企業の生産性を向上させる方法として、RPAが注目されています。一方で、RPAはAIと混同されている場面も多く、深い理解を得ているとは言いにくいでしょう。RPAとAIの違いやメリット、導入方法などが分かれば、企業の業務効率向上に大きく役立ちます。この記事では、RPA導入にあたってのさまざまな疑問を詳しく解説していきます。
目次
1.RPAとは何か
そもそもRPAとは「ロボティック・プロセス・オートメーション」の略語です。直訳すれば、「ロボットによる工程の自動化」となります。つまり、企業が担っている業務をロボットの働きによって自動化しようという概念です。あらかじめ、操作画面上で業務手順をプログラミングしておけば、業務をロボットに自動処理させることは可能となりました。多様なアプリケーションを使い分けることで、複数の工程にも対応できます。
RPAは職場によって向きと不向きがあります。一定のルールに従って業務を処理していくルーティーンワークにRPAは適しているでしょう。そのほか、単純作業でありながらも業務の量が多すぎて困っている職場の解決策にもなりえます。
2.RPAとAIとの違い
人工知能を意味する「AI」はRPAと混同されやすい概念です。そもそも、AIはコンピュータによって知能を実現させ、自動的に情報を処理していくことを指す言葉です。その適用範囲は広く、決してビジネスシーンだけに留まりません。また、AIをシステムに組み込んで利用することも増えてきています。つまり、RPAの中にAIを組み込んで業務に生かすのも可能です。
ただし、現状ではAIを導入しているRPAはそれほど多くありません。なぜなら、RPAが効果を発揮しやすいのは単純作業の多い職場だからです。そのような場所だと、AIを利用しなくても一定の作業ルールをシステム化できます。ただし、データと正解の組み合わせを学習し、正解を予測する「機械学習」は、AIの得意分野です。機械学習が必要とされる現場のRPAにAIを取り入れた場合、売上予測や業務効率化のプランニングなど、高度な作業を任せられるでしょう。
3.RPAが普及した理由
ロボットの発達とともにRPAは多くの企業や組織で実用化されてきました。その背景には、少子高齢化も関係しています。若者世代が減り、退職を控えた高齢者が増えたことで企業にとって労働人口の確保は急務となりました。人手不足を解消するには、業務効率化を無視できなくなっています。また、政府の推進する「働き方改革」の影響で、企業は従業員に過剰労働を強制しにくい状況が続いています。それでいて、生産性を高めなくてはいけないため、業務効率化への意識はより高まりました。
かつて「自動化」といえば、ブルーカラーの働く工場などで課題とされていた言葉でした。しかし、時代の変化とともにホワイトカラーにとっても自動化は重要なテーマになりつつあります。ロボットによる業務の自動化が可能と分かった現代では、RPAの導入が積極的に行われています。しかも、RPAの中にはプログラミングの必要がなく使い始められるものもあるため、IT部門以外からも注目されているのです。
4.RPAを導入するメリット
業種に関係なくRPA導入が盛んになっているのは、企業にとって大きなメリットがあるからです。以下、メリットを紹介していきます。
4-1.生産性が向上する
企業にとっては、生産性が向上するのはもっとも大きなメリットでしょう。RPAは人間以上の処理速度で仕事をこなせます。特に、手順の変わらない事務作業においては、ロボットは人間を軽く凌駕しています。しかも、RPAに休憩時間は必要ありません。人間であれば長時間作業すると集中力も体力も落ちるところを、RPAは変わらない精度で働き続けられます。
そもそも、RPAは作業のミスをしません。細かい入力作業などが発生する部門では、人間以上の戦力になれます。これらの強みを兼ね備えていることから、RPAは企業の生産性を高める方法として認識されるようになりました。
4-2.コストが削減できる
RPAはコストパフォーマンスも魅力的です。もちろん、RPAもコストがまったくかからないわけではありません。ただ、導入コストと維持コストのみで生産性が向上するので、収支がプラスに傾く企業は多いのです。しかも、RPAの支出額は明確です。契約しているメーカーとの間で月額の維持費が取り交わされているのだとすれば、それ以上の費用は発生しません。残業代が月々いくら発生するか予測しにくい人間よりも、経費の見通しを立てやすいでしょう。
