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事業承継での類似業種比準方式の活用について

記事作成日2020/01/29 最終更新日2021/01/22

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非上場会社の株価を計算する方法として類似業種比準方式がありますが、事業承継の際には類似業種比準方式をどのように活用すれば良いのでしょうか。平成29年の税制改正についても解説します。

■類似業種比準方式とは

 上場会社であれば株価が明確ですが、未上場の場合は市場に合わせて適正な株価を算出する必要があります。未上場の株を「取引相場のない株式」と呼びますが、取引相場のない株式を評価する一つの方法が類似業種比準方式です。

類似業種比準方式では、上場会社の中で事業内容が類似している会社の株価を基準とし、配当金額、利益金額、純資産額の要素を加えて株価を算定します。

■平成29年改正による類似業種比準方式の見直しについて

平成29年に税制が改正され、取引相場のない株式についても評価の見直しが行われました。主な改正点は以下の3つです。

◇株価の基準となる上場会社の平均株価に関する要件

従来、類似業種比準方式を行うにあたっては、上場会社の平均株価等を基礎として計算してきました。課税時期の属する月から前の3ヶ月における類似会社の株価のうち最も低い月の株価、または前年平均株価が算定の基礎にできるとされてきました。

しかし、日々変動する株式市場においては株価の高騰や急落の可能性は避けられません。類似業種比準方式でそれらの影響をできるだけ防ぐために、課税時期の属する月から前の2年間の平均株価を算定の基礎にすることができるようになりました。

◇比準割合の変更

類似業種比準方式において、従来は、配当金額:利益金額:純資産価額の割合を1:3:1としていました。そのため、利益が多く出た会社は株価が高まる傾向にありました。平成29年の税制改正では、実際の市場株価と評価額の乖離が最も少なくなる比率として、1:1:1が適切であると判断されました。これにより、従来の比準割合が変更になっています。

◇類似業種の比準要素を単体決算から連結決算を基礎とすることに変更

従来は、類似業種の単体決算を基礎としていました。しかし、上場会社がグループ会社の場合は連結決算についても公表義務が課されており、実際の株価の決定にも連結決算の数字が影響しているとされています。そのため、税制改正で類似業種の比準要素も連結決算を基礎にするよう変更となりました。

■事業承継における類似業種比準方式の活用方法とは

事業承継の場面においては、自社株の株価を引き下げることによって、相続税や贈与税の納税額を引き下げる対策が多くとられています。類似業種比準方式の活用方法として考えられるのは、以下の3点です。

◇高収益部門を分社型分割する

大会社や中会社で類似業種比準方式を採用している会社の場合、社内にある高収益部門を分社型分割して切り離すことで、株価を引き下げる効果が期待できます。

類似業種比準方式を採用している場合は、分社型分割で独立させた高収益部門が多くの収益をあげたとしても、元の会社の株価に影響することはありません。

◇退職金を支給する

事業承継時に退職金を支給するという活用方法もあります。退職金を支給することで会社の利益が減ります。類似業種比準方式の場合、株価を算出するためには配当金額:利益金額:純資産価額をそれぞれ1:1:1で加味することになりますが、このうちの利益が減ることで、株価を引き下げることができます。

◇特別配当や記念配当を活用

類似業種比準方式の計算式に含まれる配当金額に含まれるのは「経常的な配当」となり、「記念配当」や「特別配当」は含まれません。したがって、事業承継の際には類似業種比準方式に影響しない「記念配当」や「特別配当」を行うことで利益を還元するという方法も考えられます。

■まとめ

類似業種比準方式の基本的な知識や、事業承継の際の活用方法についてもご紹介しました。平成29年の税制改正でも類似業種比準方式について若干変更されていますので、しっかりと変更内容をおさえておきましょう。

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