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第一種低層住居専用地域とは? 戸建て建築や土地活用を検討するなら知っておきたい特徴や注意点などを説明します!

記事作成日2024/07/11

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家探しや土地活用を検討をされている皆様、「住居専用地域」という言葉をご存知でしょうか?

戸建て住宅への引っ越しを考えている、あるいは土地の活用等を考えている方は、取得予定の地域の住居専用地域の区分を確認してみましょう。住居専用地域の種類によって、建築可能な建物の種類・用途に違いがあります。

住居専用地域にもいくつか種類がありますが、今回は、第一種低層住居専用地域に絞って、良いところ・気を付けるべきポイント等を踏まえて解説していきます。

第一種低層住居専用地域とは

第一種低層住居専用地域とは、都市計画法によって定められている用途地域のひとつで、戸建て住宅などの低層住居の環境を保護するために指定される地域です。駅前の商業地や繁華街からは離れた場所に位置しており、都会の喧騒から離れて静かに暮らせます。

13種類ある用途地域のなかでは法令上の制限が最も厳しく、建築できる建物の種類や大きさが限られています。

第一種低層住居専用地域の良いところ

第一種低層住居専用地域の物件を選択するメリットをお伝えします。

静かな環境で暮らせる

「低層住居専用地域」という名前のとおり多くは低層の戸建て住宅が立ち並ぶエリアになっており、住環境にそぐわないものは建てることができないため、戸建て住宅に住みたい人や落ち着いた住環境で暮らしたい人にとっては良いところです。

高層マンションなどは建たないため、比較的人口密度が低く、都会の喧騒から離れて静かに暮らせる環境です。

子育てしやすい住環境

市街地の第一種低層住居専用地域には幼稚園・保育園・小中学校が徒歩圏内にある場合が多く、繁華街から離れた場所に位置しているため、子育て世帯にとっては暮らしやすい住環境です。幹線道路の沿道から離れた場所にあるため交通量も少なく、小さな子どもの飛び出しが心配な親御さんも安心かと思います。

また、戸建てを購入する世帯はファミリーが多いため、子ども同士のつながりや地域のコミュニティ形成においてもメリットを享受できそうです。

街並みが美しく、景観のよい場所が多い

いわゆる「高級住宅街」は第一種低層住居専用地域にあることが多いかもしれません。東京23区内だと松濤や青葉台、広尾、成城、田園調布等の低層住宅地に行くと、敷地面積にゆとりのある豪邸がいくつも建っているのを確認できると思います。街並みが美しく、景観のよいところで暮らせそうです。

ゆとりある敷地配置により、日照や通風が確保しやすい

第一種低層住居専用地域は、ゆとりある生活を行うために最も厳しい規制が設けられているエリアです。敷地面積よりも建てられる建築物の面積が小さいため、隣近所の建物との間隔が広く取れているよう感じられると思います。

仮に建ぺい率の上限が40%の場合は、残りの60%が庭や駐車場などになるため、ゆとりのある敷地配置となります。容積率においても、最大でも200%までの範囲内で規制されているため、あまり高い建物は建てられません。

さらに、高さ制限(絶対高さ制限・日影規制・北側斜線制限・道路斜線制限・高度地区による規制)や外壁後退距離の規制によって、隣地や道路から一定の範囲内には建築物を建てられないといった制限もあります。

こういった厳しい規制により、日照や通風、採光のためのゆとりある暮らしが守られているのです。

第一種低層住居専用地域で気を付けておくべきポイント

取得予定の土地が第一種低層住居専用地域の場合に気を付けたいポイントをお伝えします。

駅や商業施設からの距離が離れているかどうかをチェック

対象物件が第一種低層住居専用地域の中程に位置しており、近隣商業地域などの商業系エリアと離れている場合は、徒歩圏内で買い物や食事に行けるような場所が少ない場合があります。また、駅から離れた場所に位置している場合が多いため、車やバスでの移動が前提でないと生活しづらいかもしれません。

住宅以外の建物を建てたい場合は検討の余地あり

第一種低層住居専用地域に建築できる建物は、基本的には3階建て以下の低層住宅や低層共同住宅、寄宿舎、下宿で、その名のとおり低層住宅となっています。

住宅以外に建築可能な建物ですと、保育園、幼稚園、学校、図書館、銭湯、診療所、高齢者施設、神社や教会等の宗教施設が挙げられます。将来的にその土地でお店を経営したいと検討している場合は、条件によっては不向きかもしれません。

土地を取得して投資用アパート・マンションを建てるのは向かないエリア

投資の観点においては、第一種低層住居専用地域で共同住宅を建築するために土地を取得することはおすすめしておりません。法令制限や周辺環境などから戸建て住宅にとっては大変良い環境ではあるものの、一般的には収益目的のアパートの建築には向かない地域となっています。

投資用不動産として収益を期待して共同住宅を建てる場合、建蔽率や容積率等の制限によって十分な部屋数の確保ができないため、1部屋辺りの土地代が高くなります。よって、期待する利回りが確保できず、投資した金額に見合った期待利回りの確保が難しい場合が多いです。
投資用の建物価値が土地の本来の価値を下げてしまう場合もあります。

