今回はホールディングカンパニーにおける人員配置の最適化について解説いたします。
◆出向と転籍
持株会社の従業員を子会社の業務に従事させる場合には、出向させる方法と転籍させる方法があります。出向とは従業員が持株会社との雇用契約を残したまま子会社で勤務する形態をいい、転籍とは持株会社を退職してから子会社だけに勤務する形態をいいます。これらの方法は持株会社とその子会社だけでなく、グループ法人間での人員の最適化のためによく利用される方法です。
◆給与差額の取扱い
出向の場合、出向者の給与を持株会社が支給するケースと子会社が支給するケース、又はその両方から支給されるケースがあります。子会社から出向者へ支給される給与が持株会社と給与体系が異なるため差額が生じる場合には、その差額を持株会社が支給又は負担することが可能です。差額の負担は直接出向者へ支給することも、子会社へ負担金を支払い子会社から出向者へ支給することも可能です。
一方転籍の場合には、転籍者は転籍前法人を退職し、その後転籍後法人に雇用されることになります。そのため給与は転籍後法人からのみの支給となるため、差額の負担といった問題は生じません。
◆退職金の取扱い
出向者に対する退職金は、退職時に持株会社と子会社のどちらに在籍していたのかによっても異なりますが、持株会社と子会社からそれぞれ支給されるケースや、どちらか一方が支給して法人間で在職期間に対応する金額を負担する方法があります。いずれのケースであっても事前に退職金の負担については取り決めておくことが重要になります。
転籍の場合、転籍者の退職金は転籍前の法人を退職する際に支給することが可能ですが、その時点で退職金を支給しなかった場合には、転籍後の法人の退職時に転籍前の法人の勤務期間分も含めて退職金を支給することが可能です。
後者の場合、転籍前の法人が負担すべき退職金相当額は転籍後の法人から転籍前の法人に対する寄附があったものとみなされるケースがありますので、負担額が転籍前後のどちらかの会社の一方的な負担にならないよう注意が必要です。