今回はホールディングカンパニー(以下、HDとする)の設立における組織再編と税務について解説いたします。
◆非適格組織再編と適格組織再編
組織再編の種類には、合併や分割、現物出資、株式交換・移転、現物分配とありますが、いずれの場合においても、一方の法人の資産・負債が他方の法人に移転し、株式交換等の場合には株主において株式の取得・譲渡が行われることになります。
法人税法の取扱いにおいては、このような組織再編を通じた資産等の移転に際しても、原則として時価による譲渡があったものとして譲渡損益を認識します。株式交換・移転の場合においても、所有していた株式を時価によって譲渡し、新たに取得する株式を時価によって取得したものとして譲渡損益を認識します。
しかしながら、この時価取引から生じる譲渡益・譲渡損に対して課税が行われてしまうと、企業の組織再編行為を阻害することになるため、政策的な見地から一定の要件を満たした場合には、課税を繰り延べることとしています。
法人税法上は、原則的な取り扱いである譲渡損益を認識する組織再編を『非適格組織再編』といい、一定の要件を満たして課税が繰り延べられた組織再編を『適格組織再編』といいます。
◆適格組織再編の要件
資本関係が100%である完全支配関係において行われる組織再編においては、組織再編後も完全支配関係が継続し、金銭等を交付しないことが適格要件となります。
資本関係が50%超100%未満である支配関係において行われる組織再編においては、組織再編後も支配関係が継続し、金銭等を交付せず、移転する事業の主要な資産・負債が引継がれており、移転する事業の従業者の概ね80%以上が引継がれることが見込まれており、移転する事業が引続き営まれることが見込まれていることが適格要件になります。
また、企業グループ外(資本関係50%未満)の組織再編については、事業関連性要件、規模要件または経営参画要件、独立事業要件、事業継続要件、株式継続保有要件といった要件を満たすことが必要となります。
上記の適格要件を満たした場合には、適格組織再編成が適用され、課税が繰り延べられます。いずれの場合も思わぬ課税を受けないためにも、事前の十分な検討が必要となります。