第8回目の経理効率化サポート事例は経理業務整理及びペーパーレス推進・会計ソフト整備支援です。こちらのお客様は、不動産管理をメインにコンビニや学童、飲食店など、多岐にわたる事業を展開しています。2022年に、経理担当者の1人が定年退職することになり、ご相談をいただきました。
お客様は当初、3名で担当していた経理が1人減るということで、アウトソーシングを検討されていました。しかし、TOMAでは業務の効率化を図ることで、現状のリソースで同等の業務がこなせるように提案をさせていただきました。経理の人員不足に悩む経営者、経理担当者は当事例をぜひご一読ください。
なお、経理効率化の事例に関しては以下のブログでもご紹介しています。こちらも併せてご覧ください。
・コンサル事例 ①会計ソフト選定支援
・コンサル事例 ②仕入・経費 発生仕訳自動化支援
・コンサル事例 ③会計ソフトコンバート支援
・コンサル事例 ④システム連携に伴う経理実務指導支援
・コンサル事例 ⑤グループ会社の会計ソフト統合支援
・コンサル事例 ⑥顧問税理士の協力による経理改善支援事例
・コンサル事例 ⑦仕訳入力の自動化事例
現状の業務が本当に正解かを疑うことが効率化の第一歩
人材資源が減る=アウトソーシングという考えは1つの選択肢ではありますが、必ずしも正解とは限りません。今回の事例がまさにその典型といえるかもしれません。
私たちは、まず退職者から現在どのような業務フローで運用しているのか、属人化している業務はないかといったヒアリングをするところから始めました。詳しく話を聞くと、いくつかの課題が浮き彫りになりました。
課題1:手作業や転記業務が多い為、月次決算までに時間を要している
課題として上がったのは手作業や転記業務が多いという点です。会計ソフトに入力する前にExcelや紙の振替伝票を作成し、作成した振替伝票を見ながら会計ソフトへ入力していました。さらに、内容によっては手書きの帳簿へも転記し、残高等の管理をしていました。
流れをまとめると以下のようになります。
①紙(経費精算)で申請
②紙(振替伝票)を作成
③紙(帳簿)に手書き
④Excelや会計ソフトへ入力
以上、とにかく手作業が多くペーパーレスからは程遠い状態でした。そのため、月次決算を上げるまでに相当な時間を要していたそうです。
課題2:経費精算のフローが確立していないため、経理に負荷がかかっている
不動産管理、コンビニ経営、飲食店運営、学童運営と全く異なる業態が混在していたため、統一のフローがなく、それぞれの業種に合わせた経費精算をしていました。
都度精算をしていたため、時間がかかるだけでなく領収書等は全て手渡しで経理が受け取り、現金で精算するという形をとっていたため、コロナ禍の時期であっても経理が在宅勤務をすることは不可能でした。
退職者とのヒアリングを通し自分自身を安心させるために転記作業を繰り返しているという印象を受けました。決して、そのやり方が悪いというわけではありません。むしろ「数字の間違いは絶対にしない」という意志を持つ、責任感の強いご担当者様でした。
しかし、一方では業務を効率化し人的工数を削減できる技術を活用するのではなく、従来のやり方に固執し続けているようにも見えました。
なぜ経理業務の効率が進まないのか
今回の事例のように、紙の振替伝票回覧や会計ソフトへの転記といった作業に時間を費やしている企業は少なくないと思います。では、なぜ経理業務の効率化がすすまないのでしょうか。
理由1:記憶頼りの数字に自信がない
人間の記憶は曖昧なものですが、経理の仕事は性質上、正確性が求められます。過去にミスが発生した際、再発防止のフローを作られ、気づいたら2重3重のチェックが必要になっているケースは少なくありません。手間暇をかけることで、数字に対する安心感を得ているため、フローをなくす(減らす)ことに消極的になる傾向があります。
理由2:昔からの慣習に縛られている
前任者あるいは会社全体が長年、続けてきた方法が絶対に正しいと思い込んでいる場合、なかなか効率化が進みません。しかし、もし効率化を図りたいのであれば最新の技術を駆使するべきです。新しい作業は慣れるまでには時間がかかることもありますが、軌道に乗ってしまえば、後々振り返った時になんであんなことをしていたのだろうかと感じられるでしょう。
理由3:非効率と感じていても効率化を提案できない
実は、現場では非効率と感じていてもベテラン社員が変化に前向きではない、さらに経営層は現場のことを知ろうとしてくれないという話もよく聞きます。上司に意見するのは大変な勇気がいるものです。これは管理する側が現場に歩み寄り、効率化に対する意見を吸い上げる必要があるでしょう。
紙処理の廃止、経費精算フローの確立で効率化に成功
TOMAではお客様のリソースやリテラシーに応じた改善提案を常に心がけています。今回の事例では、人員が減るという決定事項があったため、予算や人材など現状を考慮した提案をしました。
効率化1:振替伝票の廃止
まずは、振替伝票を作成してから会計ソフトへ入力という重複作業が発生していたため、振替伝票の廃止を提案しました。当初、担当者は大変不安そうでしたが、ミスを防ぐためのチェックリストを作成することで不安も軽減されました。
効率化2:インターネットバンクと会計ソフトの連動により経理業務の負荷を軽減
インターネットバンキングと会計ソフトを連動させることで、手入力の工数を大幅に削減させました。自動連携の場合、仕訳も自動で生成されるため、仕訳の正誤の担保方法もチェックリストに落とし込みました。
効率化3: 経費精算ルールを再構築し全社周知、経理部門の業務を軽減
振替伝票の廃止に合わせ、承認ルートや提出のタイミング、承認の際に提出する書類を変更しました。経費精算のルールについては、いつも会社にいる人、外回りが多い人、たまに会社に来る人など承認者に配慮して作成し、承認者と経理部門、双方の負担が軽減するように努めました。
効率化4:紙でのやり取りが7割削減
本来の目的とは異なりますが、今回の業務効率化により、振替伝票・手書きの帳簿・手書きの収入・支払の一覧表がなくなったことで紙資料の約7割が削減されました。
定年退職者が抜けても全く問題なし、社員1人分の工数が削減
これまで3名で行っていた経理業務でしたが、1名が定年退職した後も問題なく運用が可能になりました。お客様からは「最初は不安でしたが、2名で無事回すことができるようになってよかった」というお言葉をいただきました。
今回の経理効率化にかかった期間は業務フロー図の作成に2か月、改善実行までに2か月、合計4ヶ月で運用に至りました。
・前任者が作成していたから
・承認の時にこの資料もいつも回しているから
・ずっとこのやり方だから
当時は効率的であっても、現在は非効率な業務は探せばたくさんあります。経理にとどまらず業務の効率化は現状を疑うことが大切ですが、日々の業務に慣れていると、なかなか気づけないものです。また、例え気付いたとしても上司に進言することは簡単ではありません。
クラウドシステムやRPA等を業務に活用する企業は日々増えています。事例が増えることで、機械に任せる仕事と人間がやらなければならない仕事の線引きは、以前に比べて明確になり、導入のハードルも低くなっています。
新しいシステムの導入や既存業務の効率化にお悩みの方は、お気軽にTOMAまでご相談ください。
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