新型コロナウイルス感染症の流行により、テレワークを導入する企業が急増しています。 テレワークを導入する上で絶対に欠かせないのが業務のペーパーレス化です。 今回はペーパーレスを進めることによるメリット・デメリット、導入方法について解説したいと思います。
目次
ペーパーレス化とは?なぜ今注目されているのか?
ペーパーレス化とは、業務で必要な書類や会議資料をデジタルデータとして保管する取り組みのこと。 パソコンやタブレットなどで、欲しい資料をすぐに閲覧することができるので、資料を探す手間が省けたり、外出先でも資料を取り出せたりと働き方が大きく変わる可能性を秘めています。
日本は他国に比べ、紙の使用量が多い傾向があります。国民1人あたりの紙・板紙消費量は世界平均が56.2キログラムなのに対し、日本は201.8キログラムです。 つまり日本人は世界平均の3.5倍、紙を使用しているのです。
その原因の一つが長らく根付いているハンコ文化だと言われています。
政府は個人や事業者から年間1万件以上の申請がある行政手続き約820種類の内、785種類の押印廃止を検討中です。 そのため、長らく続いたハンコ文化は徐々に姿を消すことが予想されます。 しかし、伝統を重んじる傾向の強い日本では、「昔からこのスタイルだから」という理由で長らく続いた習慣を変えることに抵抗を感じ、改革に踏み切れないケースも少なくありません。
参考:国民一人当たりの紙・板紙消費量 https://www.jpa.gr.jp/states/global-view/index.html#topic03
では、なぜ今ペーパーレスが叫ばれているのでしょうか?
その理由の一つが政府の推進する「働き方改革」です。「働き方改革」は、多様な働き方に対するニーズに対応できる社会を実現し、労働をする一人ひとりがより良い将来の展望を持てるようにすることを目指しています。
2018年6月には働き方改革関連法が成立し、2019年4月から順次施行されています。 政府がこれほどまでに「働き方改革」を推進する理由は、少子高齢化によって生産年齢人口が減少しているからです。 また、育児や介護をしながら働きたい、時間を有効に使いたいというニーズも高まっています。 これらの課題を解決するためには、抜本的な就業環境の改善が必要なのです。
特に、従業員数の約7割が中小企業・小規模事業者である日本では、中小企業の「働き方改革」がどれだけ進むかが重要になります。 中小企業・小規模事業者の職場環境が魅力的なものになれば人手不足の解消につながり、中小企業が元気になれば、それは日本が元気になることを意味するからです。
参考:2019年版中小企業白書 – 中小企業庁 – 経済産業省
https://www.chusho.meti.go.jp/pamflet/hakusyo/2019/PDF/chusho/00Hakusyo_zentai.pdf
ペーパーレス化がもたらすメリット
では、ペーパーレス化が実現することでどんなメリットが得られるのでしょうか?
メリット1:コスト削減
ペーパーレス化の大きなメリットの一つがコストの削減です。 紙代、プリント代、インク代、複合機のメンテナンス費用、機密文書の廃棄費用、印刷した資料の保管費用などさまざまなコストがかかります。 気付きにくいところでいうと、これらを管理するコピー用紙を購入する、インクを交換する、複合機のメンテナンス業者を呼ぶ、シュレッダーをかけるなどの人件費もコストになります。
ペーパーレス化が実現すればこれらのコストを大幅に削減可能です。 TOMAでは、2018(平成30)年に徹底したペーパーレス化に取り組んだ結果、コピーにかかる経費を3年間で63%削減することに成功しています。
例えば、会議に10人参加し、紙資料が10枚あったとします。白黒プリントの、コピー代を2円とした場合、この会議でのコピー代は200円です。 この規模の会議が1日5回、毎日行われたとすると、印刷代だけで年間(245日)で245,000円になります。 これがカラープリント(1枚約10円)になれば、コストは約5倍です。 会議資料にミスがあった場合や、資料をなくした場合に再プリントをするケースもあり、その都度コストは増加します。
「カラーでプリントした方がわかりやすいけど、コストを考えて白黒でプリントしている…」 オフィスワーカーであれば一度は経験したことがあるのではないでしょうか? 中にはルールとして白黒印刷が義務付けられているケースもあるでしょう。 ペーパーレス化の良いところは、コストが下がるだけでなく、カラー資料も気兼ねなく利用できる点です。
メリット2:業務の効率化
紙資料がデータ化されることで効率的に業務を遂行することができます。
