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ホールディングカンパニー(HD)の設立方法

記事作成日2016/09/13 最終更新日2021/08/18

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ホールディングカンパニーの設立方法について、設立方法の方式別の説明とそのメリットとデメリット、設立方法を詳しく解説いたします。

ホールディングカンパニーとは?

ホールディングカンパニーとは「持株会社」とも呼ばれ、他の会社の株式を多数保有することにより、その株式発行会社の事業活動を支配することを事業とする会社のことです。

ホールディングカンパニーには、純粋持株会社と事業持株会社があります。
主たる事業を持たず、株式を保有することにより、他の会社の事業活動を支配(統制)することを事業目的とするものを純粋持株会社、他の会社の活動を支配(統制)するだけでなく、当会社自身も相当の規模で事業を行っているものを事業持株会社といいます。

ホールディングカンパニーを設立する目的

目的1.経営管理と事業の分離

なぜホールディングカンパニーを設立するというと経営管理と事業の分離です。企業グループの持株会社である親会社は経営管理、リスクマネジメントを行い、事業会社である子会社が事業を実行することにより企業グループの経営効率を向上させることができます。

目的2.組織変更のスピードアップ

その他にも組織変更のスピードアップが挙げられます。M&Aや事業譲渡・事業譲受などの大規模な経営構造を変革する場合には、法的手続き、関係者の同意の獲得、部門ごとの労働条件の確立等に時間が掛かります。ところが、持株会社体制化では、買収した会社を持株会社の傘下に置くことで上記の諸問題から開放され組織変更をスムースに執り行うことができます。

目的3.経営責任の明確化

そして、経営責任の明確化が挙げられます。持株会社傘下の事業子会社ごとに独立採算の経営が行われることになり、コスト意識を認識させ業績評価が明確になります。

目的4.円滑な事業承継の実現

最後に、円滑な事業承継の実現にも有用です。例えば、創業家一族で株式を所有し経営もしてきたが、後継者が不在といったケースが挙げられます。創業家一族は新たなホールディングカンパニーの株主になり、事業子会社の社長には有能な第三者が就任することで、事業の継続を実現することができます。

ホールディングカンパニーの設立方法

会社法は、会社をとりまく社会環境の変化に対応し、会社の組織再編を円滑かつ迅速に行えるように整備され、施行されました。これにより、会社組織の再編成の動きが活発となっています。

会社法におけるホールディングカンパニーの設立方法には、株式移転方式、株式交換方式、抜殻方式の3種類があります。

株式移動方式

株式移動方式は、既存の事業会社は事業を継続し、その株主がその有する株式をホールディングカンパニーに移動させる方式です。株式交換は、株式会社がその発行済株式の全部を他の株式会社等に取得させることをいいます。

株式移転は、株式会社がその発行済株式の全部を新たに設立する株式会社に取得させることをいいます。

株式移転方式のメリット・デメリット

事業に許認可がある場合でも、許認可の移転手続きが不要であることガあげられ、既存会社の事業運営に大きな影響が生じにくい、会社分割方式に比べ、多額な資金調達や長期間に渡る調整が不要といった再編手続きが比較的スピーディーといったメリットがあります。

ただ、資産や負債を引継ぐ場合は別途手続きが必要でしたり、税務上の資本金などの額が増加すれば、法人住民税の負担の増加や配当還元価額が高騰してしまう可能性があるという点もあります。

株式移転方式でのHD設立手順

株式移転の手続きは、以下のとおりとなっています。

1.完全親会社と完全子会社の条件合意
2.取締役の承認
3.株式移転契約の締結
4.株式移転契約書の事前開示
5.株主総会の特別決議による承認
6.反対株主の株式買取請求
7.債権者保護手続き
8.移転の効力発生(移転契約書に定められた日)
9.事後備置書類による開示
10.変更登記

