顧客の情報は、新規の顧客を獲得するため、そして顧客と良好な関係を築くための財産と言っても過言ではありません。中小企業ではこの顧客情報をエクセルで管理している企業も少なくないと思います。
エクセルは本来、表計算ソフトとして開発されましたが、うまく活用することで顧客管理ツールにもなります。今回はエクセルでの顧客管理システムの作り方から、メリット・デメリットまで徹底的に解説したいと思います。
目次
絶対忘れてはならない顧客管理の目的
そもそも、顧客管理とは何のために行うのでしょうか。
たとえば会議で気がつくと、議題から話が逸れて、関係ない話で炎上している…。そんな経験、一度はありますよね。同じように「本来の目的」というのはわかっているようで、気づいたら逸脱しているなど、実はとても見失いやすいものです。そこで、まずは顧客管理とは何かをおさらいしましょう。
顧客管理とは顧客の担当者や連絡先といった基本情報、購買履歴、営業の訪問履歴、提案内容、売上の変遷などの情報を管理して、新規顧客の獲得、顧客満足度の向上、優良顧客の育成を実現するために行う営業活動です。
一社一社、一人一人のニーズに合わせた商品・サービスを提供するOne to Oneマーケティングは現在のビジネスにおいて常識となりつつあります。
移動手段として、車が欲しい人、自転車が欲しい人、駅近物件が欲しい人がいたとして、全員に「バイクを購入しませんか?」と営業をかけても意味がありません。それどころか投げかけ方によっては「私のことを何もわかっていない」と顧客を怒らせてしまうケースもあるかもしれません。
顧客管理システムは自社の営業活動につなげるもの
一見うまくいっているようでも、顧客の情報を担当営業だけが自分のPCや頭の中に記憶していて、他の営業は何も知らないというケースもあります。このような属人化した営業活動が常態化していると、担当が変わった瞬間に前の営業の方が良かった等のクレームが発生する可能性があります。
このような状態を解決するために行うのも顧客管理の役割の一つです。
顧客の情報を全員が管理共有し、顧客が欲しているものを誰が担当しても的確に提案できる。さらには新たな価値を追加提案することができれば、顧客満足度は上がるはずです。顧客管理システムは自社の営業活動に役立つものを作成しましょう。
システムの作り方を学ぶ前に、自社課題にしっかり向き合う
各営業の持つ情報を一元管理することが顧客情報の基本ですが、ではどんな情報を管理すれば良いか、それは企業によって異なります。
・見込み客を囲い込むための市場マーケティングが苦手
・営業が受注をもらうための提案力・クロージング力が弱い
・販売後のアップセルに課題がある…etc
まずは自社の課題は何かをしっかり把握しましょう。管理システムを作るのはその次です。そして、作るときは重要な課題からが基本です。いきなり全てを管理しようと思ってもなかなかうまくはいきません。
課題を絞った顧客管理であれば、SFAやCRMなどの顧客管理システムを、費用をかけて構築する必要はなく、エクセルから始めても十分管理可能です。
顧客管理システムをエクセルで自作する
表計算ソフトとして開発されたエクセルはワードに比べると複雑ですが、少し勉強すればある程度のことはすぐにできるようになります。
自作していると、「こんなことはできないのかな?」といった疑問が湧くことがあるかもしれません。
エクセル関連の書籍は星の数ほど発売されているので、それらを購入してもいいでしょうが、今はネットも充実しています。【エクセル 円グラフ 作成】など検索をかければ大抵の方法はわかってしまいます。
では、エクセルで顧客管理をする場合、どんな検索が多いのでしょうか。実例を交えて解説したいと思います。
顧客管理表は見やすく作るのが基本
ユーザーインターフェースがわかりにくいものを好む人はいないでしょう。見づらいシステムは基本、定着しません。顧客管理にデザインなんてと思うかもしれませんが、世の中のビジネスはデザインが深く関与しているのです。
同じ燃費・機能・価格の車があった2台あった場合、どちらを購入するか、決め手になるのはやはりデザインではないでしょうか。それどころか、少しくらい機能や燃費が劣っていてもデザイン性を重視することはよくあります。それくらい見た目は重要なのです。
顧客管理システムは社員全員が使うわけですから、見やすさは追求しましょう。
・表全体に罫線をつける。
→罫線をつけたいセルを選択し、[ホーム]タブの「罫線」を使う。
・エクセルの一番上の項目欄には色をつける。
→色をつけたいセルを選択し、[ホーム]タブの「塗りつぶし」機能を使う。
・スクロールしても表の項目欄が動かないように固定する
→固定したいセルを選択し、 [表示] タブの 「ウィンドウ枠の固定」などを使う。
・一行おきにセルに色を付けるルール付けをする
→表全体を選択し、[ホーム]タブの[テーブルとして書式設定] などを使う。
これらを実践するだけでエクセルは圧倒的に見やすくなります。機能の操作方法はエクセルのバージョンやOSによって多少変化すること、そして今回はエクセルの使い方講座の記事ではないので操作方法はあえて省略します。前述した通り、検索をかければ大概のことはわかりますから、わからないという人は挑戦してみてください。
エクセルは検索機能で欲しい情報をすぐにピックアップできる
顧客の数が少なければ問題ありませんが、管理する数が何百、何千とある場合は検索機能を有効活用しましょう。Windowsの場合はCtrl+F、Macの場合はcommand+Fを押すと検索バーが出てきます。ここに調べたい企業名やキーワードを入れると、すぐに表の中から見つけることができます。最近ではデフォルトとして、右上に検索バーが表示されている場合もあります。
顧客管理リストが増えたときに重宝するソート機能
