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RPAの本領を発揮するなら経理業務! その内容と導入事例を紹介

記事作成日2020/05/18 最終更新日2021/10/01

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飲食業、不動産業、サービス業から個人事務所まで、すべての業種・業界で必ず発生するのが経理です。必ずやらねばならない仕事であるにもかかわらず、生産性は低い。その割に人的資源を確実に要する仕事です。経理担当者が月末月初、期末に慌ただしく働いている姿を一度は目にしたことがあると思います。

近年話題のRPAは、そんな経理業務の強い味方であることをご存知でしょうか。今回は経理で本領を発揮するRPAの導入事例を紹介したいと思います。

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経理のどんな業務をRPAで自動化できるのか

改めて経理、そして会計業務についておさらいしたいと思います。経理とは、簡潔にいうと会社を経営する上での「利益」と「資産」を生むために行う金銭管理です。日々営業活動を行う中で、仕入れや売上、必要経費などさまざまなお金の流れが発生します。

主な内容としては売上の管理、給与や保険の管理、仕入れの管理、税金の管理、決算の管理などです。これらを管理することを総称して経理と呼びます。これらの仕事自体が売上を上げる訳ではありませんが、どんな企業においても絶対に行わなければならない仕事です。

会計業務は、お金の出入りを帳簿で管理すること。幅広い経理の仕事の一部です。会計業務は「管理会計」「財務会計」の大きく2つに分けられます。

管理会計

管理会計とは主に、売上や利益を管理すること。これらを元に、次年度の経営戦略や経営の方針を立てるために必要な情報です。営業部や広報部など各部署で取りまとめ、全体会議で方針を決める企業もあります。RPAは人間が意思決定を下すために要する資料作成に有効です。

財務会計

自社の経営を外部のステークホルダーに開示するために作成する業務をまとめて財務会計と呼びます。決算書や貸借対照表、損益計算書を作るのが主な作業です。

・金銭や物品の出入りや、行った営業活動の内容をまとめる伝票の記帳
・会計システムなど外部システムへの仕訳や、売掛金の入金データの取り込み
・紙で発行された帳票のスキャンデータを会計システムに入力
・親会社と子会社の業績をまとめる連結会計や連結処理
・毎月末に行われる処理業務…etc

さまざまな業務が存在しますが、これらを人間が行うと大変な労力と時間がかかります。しかし、財務会計業務は定型で作業ルールが決まっているものが多く、また企業規模が大きくなればなるほどその処理件数は膨大になります。

RPAはこのようなルールが決まった大量の情報を処理するのに優れたシステムです。このように経理業務の中でも、RPAが活躍する場面は財務会計業務が中心となります。

経理業務をRPAで自動化すれば業務は大きく改善する

では、RPAとは具体的に何なのか?言葉はよく聞くけど、あまり詳しくない人のためにRPAの基礎を解説したいと思います。

RPAとはRobotic Process Automation(ロボティック プロセス オートメーション)の略でホワイトカラーの現場における単純作業を代行してくれるロボットの総称です。デジタルレイバーとも呼ばれ、少子高齢化、働き方改革の進む日本において今後企業のマストツールとなる可能性が高いと言われるシステムです。

すでにOCRと連携した手書きの文字などのアナログ情報を解析し、登録処理するなどの作業も可能になるほど日進月歩で技術が進化しています。

RPAが得意な業務はルールが決まった単純作業です。

人間が行うことも当然可能ですが、人間が行う作業にはどうしてもミスが付いて回ります。また作業時間も個人の能力差によって上下し、新入社員が入ってきた際には教育係も必要です。RPAは一度ルール設定をした作業に関しては、ほぼ100パーセントミスなく作業を完遂します。

また、その作業スピードは人間の数倍です。さらに、離退職の心配もなく教育の必要もありません。

導入費用は一定金額かかり、ランニングコストも必要ですが、人間に比べれば圧倒的に安価です。

RPAが得意とする業務

・大量データの転記作業
・起案、承認等のワークフロー操作
・ダイレクトメールの送信
・Webサイト検索、インターネットからの情報収集
・Webサイトの更新
・HPのリンクやメーリングリストの死活確認
・印刷・PDF化作業
・データ分析、加工と配布
・複数台の端末を用いた負荷テスト
・サーバーメンテナンス(コマンドライン操作)
・SQL発行(DB管理ソフトの操作)

