単純作業を自動化して業務改善を行いたい。そして、現場の負担を軽減し、新しい事業に乗り出したいと考え、意気揚々とRPAを導入したがうまく運用できていない…。このような企業が少なからず報告されています。
RPAの導入を確実に成功させるにはどうすれば良いか。その近道となるのが、失敗事例を学ぶことです。
今回は失敗事例からRPAの上手な導入方法を解説します。
RPAは中小企業の未来を支えるシステム
RPAは現在、業種を問わずあらゆる企業に導入が進んでいます。RPAとはRobotic Process Automation(ロボティック・プロセス・オートメーション)の略で、ルールエンジン・機械学習・人工知能などを活用し、ホワイトカラー業務を効率化・自動化するソリューションです。
日本の少子高齢化による労働力減少の解決策、働き方改革を成功させる最終兵器として注目されています。
仮想知的労働者(デジタルレイバー)とも呼ばれ、人間の労働力と同様に企業継続に欠かせない存在となっているケースも少なくありません。
では、なぜここまでRPAの導入が注目されるのか。それは多彩なメリットがあるからです。
その1.ケアレスミスはほぼゼロ!正確にミスなく作業をこなす
人間はどう頑張ってもミスを犯してしまう生き物ですが、RPAは設定したルールの作業は、確実にこなします。
その2.人間の数倍のスピードで作業をこなす
また作業スピードも人間を凌駕し、何時間でも継続して行えます。そのため何千、何万という膨大なデータであっても安心して仕事を任せることが可能です。
その3.一度設定すれば教育の必要なし
人間は仕事を覚えるまで、教育係がていねいに指導しなければなりませんし、フローに抜けが発生することもあります。人が変われば再教育が必要です。RPAは一度設定した仕事を忘れることはありません。再教育の必要がないということは、教育係の仕事負担も減ります。
その4.時間制限なく働ける
日本における人間の労働時間は法律によって決められています。時間外労働時間も月45時間、年360時間が上限です。しかし、RPAは深夜であっても土日であっても24時間、365日働かせることができます。
その5.ITリテラシーを必要としない操作性
プログラミング言語など、専門知識がなくても行動シナリオを操作できます。そのため、現場にも浸透しやすいというメリットがあります。
その6.人間は生産性の高い業務に集中できる
繰り返しの単純作業は生産性が高いとは言えません。生産性の向上のために、人間は人間にしかできない仕事に集中しなければなりません。RPAは生産性の低い仕事を安心して任せることができます。
その7.休職・退職の心配がない
親の介護、出産、結婚、病気など、人間は急な退職や離職の可能性がゼロではありません。RPAはその可能性がゼロなのも、経営者としては安心できるポイントです。
その8.新人も生産性の高い仕事に専念できる
「新人は下積みが必要」という考えはもう昔の話。単純作業はRPAに任せ、新人時代から生産性の高い仕事に集中できれば、それだけ成長も早くなります。
その9.コストの削減
人間よりもコスト面でRPAは優れています。できる作業は限定的かもしれませんが、ミスなくスピーディに仕事をこなせるのは十分に魅力的です。
その10.自動化できる幅が広い
RPAの良いところは、Officeはもちろんクラウドから、基幹システム、会計ソフトなどパソコン上で操作できるものであればどんなアプリケーションでも自動化が可能な点です。
このような多数のメリットがあるからこそ、導入に踏み出す企業が増加しているのです。RPAの市場規模は2020年には5000億円に達するとの予測が立てられています。
RPAの導入がうまくいかない理由
では、なぜこれだけ便利なRPAの導入が失敗に終わるのでしょうか。まず、頭に入れておくべきは、なんでもできる魔法のツールではないということ。そして、RPAをコントロールするのはあくまで人間であるということです。
簡単に導入できると思ったら、自社の環境が選定したRPAに適していなかったなどの理由も耳にします。扱う側の認識不足、技術不足、事前検証不足が失敗の原因となるようです。
それでは具体的な失敗要因を解説したいと思います。失敗を学び、同じ轍を踏まないように配慮すれば、RPAは強い味方となってくれるはずです。
その1.自社業務の把握「見える化」が不十分
