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事業承継で注意すべき消費税のみなし譲渡課税とは

記事作成日2020/01/31 最終更新日2022/04/15

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事業承継には、事業用資産を

①有償で譲渡する
②時価よりはるかに低い価格で譲渡する
③無償で贈与する

という3つの方法が考えられます。時価よりも低い価格で譲渡、または贈与を行ったとき、みなし譲渡として消費税が課税されることがあるので注意が必要です。この記事ではそのみなし譲渡課税についてご説明致します。

事業承継計画表テンプレート

みなし譲渡とは

消費税は、売買など有償で取引をしたときに発生する税金です。一般的に、対価が発生しない贈与などでは、消費税の問題は出てきません。しかし、無償または低額で資産を譲渡する場合にも、時価で資産の取引が行われたとして消費税が課税されることがあります。これが「みなし譲渡」といわれるものです。

みなし譲渡となるケース

みなし譲渡については、消費税法4条にその記載があります。みなし譲渡と判断されるケースには2つあり、一つは個人事業者が事業用資産を家事消費した場合、もう一つは、法人が資産を役員に贈与した場合です。

法人の事業承継においてみなし譲渡課税が課せられる場合

法人の事業承継の際、役員に事業用資産を贈与した場合、または低額で資産を譲渡した場合(低額譲渡)には、みなし譲渡課税が課せられる可能性があります。また、役員は登記上で定められている人のみが対象となるのではなく、使用人以外で経営に従事しているなど法人税法上のみなし役員も対象ですので注意が必要です。

低額譲渡のラインに関しては、消費税法基本通達の特例である「課税標準及び税率」(10-1-18)を適用し、仕入金額以上で通常販売価格の50%以上であれば、みなし譲渡の対象にはならないと考えられています。また、役員ではなく従業員に事業用資産を譲渡、または低額譲渡した場合は、みなし譲渡の対象にはなりません。

同じ内容の資産贈与であっても、対象者が変わるだけでみなし譲渡が適用されるかどうかが変わってきます。

個人事業主の事業承継においてみなし譲渡課税が課せられる場合

個人事業主の事業承継においては、廃業に関連してみなし譲渡課税が問題になります。

消費税法4条では、棚卸資産、または棚卸資産以外の資産で事業の用に供していた資産を家事消費した場合にみなし譲渡の対象となります。事業承継の際には、事業用資産を後継者に売り渡すか、贈与することとなります。売り渡した場合には対価が発生するため、通常の消費税の処理をすればよく、みなし譲渡の対象にはなりません。しかし、低額譲渡や贈与の場合には家事消費の対象となり、みなし譲渡として課税されることがあります

ここでも低額譲渡のラインが問題になりますが、法人における低額譲渡と同じく、仕入額以上、かつ通常販売価格の50%以上というのがラインとなっています。

個人事業主が廃業する際に留意する点

事業承継をせずに個人が廃業することもあります。事業承継せず廃業する場合、事業用資産は手元に残ったままとなります。処分するにもお金がかかるため、資産を保有したままで廃業する事業者もいるでしょう。しかし、廃業の場合も事業用資産を家事消費した場合、みなし譲渡が適用になって消費税が課税される可能性があるため注意が必要です。

対応策としては、免税事業者になってから廃業するという方法が考えられます。そのためには、時間をかけて事業を縮小する必要も出てくるかもしれません。思わぬところで課税されないよう、廃業までの準備期間を設けることも有効な対策といえるでしょう。

まとめ

個人事業主でも法人の場合でも、事業承継の際にはみなし譲渡として消費税が課税されるケースがあることをご紹介しました。全く想定していない納税義務が後から発生するということのないよう、どんな場面でみなし譲渡と判断されるのかはおさえておきましょう。

監修 TOMAコンサルタンツグループ コーポレートアドバイザリー部

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