管理した顧客情報を活用し戦略を立てたい、あるいは売上の高い企業順に並べたい。そんな時には並べ替え機能が重宝します。[ホーム]タブの「並べ替えとフィルタ」機能を使うことでセルの数値の大きい順に並べたり、キーワードが入った情報だけを表示したり、ソートが可能です。
顧客名簿が増えたときの重複には注意
複数の人間が同じエクセルに入力し、その数が増えてきたときに気をつけたいのが、名簿の重複です。例えば、エクセルに入力したメールアドレスを使い、メルマガを一斉送信するといった場合、重複があると同じメールを顧客に送ってしまったり、売上が二重に加算され、正しい情報が得られなくなってしまったりします。
そこで活用したいのが、エクセルの重複をチェックする機能です。
チェックしたいセルを選択し、[ホーム]タブの「条件付き書式」を選びます。その中の「セルの強調表示ルール」「重複する値」を選択すれば重複するデータが色付きで表示されます。
この機能もエクセルで顧客管理をする際にはマストで覚えておきましょう。
エクセルでの顧客管理で活用したい「フォーム」機能
顧客情報が増えていくと徐々に入力作業が大変になっていきます。例えば、顧客数が数百件になった場合、シートの下の方までずっとスクロールし続けてから入力するのは大変です。そんな時に便利なのがフォーム機能です。
企業名や電話番号、住所といった基本情報ならフォームを作成した方が楽に入力できます。
エクセル顧客管理の見本はネット上にたくさんある
エクセル顧客管理を実践したいと思ったら、一度ネット検索をしてみることをおすすめです。さまざまなテンプレートの見本がネット上には転がっています。作り方に迷った時や、見やすいデザインを勉強したいときには参考にしてみるといいでしょう、
テンプレートの有効活用
これまではエクセルで顧客管理をするシートを自力で作成する方法を解説してきました。しかし、時間がない。どう頑張ってもうまく作れない。見やすいデザインがわからない。どこかに不備があったらどうしよう…。など自力作成に挫折してしまうこともあるでしょう。
そんな時はネット上にあるテンプレートをダウンロードするのも一つの手です。
ネットでダウンロードできる顧客管理シートを雛形にすれば効率的
インターネット上には無料で使えるエクセルのテンプレートが多く存在します。これをダウンロードして、足りない部分は自社専用にカスタマイズすれは大きく時間を短縮できます。ある程度エクセルを使いこなせる人でも、テンプレートを雛形に作る方が効率的かもしれません。
無料のエクセルテンプレートは安全?
では、エクセルのテンプレートの安全性はどうでしょうか?ほとんどのテンプレートは安全です。気をつけたいのはダウンロードしたファイルを開くとき、「マクロを有効にするか」という問いが出るファイルです。
パソコンの乗っ取りや、ウイルス感染の危険があります。そのため「マクロを有効にするか」と聞かれた際には「いいえ」を選び、ダウンロードしたファイルをゴミ箱に捨てましょう。「はい」を選ばない限り安全です。
無料の顧客管理テンプレートにはどんなものがある?
無料の顧客管理テンプレートはさまざまな種類があります。
・収支管理表
・経費管理表
・ビジネス資料共有ノート
・スケジュール行程管理表
・見積書
・請求書 …etc
自社の課題解決にあったテンプレートを探してみると良いでしょう。
エクセルでの顧客管理シートのデメリットは?
導入コストを抑え、さまざまな顧客情報を管理できるエクセルですがメリットだけではありません。考えられるデメリットはどんなものがあるのでしょうか?
エクセルは同時編集ができない、社外で自由にデータを開けないなど、データ共有が得意なソフトではありません。そのため、リアルタイムでの売上の変化に対応できないといった不具合が発生します。多くの場所で大勢が同時に管理するような場合にはあまりおすすめできません。
エクセルでの顧客リスト管理に限界を感じたらSFA・CRMも要検討
顧客管理の初級、入り口としてエクセルでの顧客管理はおすすめですが、企業の規模が大きくなってきたり、管理する情報が膨大になったりと限界を感じるようになったらSFA・CRMの導入を検討する時期が来たということでしょう。データ共有や同時編集、リアルタイムでの情報更新など、エクセルのデメリットの多くをカバーすることが可能です。
患者のカルテもシステムで管理する時代
一例として、顧客管理は医療現場にも広がっています。患者のカルテを電子カルテに移行する医療機関は年々増加傾向にあります。もちろん顧客一人一人の情報を管理するというのは医療現場だけではありません。美容室やネイルサロン、マッサージサロン、整体院、エステサロンなど、さまざまな業種で顧客カルテは作られています。
近年では顧客カルテを簡単に管理できるアプリケーションも開発されているくらいです。「企業が本腰を入れて開発する」ということは、それだけ「需要がある」という意味でもあります。
顧客管理を紙でする時代は終わりに近づいている
日本では、江戸時代から行われていた顧客管理。当時はもちろん紙と筆で帳簿をつけていました。しかし、時代は変わりました。現在では請求書などの国税関係書類も電子保存することが認められています。今後もこの流れが進むことはあっても、紙の管理に戻ることはないでしょう。
ファイル、オンプレミス、クラウド、顧客管理の方法に絶対はない
今回はエクセルでの顧客管理の方法を解説してきました。中小企業の多くがエクセルを使った管理で自社課題を解決できると思います。しかし、絶対エクセルが良いわけではありません。将来を見据え、クラウドの顧客管理システムを導入するのも良いでしょう。
現在、数多の顧客管理システムが販売されています。どんなものを導入すれば良いか、迷った時はぜひTOMAコンサルタンツグループにご相談ください。企業の課題抽出からお手伝いさせていただきます。