以上のように、エクセルからエクセル、ワードから会計システム、クラウドから基幹システム、ブラウザからクラウドなど、さまざまなアプリケーションでの運用が可能です。

基本的に人間がPCで行える作業は全てRPAで代行できます。

人材不足を補い、生産性を上げる手段として現在さまざまな企業で導入が進んでいます。

会計処理をRPAで自動化した事例

購入した商品や仕入れ、支払った税金、売上などさまざまなお金の入出金を勘定科目に表し、伝票としてまとめる作業。昔は紙で行っていたものも、現在では会計システムなどでデータ記帳するのが当たり前となっています。これらの仕訳業務は経理における単純作業の代表格です。

特に仕訳作業は決算時期などの繁忙期に集中しますが、そんな猫の手も借りたい時期に、各部署が入力したエクセルのデータを確認しながら、1件1件会計システムに入力をしなければなりません。大量のデータ処理には時間がかかり、残業が定例化しているケースも少なくありません。そして、どれだけ気をつけていても転記ミスが発生します。

エクセルから会計システムへの転記入力、これはRPAが最も得意とする作業の一つです。何十時間とかかっていた作業が、ボタン一つで処理を開始、あとはロボット任せにすることができます。決算時期の多忙な中の単純作業がなくなり、転記のミスもゼロにすることが可能です。

RPAで帳票を作成した事例

RPAを導入することで、仕分帳や売上帳、支払伝票や収納伝票といった帳票を自動作成することができます。ある金融機関では、ローン申請の際に提出された財務諸表や年収資料を自社の帳票システムに登録する必要がありました。財務諸表や給与明細などは書式がバラバラであることが多く、人間が手作業で行うと大変な時間がかかるだけでなく、ミスも発生しやすくなります。

また、ミスがある場合は作業工程をやり直さねばならず仕事が前に進まない、売上に繋がる仕事ではないため、作業の手間に反して社員のモチベーションが上がらないという問題を抱えていました。

この金融機関では、RPAを導入することで、財務関連の帳票書類を全て自動化させることに成功しました。

帳票作成に必要な情報の収集からデータ入力までを自動化。

RPAの導入によって、人間が1件の帳票作成に1時間かかっていた作業を10分程度に短縮したそうです。また、登録のミスもゼロになったため、差し戻しが発生することもなく、見事業務の効率化に実現しました。

OCRを使った請求書のデータ自動化事例

OCRとは、Optical character recognition(オプティカル キャラクター リコグニション)の略で、光学文字認識と呼ばれます。スキャンされた紙文書の手書きや活字を文字コードに変換するためのソフトウェアで、近年、帳票の電子帳簿保存などに用いられています。

OCRによってテキストデータとなったものをERPへ転記するのは、これまで人間の手作業でしたが、RPAを使うことで全て自動化することが可能になりました。ちなみに、ERPとは【Enterprise Resource Planning(企業資源計画)】の略で、統合基幹業務システムや、基幹システムと呼ばれます。

会社経営の中でマストとなる会計業務、人事業務、物流業務、販売業務などの情報を一元管理するシステムです。

改善例:A社の場合

・資料に不足はないか?
・決裁権者は誰か?
・見積もり金額はあっているか?

RPAを導入することで、読み込んだ請求書データの情報を電子決済データと付き合わせ、審査業務を自動化します。情報の不足や、擦り合わせたデータに齟齬があった際にはエラーとなります。

人間はエラーとなったデータのみをチェックし修正すればよく業務の大幅時短が可能です。

改善例:B社の場合

ある企業では毎月の入金業務で発生する、支払い明細書の情報とERPに登録されている売掛金情報があっているかを確認し、売掛金を消し込む作業を自動化。

「そんなに量がないのでは…」と思うかもしれませんが、この企業では支払い明細書だけで毎月ダンボール1箱に上り、手作業で行った場合300時間弱かかっていたそうです。

RPA導入後、人間が行う作業は支払い明細書のスキャン作業のみ。それから売掛金の消し込み作業完了まで、全てロボットが代行するようになりました。結果、人間の作業時間を85%削減することに成功しました。ちなみに、「OCRの能力はどのくらい信用できるものなのか」と気になる人もいるかもしれません。これまでのOCRでは、概ね60〜80%の識字率で合格点とされてきました。

