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事業承継における納税猶予制度のデメリット

記事作成日2020/02/07 最終更新日2021/01/22

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事業承継に際し、資金面で非常に助かる納税猶予制度を利用することは、広く知られています。

しかし、その納税猶予制度にもいくつかのデメリットがあります。どんなデメリットがあるのか、以下でご紹介していきます。

■事業承継における相続税・贈与税の納税猶予とは

 事業承継の際、定められた条件をクリアすれば、相続税・贈与税の納税が猶予・免除されることがあります。しかし、その条件は厳しく、クリアすることで経営には不利益になってしまうこともあります。

一体どんな条件があるのか、デメリットになりかねない条件を中心にご紹介していきます。

◇雇用の8割以上を、5年間維持しなければならない

税金免除の条件の一つとして、雇用の8割以上を、5年間維持しなければならないというものがあります。ただ、雇用の8割以上を維持することは、中小企業にとって大きなハードルです。雇用人数が10人の会社であれば、不景気で3人リストラしなくてはならない、ということも十分あり得ます。このデメリットがあるために、これまで事業承継税制は普及しづらかったともいわれています。

しかし、平成27年に税制が改正され、「5年間の平均で8割以上継続すればよい」という条件に変わりました。例えば、退職が相次ぎ1年だけ10人から7人になってしまっても、次の年にまた1人以上雇用するなどして「平均8割」を維持すればよい、ということになったのです。

さらに、平成30年の改正では、「経営状況の悪化等、正当な理由があればよい」ということになり、さらに条件が緩和されています。いずれにせよ、大幅に雇用を減らさない努力が必要となります。

 ◇株式を保有し続けなければいけない

雇用の維持は5年間で済みますが、株式の保有は続けなければなりません。売却による現金化や、会社の解散による現金化は「条件を満たしていない」と判断され、これまで猶予されていた税金を払うことになってしまいます。

しかし、保有し続けなくても免除となる場合があります。それは、後継者が同じこの制度を使って次の後継者に事業承継した場合です。先代から受け継いだ事業を、同じ制度を使って受け渡せば、条件を満たしたことになります。時間はかかりますが、多額の税金が免除されるのであれば、挑戦してみる価値はありそうです。

なお、後継者が死亡した場合も、税金は免除となります。

◇大企業になれない

免除条件の一つとして、「中小企業であること」が必要です。

中小企業とは、以下のいずれかの条件を満たす企業のことをいいます。

・製造業・建設業・運輸業の場合:資本金または出資の総額3億円以下、常時使用する従業員の数300人以下

つまり、小売業で資本金が5千万円以下だったとしても、事業の急成長により従業員を60人雇ってしまうと、税金の免除はできなくなってしまうのです。

なるべく早く企業を大きくしたい、人手を増やしたいと考えている場合は、デメリットになるでしょう。

◇上場できない

また、この制度は「非上場株式を相続した場合」に適用される制度であるため、事業が成長したとしても、上場してしまうと免除は受けられなくなります。従業員を増やさず業績を上げて上場可能になったとしても、税金を猶予してもらいたい場合は上場ができません。

短期間で業績を上げ、すぐにでも上場したいと考えている場合には、この条件はデメリットになってしまいます。

 まとめ

多額の納税を猶予してもらえる納税猶予制度ですが、その利用のハードルはなかなか高いものです。漏れている条件が無いよう、一つ一つしっかりとクリアしていくことが重要です。また、ご自身の状況に合った制度かを一度確認するためにも、必ず事前に専門家に相談しましょう。

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