第一に、資料の検索が容易になります。 紙資料の場合、欲しい資料を探す際にはキャビネットから過去の資料を探し出さねばなりません。 もし見つからなければ、データを再度プリントアウトするなど2度手間が発生することもあります。
自分で管理している会議資料などであれば自身の周りを探せば良いですが、契約書や帳票などの場合、倉庫や数あるダンボールの中から探し出さねばなりません。 資料をP D Fデータなどで管理すれば、検索バーにキーワードを入れるだけで容易に欲しい資料を手に入れることが可能です。
第二に、資料を時間、場所を選ばずに閲覧することが可能になります。 例えば、営業が外出先で顧客のデータを確認したいと思った場合、クラウド上に資料がアップされていれば外でも確認することができます。
紙資料の場合、持ち運べる量に限りがありますが、データで持ち運べるようになるとほぼ無限に近い量の資料を携帯することが可能です。 機密情報であれば資料に高度なパスワードをかける、データレスP Cやタブレットを用いてデバイスにデータを残さないといった対策でセキュリティ面はカバーできます。
メリット3:オフィススペースの有効活用
現金出納帳や売上帳などの帳簿、領収書、注文書、契約書といった帳簿書類は7年間の保管義務があります。 企業規模によって、これらの書類は1年分でダンボール何十箱となることもあります。 オフィスではスペースに限界があり、保管用の倉庫を借りている企業も多いでしょう。 しかし、ほぼ使用することのない書類を7年間保管するだけのスペースを確保することはとても勿体無いことです。
ペーパーレス化によって、書類の保管スペースが必要なくなれば、オフィスを有効利用できます。 また、フリーアドレスを導入したい企業にとっての壁が個人デスクに保管している紙書類というのもよく聞く話です。 TOMAでは書庫や紙を保管場所として利用していた場所は現在、カフェスペースとして打ち合わせや休憩場所に役立てています。
TOMAコンサルタンツグループの働き方改革・テレワーク導入事例を動画にまとめました。こちらも併せてご参考にしてください。
メリット4:情報セキュリティの強化
就業規則など機密扱いの紙資料を100人の従業員に配布した場合、100通りの保管方法があり、紛失・情報漏洩のリスクも100通り考えられます。 また、紙で保管している場合、重要な書類は鍵のかかる部屋や金庫に保管する必要があり、書類が必要になれば保管場所に行かなければ取り出すことができません。 鍵を管理する社員が決められている場合、その社員が出勤していなければ必要書類が取り出せないというケースも考えられます。 そのほかにも、火災をはじめとする災害によって原本が消失するかもしれませんし、盗難に遭う可能性もゼロではありません。
重要な書類をデータで保存すれば、セキュリティ面でのリスクコントロールが可能になります。
●セキュリティの強固なサーバーやクラウドでのみ書類を管理する。
●重要書類はアクセス制限や閲覧制限をつける。
●書類の開封時にパスワードをつける。
このように、紙で配布、保管するよりも情報漏洩の可能性を低くすることができるだけでなく、万が一情報が外部に漏れた際にもファイルを開けない対策を講じることができます。 万が一、サーバーが火災や震災で消失しても、クラウド上にバックアップを取っておけば復元が可能な点もメリットです。
メリット5:環境保全に寄与、企業イメージの向上
紙の消費が減ることは、原料である木材の量を減らすことにつながります。 ペーパーレスを進めることは、CO2の排出量を抑えることを意味し、地球環境の保全につながります。
企業が環境問題について真剣に考えている姿勢を外部にアピールすれば、ブランドイメージを向上させることが可能です。
以上のように、ペーパーレス化にはさまざまなメリットがあります。 しかし、ペーパーレス化にはどんなシステムを選択するかが重要です。 選択するシステムを誤ることはペーパーレス化の失敗を招きます。 導入するシステム選びは、専門家に相談することをおすすめします。
ペーパーレス化のデメリット
多くのメリットがある一方、ペーパーレス化にデメリットも存在します。 デメリットがあることを理解し、自社に導入する際の参考にすると良いでしょう。
デメリット1:操作には慣れが必要
ペーパーレスのデメリットとしてまずあげられるのが操作性の問題です。 特に、これまでモバイルツールに触れていなかった世代にとっては不便かつ抵抗を感じることでしょう。 その人が会社の管理職や重役である場合、ペーパーレス化が進まない可能性もあります。
また、会議資料などをタブレットで閲覧する場合、資料の文字が小さすぎて読みづらい、資料枚数が多いと紙資料に比べ全体像が把握しにくいというデメリットがあります。
モバイルツールの扱いに慣れている人でも、導入当初は新しいシステムに戸惑うかもしれません。 資料に直接メモをする人にとっては、iPadなどに搭載されている資料に直接書き込みができるタイプのデバイスでないと、ストレスがたまるでしょう。