第一種低層住居専用地域に建てられた投資用アパートの多くは、相続税や固定資産税対策のために建てられており、土地の取得の必要がない地主でないと費用対効果が見合わないことがほとんどです。そのため、第一種低層住居専用地域にアパートを建てられるのは、昔から広大な土地を保有されている地主ならではのできることかもしれませんね。

日影規制

都市の過密化による日照条件の悪化を防ぐための規制で、低層住居専用地域では、軒の高さが7mを超える建物または3階建て以上の建物に対して高さ制限がかかります。隣地の1階の窓に日が当たるよう、最も日が短い冬至(12月22日頃)において、地盤面からの高さが1.5mを基準として敷地境界線からの距離に応じて一定時間以上日陰を生じさせないよう高さを調整します。

外壁後退距離など、その他の制限が定められている場合も

外壁後退距離とは、外壁(またはそれに代わる柱)と敷地境界線との間に一定以上の距離を離さなければならない制限です。隣との境界側と道路との境界側でそれぞれ1mや1.5mを限度に定められている場合があります。

また、場所によっては第一種高度地区、第二種高度地区などによって北側の高さ制限が付されているところがあったり、敷地面積の最低限度や緑化率の最低限度が定められている場所があったりするので、さまざまなルールのもとに建築計画を進める必要があります。

(参考)13種類の用途地域について

用途地域概要建蔽率・容積率(%)
第一種低層住居専用地域低層住宅の居住環境を保護するための地域で用途制限が厳しいものの一定の小規模な住居兼用店舗等なら建築可能建蔽率:30・40・50・60
容積率:50・60・80・100・150・200
第二種低層住居専用地域主として低層住宅の居住環境を保護するための地域でコンビニ等、一定の小規模な店舗等も建築可能建蔽率:30・40・50・60
容積率:50・60・80・100・150・200
田園住居地域農業の利便の増進と低層住居の居住環境を保護するための地域で、地産地消を図るための小売店や飲食店は500㎡まで、そのほかなら150㎡まで建築可能建蔽率:30・40・50・60
容積率:50・60・80・100・150・200
第一種中高層住居専用地域中高層住宅の居住環境を保護するための地域で大学や高専、病院等に加え500㎡までの店舗が建築可能建蔽率:30・40・50・60
容積率:100・150・200・300・400・500
第二種中高層住居専用地域主として中高層住宅の居住環境を保護するための地域で、1500㎡までの一定の店舗等が建築可能建蔽率:30・40・50・60
容積率:100・150・200・300・400・500
第一種住居地域居住環境を保護するための地域でホテルやボーリング場などの施設も建築可能となり、3000㎡までの一定の店舗等が建築可能建蔽率:50・60・80
容積率:100・150・200・300・400・500
第二種住居地域主として居住環境を保護するための地域でパチンコ・カラオケ等の娯楽施設も建築可能となり、10000㎡までの一定の店舗等が建築可能建蔽率:50・60・80
容積率:100・150・200・300・400・500
準住居地域道路の沿道における利便性と居住環境を保護するために定められる地域で、150㎡までの自動車修理工場や50㎡までの一定の工場や客席部分が200㎡未満の劇場・映画館等が建築可能建蔽率:50・60・80
容積率:100・150・200・300・400・500
近隣商業地域近隣住民の日用品の供給を行う商業を促進する地域で、住宅や10000㎡を超える大規模な店舗のほか小規模な工場も建築可能建蔽率:60・80
容積率:100・150・200・300・400・500
商業地域買い物をしたり遊んだりするための施設が建てられる地域で、商業施設(百貨店、映画館、飲食店等)が建てられる地域建蔽率:80
容積率:200・300・400・500・
準工業地域環境の悪化をもたらすおそれのない工場が建てられる地域建蔽率:50・60・80
容積率:100・150・200・300・400・500・600・700・800・900・1000・1100・1200・1300
工業地域どのような工場も建築可能なエリアだが、学校や病院、ホテルは建築不可建蔽率:50・60
容積率:100・150・200・300・400
工業専用地域どのような工場も建築可能なエリアだが、住宅や一定規模以上の飲食店、パチンコ、学校、ホテル、病院等は建築不可建蔽率:30・40・50・60
容積率:100・150・200・300・400

このように、第一種低層住居専用地域では建てられる建物が決まっていますが、禁止されている用途の建築物であっても、建築審査会の同意を得て特定行政庁が許可したとき(※②建築基準法第48条ただし書きの許可)は建築可能な場合があります。

相続した空き家や活用できていない遊休不動産に多くの建築制限がある場合でも、一度不動産コンサルタントに相談してみることをおすすめいたします(TOMAでもご相談に乗りますので、最下部のバナーよりお気軽にお問い合わせください)

TOMAの不動産コンサルティングのサービスの詳細については下記特設サイトをご覧ください。

次回は第二種低層住居専用地域について説明します。

※上記内容は2024年7月時点の情報です。