識字率60%では、100枚のスキャンで40枚エラーが出ることになります。結局半分近くを人間が修正しなくてはならないのであれば意味がありません。しかし、AIやビッグデータを活用することにより、識字率は大幅に向上しています。

TOMAコンサルタンツのすすめるAI-OCRで実測値を計測したところ、手書き文字では96%、活字に関しては99.7%という驚異的な識字率を叩き出しています。

改善例:C社の場合

この企業では、複数の子会社を持っていました。そのため、毎月連結決算システムに経理のデータを入力する必要がありました。

しかし、親会社と各子会社がそれぞれ別のシステムを採用しており、人間の経理担当者がすべてのシステムを一つ一つ確認・加工した上で親会社の基幹システムに入力する作業が発生していました。

すべてのシステムを親会社と同じものに変えるには長期にわたる開発期間と、膨大なコストがかかるため、実行は困難でした。また、この企業はM&Aを繰り返すことで大きく成長してきたため、今後も新しい企業が子会社化する可能性も高かったことも同一システムへの連携のハードルとなっていました。

RPAを導入したことによって以下の手順が自動化されました。

・各子会社のシステムから必要な情報を抽出する。
・集めたデータをエクセルに自動記入する。
・基幹システムのフォーマットに適する書式にエクセルデータを変換する。

ここまでの作業を自動化することで毎月10時間以上かけていた業務が短縮されました。

RPAの導入によるに恩恵は時間短縮だけではありません。このような月末に締めなければならない経理業務は、スケジュールがタイトなことがほとんどです。夕方までに各部署がアップしたデータを担当者がそれ以降にまとめるため、深夜まで残業をすることが常態化していました。

RPAによってビジネスタイムを超えるのが前提だった残業がなくなり、経理担当者の身体的負担が軽減しました。

経理にRPAを導入しても上手くいかない事例

せっかくRPAを導入したにもかかわらず、運用が上手くいかない例が少なからず報告されています。数百万円のコストをかけてシステムを構築したにもかかわらず失敗してしまうのは一体なぜなのでしょうか。第一に、経営層と現場の意識のズレが大きな原因です。

経営層がなぜRPAを導入したいのか、導入によって何を改善し、現場がどんな状況になっていることを目指しているのかといった思いが共有されていない場合、失敗することが多くなります。経営層の熱い思いと同じ温度感で現場が改善に前向きな状況を作らないといけません。

第二に、新しいシステムを導入するには綿密な計画が必要です。

先の事例で紹介した企業では、RPA導入のプロジェクトチームを発足し、現場にはどんな単純作業があり、どんな作業をどこまでRPAを用いて自動化すれば費用対効果が最大になるか。空いた勤務時間をどのように活用するかまでしっかりと考えています。

このような計画が杜撰だと、導入したことによって逆に業務量が増えてしまったり、結局現場が使いこなせなかったりといった状況に陥ってしまいます。第三に、意外と盲点なのが、自動化したい作業がマクロなどで代用可能な場合です。

エクセルを起点とした業務の自動化で、そこまで大量のデータ処理を行わずに済む場合。そしてマクロを使いこなせるプログラミング言語に詳しい人材がいる場合には敢えてRPAを導入する必要がないこともあります。

RPAの導入は業務改善の一部だと心得る

今回は経理業務に対するRPAの導入事例を中心に解説をしました。

RPAはあくまで業務改善の手段の一つです。

自社業務の効率化や生産性の向上が目的なので、自動化することがゴールとならないようにしましょう。そして、業務改善には自社業務にしっかりと目を向けた課題の抽出が大切です。自分のことを客観視することが難しいように、自社課題を自分たちで見つけることは意外と困難なもの。

もし、業務改善の方法に迷ったら、TOMAコンサルタンツにご一報ください。自社課題の抽出、RPAで自動化すべき業務の選定、現場における定着まで親身なフォローをさせていただきます。