そして、RPAは複数人分の業務を同時に処理することが可能です。雇用コストの削減につながり、企業の利益率を上げられます。あるいは、RPAによって必要のなくなった人材を別の部門に回し、新事業を立ち上げるなどの展開も実現しやすくなるのです。
4-3.社員が非定型業務に集中できる
企業の業務は「定型」と「非定型」に分けられます。そして、生産性を高めるためには非定型業務にも注力しなくてはいけません。たとえば、企画やマーケティング、顧客との商談などは非定型業務にあたります。しかし、定型業務の量が増えれば非定形業務に割ける時間が減っていき、生産性は落ちてしまいます。そこで、RPAの重要性が注目されるようになりました。RPAを導入すればロボットに定型業務を任せられるので、従業員は非定型業務に集中できます。
一般的に非定型業務は予測が難しく、定型業務よりも複雑です。従業員が非定型業務に集中できれば、企業全体の利益につながるでしょう。さらに、組織全体の業務効率も高まります。単純作業ではなく、難易度の高い作業を人間が請け負うことで、より多くの案件をこなせるようになるでしょう。
5.RPAにできること
企業のさまざまな可能性をRPAは広げてくれます。RPAにできる業務を意識しながら、効率的に導入しましょう。
5-1.人事・経理・事務の定形業務
RPAの適性を理解すると、導入はよりスムーズです。たとえば、工数の多い単純作業はRPAの得意分野といえるでしょう。一定のルールが決められている「定型業務」であれば、RPAは高い処理能力を発揮します。
具体的には、顧客リストや数字などをシステムに登録するだけのデータ入力作業があてはまります。また、データを決められた法則に従って管理する作業にも向いているでしょう。販売管理や経費処理など、事務職が担ってきた業務の一部もRPAに託せます。今のところ、リリースされてきたRPA製品の多くはこれらの領域を対象としています。
5-2.データ収集・分析
マーケティング戦略を立案する際などに、データ分析は欠かせません。しかし、正確に分析を行うには膨大なデータ量と向き合い、傾向や法則を見出す必要があります。これらの作業を人力で行うのはほとんど不可能だといえるでしょう。しかも、データは次から次に更新されていくので、専用の分析ツールがあったとしても処理が追い付かなくなります。RPAであれば、構造化されていないデータを自動的に収集して、分析まで行える製品がリリースされています。
これらの機能を利用すれば、RPAはセキュリティログを分析したり、複数の要因から企業の収支を計算したりすることが可能です。また、ユーザーごとに適切なレコメンド広告を出すなどの業務も自動化できます。
5-3.ビッグデータの取扱い
RPAの一部として、AIに重要な役割を担当させることもできます。たとえば、機械学習が求められる領域でAIは優れた処理能力を示すでしょう。このとき、RPAは大量のデータを自動的に取り込んで学習します。意味性が強いものから弱いものまで対象となる、膨大なデータの集合体をビッグデータと呼びます。人間の目には何の変哲もないノイズのようなデータでも、AIがビッグデータとして収集したとき、有益な解析ができることもあるでしょう。AIがビッグデータから売上やトレンドを予測できれば、企業は経営戦略を立てやすくなります。
さらに、RPAとAIを組み合わせると、天候や経済情勢までシミュレーションすることも不可能ではありません。天候に左右される仕入れや、海外の企業との取引などで判断材料にできます。
6.RPAを導入する流れ
導入を焦ると、RPAで期待した効果を得られません。企業がRPAを使いこなせる環境を整えてから導入に踏み切りましょう。ここからは、RPAを導入する流れを工程ごとに説明していきます。
6-1.導入製品を選ぶ
RPAの導入にあたっては、最初に製品を選びましょう。RPAと一口にいっても、実際には多様な製品が開発されています。使用される業界や規模、仕事の進め方などによって適切な製品は変わるでしょう。中には、プログラミングを細かく行わないと実用できない製品もあります。自社との相性を見極めつつ、担当者のスキルに見合ったRPAを選ぶことが大事です。優れた製品であっても、担当者が使いこなせない難易度であれば、企業の不利益になりかねません。