もっとも大きい失敗要因となるのが、自社のことをきちんと把握できていない状態でRPAを導入し、不発と終わる事例です。働き方改革の推進によって業務の棚卸を行っている企業も多いと思います。現状、どの部門で、どんな業務があるのかを徹底的に調べつくすことがRPA導入には必須です。
業務の棚卸が終わったら、業務を3種類に分けてみると良いでしょう。
・経験や知識が高度に必要となる「感覚型」
・一定のパターンから選択する「選択型」
・誰でも作業可能な「単純型」
RPAで代替可能なのは「単純型」と「選択型」の業務です。この作業の中から費用対効果の高い作業をRPAへの移行を検討します。
あまり作業負荷がかかっていない業務をRPAに移行したり、「感覚型」に近い業務をRPAに移行させようとし、膨大なコストと開発期間がかかると、失敗するケースが多いようです。
その2.現場と経営層の意識の乖離
これも意外と多い失敗原因です。経営層の一方的な思い込みで業務改善を狙いRPAを導入しても、それを扱う現場の意識が追いつかないことがあります。当然、現場の意識、熱意が足りないとRPAを導入しても中途半端になってしまいうまく活用されません。
また、RPAの導入によってそれまで単純作業を行っていた人員がリストラにあうのではないかと言った憶測、不満が起こることもあります。解決策としては、経営層が導入の意図をしっかりと現場に伝えること。そして、実際の導入に関しては経営層ではなく、現場主導で行うことが重要です。
片手間で導入すると上手くいかないことが多いので、専任者を任命し、専任者を中心にチームを結成し開発運用を行うのが良いでしょう。
その3.RPAに仕事を任せ過ぎることで、RPAの属人化が起きる
これは、ある程度導入が成功した後の問題です。あまりに便利だからといって無作為にRPAを導入してしまうと、RPAの業務を人間が行えないレベルになってしまうことがあります。
・あまりに膨大なデータを扱っているRPAがシステム障害などで止まってしまった際に人間がフォローできない。
・担当者の引き継ぎが不十分で、RPAに行わせている業務が把握できない。
このような場合、RPAが故障した場合、事業継続すら危ぶまれる危険があります。また、人間がコントロールできなくなってしまったRPA(通称:野良ロボット)を放置していると、セキュリティ上の問題も発生します。RPAから機密情報が盗まれるリスクも発生するのです。
万が一、システムが止まってしまった時、バックアップをどうするか、どこに連絡をすれば良いか、誰が連絡をするのかといったフローをしっかり決めておくことも大切です。
その4.導入によって業務時間が増えてしまう
RPAの導入は「目的」ではなく、業務改善の「手段」です。業務の効率化のために導入すべきなのに、蓋を開けてみると現場の作業量が増えている、あるいは作業時間が減っていないという例も見受けられます。しっかりとした計画を立てないで導入をすると、運用を開始しても修正の繰り返しとなってしまうのです。
定期的なメンテナンスはもちろん必要ですが、過度な再設定が発生しないよう、綿密な計画を立てることが大切です。
また、ITリテラシーに明るくない人材でも操作可能なマニュアルを用意する。引き継ぎは徹底して行うなどの対策をすると良いでしょう。
その5.費用対効果の目標値を設定していない
これも事前の計画が甘いことで起きる失敗例です。RPAを導入したことにより、「なんとなく業務改善されたような気がしているけど…実際とのところよくわからない」という例も散見します。RPAの導入後による成功目標を達成するべきです。
例えば、
・業務時間が●時間減少する。
・売上が●円上がる。
・人件費が●円下がる。
・業務効率が●%改善する。
具体的な目標値を設定することで、達成できていない場合は何をブラッシュアップすれば良いのかを明確にしやすくなるでしょう。
また、「導入から1年運用して目標達成率が50%にも満たない場合はRPAの運用を取りやめる」といったゴールも考えておくべきです。
人の振り見て我が振り直せ
いかがでしたか?これから導入を検討している企業はもちろん、試用を始めた企業も参考になる話だったのではないでしょうか。本やネット、セミナーなどに参加してもRPAの良いところばかりをピックアップするケースがほとんどです。他社の失敗事例をしっかりと自社に反映できればRPAの導入はうまくいくはずです。
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