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一般社団法人を活用した事業承継対策の仕組み

記事作成日2020/02/06 最終更新日2021/01/22

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相続税・贈与税など高額な納税が必要となってくる事業承継では、できるだけ節税したいものです。そんな時、株式会社ではなく「一般社団法人」という形で法人を設立すれば、事業承継の際の税金を節税することができます。

一体どういった方法で節税すればよいのか、またそもそも一般社団法人とは何なのか、以下でご紹介していきます。

■一般社団法人とは、「法人格に向かない」法人

 一般社団法人とは、「株式会社」「合同会社」といった法人格に向かない集合体(サークル・協会等)に、法人格を持たせるための法人形態です。

一般社団法人は株式会社同様、法人登記により設立することができます。設立には2人以上の設立時社員が定款を作成して、公証人による定款認証を受ける必要があります。なお、設立時には2名の社員・1名の理事がいればよく、設立時に必要な費用は約11万円と、設立の初期コストは低く抑えられています。また、活動にも特に制限はなく、株式会社と同様に収益事業を行うことも可能です。

収益事業を行う場合は、株式会社と同様に法人税法が適用されるため、税率は中小企業と同一です。また、会計についても、一般社団法に基づき、株式会社と同様に企業会計基準に従い、年度毎に決算を行う必要があります。

なお、株式会社との一番の違いは、株式がなく、「持ち分」という概念がないことです。そのため、一般社団法人には持ち主はいないことになります。また、一般社団法人には役員である「理事」に就任する条件はありません。そのため、家族・一族を理事に就任させ、一般社団法人を独占・実質支配することができる上、相続税がかかることもないのです。

■一般社団法人を活用した事業承継対策とは

 では、実際に一般社団法人をどう活用すれば事業承継対策ができるのでしょうか。具体的にご紹介していきます。

◇方法:一般社団法人に自社株を移転させる

事業承継にまつわる相続税・贈与税は、基本的に「株式の移転」についてかかるものです。現経営者から後継者に株式を移転させると、そのどちらかに相続税・贈与税がかかってしまいます。そこで、直接後継者に株式を移転するのではなく、一般社団法人に自社株を移転するのです。

 ◇メリット:相続税・贈与税がかからない

一般社団法人は、前述した通り「持ち主」がいません。つまり、「持ち主のいない」一般社団法人に自社株を移してしまえば、相続税・贈与税がかからないということになります。

 また、一般社団法人の場合、「株式」という概念がないため、法人の支配権は社員に帰属しています。つまり、一般社団法人から後継者への事業承継も「株式の移転」ではなく「社員の交代」により行われるため、その際の相続税・贈与税が発生しない、ということになるのです。

そのため、一旦一般社団法人に自社株を移転してしまえば、相続税・贈与税を気にすることなく、より税率の低い法人税のみの課税で済むということになります。

ただし、一般社団法人への自社株の移転も、必ず専門家に相談して行いましょう。

■「平成30年度税制改正大綱」により、事業承継対策に規制が

 このように、事業承継対策として有効な一般社団法人の活用ですが、この節税方法について、「平成30年度税制改正大綱」により規制がかかりました。

改正内容を簡単にご説明すると、親族で支配している一般社団法人を個人とみなし、相続税を課税するというものです。また、一般社団法人に贈与税が課される場合の要件を明確化することも、改正により決定しました。これまで通りに節税することはできなくなったので、注意が必要です。

 まとめ

 事業承継には、相続税・贈与税などの高額な納税がつきものですが、一般社団法人という形を利用することでうまく節税できることもあります。ただし、「平成30年度税制改正大綱」により、その節税方法に規制がかかったので注意が必要です。一般社団法人化による節税を利用する場合は、必ず専門家に相談してから行いましょう。

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