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事業承継で税務が知っておきたい税金の種類

記事作成日2020/02/06 最終更新日2021/01/22

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事業承継を行うにあたって、発生する作業は多くあります。中でも税務処理は複雑で、おさえておくべきポイントも多い重要な処理です。そんな事業承継に際し、税務が知っておきたい税金の種類を、事業承継の方法別にご紹介します。

事業承継の方法によって支払いが発生する税金が異なる

 事業承継は、基本的に株式の移転によって行われます。

その株式を移転する方法には「生前贈与、相続、譲渡・売買」の3種類があり、それぞれによりかかる税金が違ってきます。

今回は、個人から個人へ事業承継をする場合について、株式を移転する方法別に、どんな税金がどれくらいかかるのかを見ていきましょう。

 生前贈与による承継

・課税対象者:後継者

・課税される税金:贈与税

・課税の程度:暦年課税か相続時精算課税かによる

生前贈与による事業承継の場合、株式や事業用資産の贈与を受けた後継者に対し、贈与税が課税されます。平成27年1月の相続税の改正で相続税の税率が引き上げられたため、6億円を超える相続財産には55%の最高税率がかかります。そのため多額の株式を生前贈与で一度に承継しようとすると、納税額がかなり高額となってしまいます。そういった場合は「暦年課税」を利用し、年110万円の控除額内で少しずつ贈与を行うのが良いでしょう。

しかし、暦年課税では贈与し終わるまでに時間がかかりすぎる場合もあります。そういった場合は、「相続時精算課税」を利用すると良いでしょう。こちらは複数年にわたり最大2,500万円までの特別控除が認められているため、大型贈与に向いています。

ただし、贈与者が亡くなった際には相続税を納めることになります。また、一度この相続時精算課税を選択すると暦年課税には変更できなくなるので、ご自身の会社の状況を良く把握し、どちらか合った方の税制を利用することが重要です。

 相続による承継

・課税対象者:後継者

・課税される税金:相続税

・課税の程度:下記参照

相続による事業承継の場合、株式や事業用資産の贈与を受けた後継者に対して相続税が課税されます。

相続税の課税額の計算は、

①相続税の課税価格の計算

②課税遺産総額の計算

③相続税の総額の計算

という3ステップで行われます。

それぞれの会社の状況により違うため、できるだけ専門家に確実な計算をしてもらいましょう。

 譲渡・売買による承継

・課税対象者:現経営者

・課税される税金:所得税・住民税

・課税率:20%(所得税15%、住民税5%)

譲渡・売買による事業承継の場合、株式や事業用資産を売却することで得る対価に対して、現経営者に所得税・住民税が課税されます。

この場合、売却価格と取得価格の差額である「譲渡益」に対して課税され、非上場会社の株式の場合は税率20%(所得税15%、住民税5%)となります。

なお、所得税額を安くするために時価よりも著しく低い価格で後継者に譲渡すると、時価と売却価格の差額に対して贈与税が課税されることになるので気をつけましょう。(この所得税は、後継者に課税されます。)

また、譲渡・売買による承継は相続税・贈与税と比較して課税額は抑えられますが、後継者に自社株式の買い取り資金が求められるという問題と、現経営者の手元から自社株式を減らしたにもかかわらず、代わりに現金が増加してしまうという問題がありますので注意が必要です。

◇個人から法人への事業承継の場合

個人から法人へ事業承継を行う場合、「生前贈与、相続、譲渡・売買」のいずれの場合も、かかる税金の種類はほぼ同じです。現経営者には所得税が、後継者には法人税がかかります。

こちらもかなりの課税率であり、課税条件が複雑ですので、事業承継を行う前に必ず専門家に相談しましょう。

まとめ

このように、事業承継する場合には多額の税金がかかり、株式移転の方法によってもその税種・額は変わってきます。ここでご紹介した例を参考に、ご自身の状況に合った事業承継を行いましょう。また、税務についてはかなり複雑ですので、必ず税理士などの専門家に事前にご相談ください。

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