点

役員や従業員の中から後継者候補を選ぶ、親族外承継。基本的には、親族内承継と同様の考え方で問題ありません。ただし親族外では、個人資産を相続する立場にないのが留意点です。現経営者の個人保証がすぐに引き継がれないまま、血縁関係のない後継者が連帯保証人に加わるよう求められるケースもあります。また、親族内承継の場合と比べて、より多くの時間が必要となります。

現経営者の意向が伝わるように、後継者には会社理念や経営状態の理解を改めて深めておきましょう。十分な後継者教育を行ったうえで、事業承継に向けた環境の整備を行うことが大切です。

さらに、親族外承継では会社の債務を保証するだけの見返りが少ないこともあり、精神的負担が大きいとされています。事前にできるだけ事務的な処理を済ませておき、余裕のある事業承継を心がけましょう。ただ、現経営者が所有する事業資金や担保の処理が難しい場合があります。後継者の債務保証の負担を減らすためには、金融機関とねばり強く交渉しなければなりません。現経営の保証・担保が完全に処理しきれない場合は、負担に見合った報酬を後継者に確保しておきましょう。

■株式譲渡(M&A)の留意点

後継者が見つからない時には、株式譲渡(M&A)を視野に入れてみてください。他の会社に引き継げば、社内に後継者がいなくても社員の雇用を継続させることができます。また、現経営者の利益を十分に確保し、担保もスムーズに解除できるのが魅力です。

しかし、株式譲渡の基本条件には法的拘束力がありません。M&Aの手法によって異なりますが、株式譲渡の場合では会社法上の定めがなく、契約の内容は当事者間の交渉に委ねられるからです。

そのため株式譲渡(M&A)では一般的に、秘密保持契約書・基本合意書・最終契約書の3つを作成することがあります。時には、臨時報告書や大量保有報告書を提出し、情報開示を行うケースも考えられるでしょう。独占禁止法などの法規制、特定の労働契約のみの承継、労働者の個別同意など、さまざまな留意点が生じてきます。これは、細かい配慮が多く、後々トラブルが生じる恐れのあるやり方でもあります。できるだけ専門家によく相談したうえで、株式譲渡による事業承継を行いましょう。

■まとめ

事業承継の留意点を把握せずにいると、さまざまな理由で経営悪化を招いてしまいます。上手に事業承継を行うためには、十分な配慮が求められます。会社の存続が危ぶまれる前に、きちんと準備を進めていきましょう。

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