株式移転では、略式手続きや簡易手続きが存在しません。

株式交換方式

株式交換は完全親会社となる会社と完全子会社となる会社の間でなされます。

株式移転方式のメリット・デメリット

持株会社は空の会社でないため、既存の資産などを活用することができ、現金の準備が不要です。特に、少数株主から強制的に株式を吸い上げることができるため、M&Aの際に多く利用されることもあります。その他には、買収される企業の従業員による抵抗が比較的少ないことや、大手企業の株主買収企業の株主として買収企業の経営に参画できることなどがあります。

デメリットとしては、常に株価を高く維持する経営を行うことが必要不可欠なことです。他にも非公開企業に買収された場合、現金化することが難しいなどあります。

株式交換方式でのHD設立手順

1.完全親会社と完全子会社の交換比率などの条件合意
2.取締役の承認
3.株式交換契約の締結
4.株式交換契約書の事前開示
5.株主総会の特別決議による承認
6.反対株主の株式買取請求
7.債権者保護手続き
8.交換契約書に定められた日に交換の効力が発生
9.事後備置書類による開示
10.交換会社にて新株発行の変更登記

株式交換と株式移転は、ホールディングカンパニー体制の円滑な構築と企業買収の促進という点で企業経営に重要な役割を果たしています。

抜殻方式 

抜殻方式は、既存の事業会社の事業を別会社に移管し、既存の会社がホールディングカンパニーとなる方式です。抜殻方式には、会社分割が主な方法で、会社法では吸収分割、新設分割が制度化されています。

吸収分割では、株式会社等がその事業に関して有する権利や義務を分割後他の会社に承継させます。一方、新設分割では、株式会社等がその事業に関して有する権利や義務を分割により設立する会社に承継させます。

いずれにせよ、会社分割により分割する会社が権利や義務を承継する会社からの発行株式の割当てを受けて取得することで両会社間に資本的結びつきが生じ、親会社と子会社の関係を構築することができます。一方、事業譲渡の場合には、譲渡会社は譲受会社からその発行株式以外の金銭等が対価として支払われるため、資本的な結びつきは生じません。

抜殻方式のメリット・デメリット

会社分割では包括的に承継を行うため、比較的スムーズに移転手続きを行えます。また、現金の準備が不要であり、資産・契約といった引き継ぎが容易であるのも魅力です。

事業承継では、後継者にあらゆるものを引き継がなければなりません。法律や税金の兼ね合いもあり、事業譲渡で移行させると経営に支障をきたしてしまいます。対価も大きくなる点も踏まえると、株式で対応できる会社分割のほうが優れているとされています。

抜殻方式でのHD設立手順

◇吸収分割

1.事業を引き継ぐ会社(承継会社)と、事業を譲渡する会社(分割会社)による基本合意
2.双方の取締役会の承認
3.分割契約の締結
4.分割契約書の事前開示
5.分割会社の株主総会の特別決議による承認
6.反対株主の株式買取請求
7.債権者保護手続
8.取り決めなどの事項を記載した、書面の事後開示
9.双方の会社にて変更登記

◇新設分割

1.取締役会の決議
2.分割計画書の作成
3.分割計画書の事前開示
4.株主総会の特別決議
5.反対株主の株式買取請求
6.債権者保護手続き
7.取り決めなどの事項を記載した、書面の事後開示
8.新設会社にて設立登記、分割会社にて変更登記

新設分割の場合では、新たに会社を立ち上げてから取締役会の決議に入ります。
既存会社からの出資などを活用して、スムーズに新設分割を行いましょう。

ホールディングカンパニー設立を成功させる秘訣

ホールディングカンパニーの設立は、設立の目的によって検討軸が異なるため、その目的ごとにメリット・デメリットを把握して取り組む必要があります。 TOMAコンサルタンツグループには、それぞれの分野での専門家が多数在籍しているため、目的ごとに適切なサポートが可能です。
TOMAコンサルタンツグループのサービスについて詳しく知りたい方は以下をご参照ください。

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