デメリット2:情報セキュリティに関する教育が必要
PCやタブレットなどを用いることで、外出先でも自由に資料が閲覧できるようになると、 これまで以上に情報セキュリティ教育が重要になります。 P Cやタブレットをのぞき見される 喫茶店で営業に関する会話を聞かれる モバイルツールの紛失・盗難…etc 情報漏洩リスクが新たに発生するため、注意が必要です。
デメリット3:導入コストがかかる
ペーパーレス化にはP Cやタブレットなどの電子機器を用意しなければなりません。 また、外出先で安全なネットワークを利用するための機器も必要です。 これらを全社員分購入するには一定のコストがかかります。 ペーパーレス化は長い目で見ればコスト削減につながりますが、初期コストを捻出する体力がない場合は導入が難しくなります。
政府は企業に対してテレワークの導入を推進しており、助成金も用意されているので利用するのも良いでしょう。
>>TOMAではテレワークの導入のサポートも行っていますので、お気軽にご相談ください。
デメリット4:システム障害や故障のリスクがある
モバイルツールも万能なわけではありません。 システム障害が起きればクラウドにアクセスできずに書類をダウンロードできなくなってしまいます。 また、落下させてしまったり、お茶をこぼしたりして故障する可能性もゼロではありません。 大規模なシステム障害が続いた場合、仕事が滞る可能性もあります。
以上のように、ペーパーレス化には一定のデメリットがあります。 社内の会議資料などは全てペーパーレス化できても、中には法律によってデータ化ができない書類もあります。 メリットとデメリットのバランスを鑑みて導入を検討すると良いでしょう。
ペーパーレス化の手順・方法
では、どのようにしてペーパーレス化を進めれば良いのでしょうか。 一口にペーパーレスといっても、企業にはさまざまな書類があり、ペーパーレス化を実現するにはやるべきことがたくさんあります。
●社内稟議や承認などハンコを無くし、電子承認できるようにするにはワークフローの構築、専用のシステムを導入しなければなりません。
●資料をPDF化したい場合は、文書管理システムの導入が必要です。
●国税関係帳簿書類を電子保存するには、電子帳簿保存法に則った機器やシステムを準備しなければなりません。
●取引先との契約をデータで行う場合、電子契約システムを導入しなければなりません。
このように、ペーパーレス化には、既存業務の抜本的な改革が必要なため、経営層をはじめ全社員が一丸となって取り組まなければなりません。
導入の際、全ての書類を一斉にデータ化するのはあまり得策ではありません。
・導入しやすいものからペーパーレス化する
・チームを立ち上げ、まずは部署単位で導入する
・最も効果の大きい課題からペーパーレス化する
というように、最も効果のでそうなものからペーパーレス化するのが良いでしょう。
主な導入手順は以下になります。
①業務の棚卸し
まずは自社の部署ごとにどんな業務があり、どんな資料を取り扱っているのか、業務の棚卸しを行います。
②課題の抽出
棚卸しした業務の中から、ペーパーレス化によって大きい効果が得られる課題を抽出します。 抽出した課題に合わせて
・ワークフローシステムの導入
・文書管理システムの導入
・電子帳簿保存法対応システムの導入
・電子契約システムの導入
・データベース管理
・運用の改善
といったように課題を切り分けるとスムーズに運びます。
③システム選定
前述したように、まず取り組むべき課題が見つかったら、課題解決のために最適なシステムを選定します。
④システム導入
自社に導入するシステムが決まったら、マニュアルの作成や対象者への通知、導入研修などを行います。
■関連記事(参考ページ)
出典:
日本製紙連合会『製紙産業の現状』 https://www.jpa.gr.jp/states/global-view/index.html
脱ハンコ https://www.asahi.com/articles/ASNB465HJNB4ULFA00C.html
国民一人当たりの紙・板紙消費量 https://www.jpa.gr.jp/states/global-view/index.html#topic03
ペーパーレス化に関するお悩みはTOMAにご相談ください
以上、ペーパーレス化のメリットや手順がお分かりいただけたと思います。 ペーパーレス化は一朝一夕ではできません。 また、システム導入には専門知識も必要です。 TOMAでは自社で徹底的なペーパーレス化を実現しているだけでなく、これまでに多くの企業のペーパーレス化をお手伝いしてきました。
初回相談は無料ですので、ペーパーレス化に関心がある方はお気軽にお問い合わせください。