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定款とは
定款(ていかん)とは、会社の組織や運営に関する基本的なルールが記載された「会社の憲法」のようなものです。 会社を設立する際には定款を作成する義務があり、設立後の会社運営も定款に従って行われます。 また、会社設立後も、定款は適宜変更することができ、会社の自治法規として働くことになります。
定款はなぜ必要なのか
上述した通り、どのような種類の会社でも、設立するには定款を作成する必要があります。つまり、会社を設立する際、事前準備として行わなくてはならないのが定款の作成です。
株式会社の場合は、会社設立時の定款は公証役場にて、会社法で求められている事項が記載されているかどうかを確認されます。そして、法律上問題がない定款は、公証役場で認証され、定款としての効力を持ちます。
また、会社法だけではカバーできない部分を、定款で補うことも可能です。定款を上手く活用することで、社内で発生するトラブルを事前に防ぐことが可能です。
いつ定款が必要になるのか?
主に以下のタイミングで定款が必要となります。
・新しい会社を設立するとき
新しい会社を設立する際には、定款の作成が必要です。 会社の基本的なルールを明確にすることで、将来の問題やトラブルを防ぐ役割を果たします。
・公的な補助金や助成金を申請するとき
・各種許認可を申請するとき
許認可許可を申請する際、定款の提出が必要となる場合があります。なお、申請する事業が会社の目的として登記されていない場合、許認可の申請を行う前に定款の変更と登記が必要となります。
・法人口座を開設するとき
法人口座を開設する際、定款の提出を求められることがあります。
定款に記載する事項
定款には、会社の名前や事業内容、所在地といった会社の基本情報に加えて、会社の指針となるさまざまな規則を記載します。
①定款の構成
会社法では定款の構成については定めていません。必要事項が記載されていれば構成やフォーマットなどは任意とされています。 取締役会や監査役を設置しない場合の一般的な定款の構成としては、総則、株式、株主総会、取締役、計算、附則の全6章で構成されたシンプルなものになります。
②定款の記載必須事項
定款に記載される事項には、(1)絶対的記載事項、(2)相対的記載事項、(3)任意的記載事項の3種類に分けられます。以下、それぞれ説明いたします。
(1) 絶対的記載事項
絶対的記載事項とは、その名の通り、定款に必ず記載しなければならない事項であり、内容は以下のとおりです。
① 商号 (会社の名称)
② 目的 (会社の事業内容)
③ 本店の所在地
④ 設立に際して出資される財産の価額またはその最低額
⑤ 発起人の氏名または名称及び住所
⑥ 発行可能株式総数
上記のひとつでも欠けている場合、定款自体が無効となります。ただし、発行可能株式総数については、認証のときではなく設立登記のときまでに記載すればよいことになっています。
(2) 相対的記載事項
相対的記載事項は、定款に必ずしも記載しなければならない事項ではありませんが、効力を生じさせるには定款に記載しなければならない事項をいいます。
【具体例】
公告の方法
株式譲渡制限に関する規定
基準日に関する規定
株主総会などの招集通知を出す期間の短縮に関する規定
役員の任期の伸長についての規定
(3) 任意的記載事項
法律に反しない内容であれば、会社が任意で決めた事項を定款に記載することができます。定款に記載しなくても効力が認められますが、定款に記載することによって決定した事項を明確にすることができます。
【具体例】
事業年度に関する定め
株主総会の議長の定め
定款の作成における注意点
①事業目的
定款に記載していない事業は行うことができません。 そのため、すぐに取り組む事業だけでなく、将来的に展開していく可能性のある事業も記載しておくようにしましょう。
また、営業許認可を要する事業の場合、定款の事業目的に一定のキーワードが入っていないと、許認可取得手続きが先に進まない場合がありますので、漏れがないよう注意しましょう。
②本店所在地
本店所在地は市や区までの最小行政区の記載で問題ありません。 定款で番地や号まで記載してしまうと、少し住所が変わるだけで定款変更の手続きをしなければなりません。最小行政区までの記載にしておくことで、その範囲内での住所変更の場合、定款変更手続きが不要です。
③決議方法
コロナ禍を機に、総会を実開催からWEB開催や書面・電磁的記録による決議で行う会社が増えています。 そのため、定款に実開催以外の決議方法も認めている旨を記載しておくと、よいでしょう。
定款と約款の違い
定款とは「会社の根本規則」について書かれたもので、会社の最も重要な規則を定めたものとなります。 約款(やっかん)とは契約条項のことです。「会社と個人が契約する際の取り決め」のようなものです。売買に関していえば、当事者は誰なのか、売買代金はいくらか、いつ支払えばいいかなどの内容を纏めたまとめたものになります。
約款も定款も、「守らなければならない決まりごと・ルール」という類似した意味合いを持っていますが、定款は「組織を運営するためのルール」を意味しています。一方で、約款は「契約する時のルール」を意味しているという違いがあります。
定款を変更するにはどうすればよいか
事業の拡大、組織改革など定款の変更には様々な理由がありますが、変更する際には次のような手続きが必要になります。
【STEP1】株主総会での特別決議
定款の内容を変更するためには、「株主総会の決議」が必要。ここでいう「株主総会の決議」は特別決議(議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した株主の議決権の3分の2以上の賛成を必要とする決議)を言う。
【STEP2】議事録を作成
株主総会の決議内容は、議事録として書面を作成する。株主総会を行った日時の他、議決した内容、出席した株主の議決権総数や、決議内容に必要な数の賛成を得たことは明確に残しておく。
【STEP3】法務局で登記
登記事項に影響する事項は、定款変更内容の登記を行う。
≪ポイント≫設立時のような公証人の定款認証は不要
【STEP4】議事録を保管
定款変更の決議をした際に作成した議事録は会社で保管する。
≪ポイント≫設立時に作成した定款(原始定款)を直接変更することはできない。
その他定款変更Q&A
Q1.なぜ、定款変更には株主総会の決議が必要なのか?軽微な変更は取締役会で行うことはできないか?
A. 株式会社の持ち主は「株主」であり、定款内容の最終的な決定権者です。その株主が決めた定款の範囲内で経営を行うのが「取締役」です。取締役は、株主が定めた定款の範囲内で適切に経営を行う必要があります。よって、定款は、株主の同意なく変更することはできません。
Q2.定款変更の効力はいつから発生するか?
A. 原則として定款変更決議を行った株主総会の日が、定款変更日です。株主総会で定款変更の議案が承認されると即時に効力が発生します。但し、決議の際に変更の「効力発生日」を指定しておくこともできます。よって、株主総会決議の日、または、決議の際に指定した効力発生日が定款変更日となります。
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・一般社団法人が定款変更する場合、どのような手続きが必要か
まとめ
定款は、銀行での手続き、会社を設立するときに、必要なとても重要な書類です。会社の実情に適した定款であるか定期的に見直すようにしましょう。
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