さらに、RPAは有償タイプと無償タイプがリリースされています。一般的には、有償タイプのほうが機能の種類が多く、より高度な作業に対応しています。しかし、簡単な作業だけを任せたい企業では、必ずしも有償タイプを導入するべきとはいえません。無償タイプでも十分の場合があるので、予算も確かめながら検討しましょう。
6-2.構築・運用体制を整える
RPA導入を失敗してしまう企業の傾向として、「見切り発車」が挙げられます。とにかく一刻も早く業務効率を高めたいという気持ちだけが先行してしまい、構築や運用の体制が整っていない状態でRPAを導入するケースです。責任者がいない状態でRPAを取り入れても、トラブルに対応しきれません。あらかじめプロジェクトの担当者を決めて、その人たちを中心に導入を進めていきましょう。
なお、RPAの導入はIT関係の部署が中心になることが少なくありません。しかし、導入までの道のりが長いうえ、他の部門の協力がなければ分からない部分も多いでしょう。必要に応じて、IT部門以外の人間もプロジェクトに参加してもらうのが得策です。あらかじめ導入や運用のビジョンを固めておけば、RPAはスムーズに実現します。
6-3.部分的な試行運用を行う
全ての導入段階が終わってからRPAを使い始めると、不具合が生じることもあります。そのようなときに、どの工程まで遡れば原因を修正できるのか分からなくなるケースも出てくるでしょう。RPAの構築では、急に対象業務をシステムに置き換えるのではなく段階的な移行を目指します。部分的には人間による作業の領域も残しながら、少しずつRPAが処理する分量を増やしていきましょう。
仮に、試行運用の最中で課題が見つかれば、一旦導入を止めます。そして、原因を追究して修正し、再び動作を確認しましょう。問題がなければ、試行を続けます。そうやって十分にRPAを本格導入できる土台が生まれたところで、最適な運用形態を模索し始めることが大切です。
6-4.本格導入・保守改善を行う
試行運用を一定期間続けたら、大方の問題点は解決できます。それからようやくRPAを本格的に導入しましょう。ただし、導入してからも作業がなくなるわけではありません。安全にRPAを使い続けるためには、メンテナンスが非常に重要です。パソコンのハードディスクやSSDの空き容量は常にチェックし、急に業務が遂行できなくなるトラブルが起こらないように努めましょう。また、CPUやメモリに負荷がかかっていないかも定期的にチェックするべきポイントです。
保守の精度を高めるには、RPAによる実績を全て記録しておきましょう。そして、担当者を中心に記録をこまめに読み込んでいきます。もしもRPAに不具合を感じたら、客観的なデータを参考にして改善策を考えることが大事です。
6-5.セミナーへ参加・プロへ相談する
社内の人材だけではRPAを効果的に導入できないことも珍しくありません。そもそも、RPA導入には専門性の高い作業が続出します。もともとIT関係にそれほど詳しくない人間しかいなかった企業にとっては、かなり困難な道のりとなるでしょう。そこで、セミナーに参加したりプロに相談したりしてRPAを構築していくのもひとつの方法です。
セミナーに参加すれば、導入時のポイントや注意点を理解できます。担当者に必要な知識が身につくので、予想できるトラブルに関しては事前に対策を立てられるでしょう。また、プロに相談すると自社の状況に合わせた助言をもらえます。セミナーは大勢の聴講生を対象にしているので、一般論や基礎の話で終わることもあります。特殊な事情を抱えた企業が、自社にぴったりのRPAを運用したいと願うなら、プロに直接指導してもらうのが賢明です。
RPAは業務改善に効果的!まずはプロに相談するのがおすすめ
企業が生産性を向上したいとき、RPAは非常に大きな役割を果たします。RPA製品はさまざまな種類に分かれているので、導入にあたってはプロの意見も聞いてみましょう。TOMAコンサルタンツグループでは、経験豊富なスタッフに無料相談可能です。業務改善についてのセミナーも開催しているので、まずは気軽に連絡をして話を聞いてみましょう。