合同会社は、2006年に施行された会社法により生まれた新しい会社形態です。合同会社の英語表記は、Limited Liability Companyであることから、その頭文字をとって「LLC」と呼ばれることもあります。
「設立費用が安い」「定款自治の範囲が広い」「早い意思決定が可能」などという点で、株式会社よりも自由度が高く、柔軟な経営ができるため、近年「合同会社」の形態を活用するケースが増えています。
例えば、アマゾンの日本法人のアマゾン・ジャパン株式会社は、2016年に「アマゾン・ジャパン合同会社」に組織変更、グーグルも同年に グーグル株式会社 から「グーグル合同会社」に組織変更しました。また、起業に際して「合同会社」を選択するケースも年々増加しています。
株式会社と合同会社では、出資者の責任、決算公告、出資者への利益配当など制度上での違いも多くありますが、各種の名称も異なります。例えば次のような事項です。
・株式会社の株主→合同会社の社員
・株式会社の代表取締役→合同会社の代表社員
・株式会社の株式→合同会社の出資
この記事ではその合同会社について説明いたします。
目次
そもそも合同会社とは?
合同会社とは、全員が出資した範囲内でのみ責任を負う間接有限責任社員によって構成される会社形態です。個人事業主や合名・合資会社の場合、無限責任を負うことになっていますが株式会社と同様に間接有限にとどまるため、一定のリスクは回避できるという点が大きな特徴となります。
つまり、合同会社は、「スモールビジネスとして運営するには、最適の会社形態」といえます。
合同会社と株式会社の違い
会社設立及び維持のコスト
株式会社設立時の登録免許税は15万円に対し、合同会社は6万円です。また決算の公告も不要であり、役員の任期もありません。
出資者の立場
株式会社は出資者=株主となりますが、合同会社は出資者=社員となります。合同会社で言う社員とは、経営者であり、出資者が会社の意思決定権を握ります。
機関の設置
株式会社は株主総会、取締役会等の機関が設置されていますが、合同会社の場合は定款で定めない限り特にありません。
株式会社と比較した場合の合同会社のメリット
合同会社は、株式会社と比べて以下のようなメリットがあります。
・設立費用が安い
・決算公告義務がない
・役員任期がない(ただし、定款で定めることができる)
・剰余金の分配制限がない(ただし、定款で定めることができる)
・法人格を有するので、税制は株式会社と同じ
少し特殊な合同会社の社員
一般的に、「社員」というと、従業員のことをいいますが、合同会社の「社員」は法律上の用語で出資者のことをいいます。
合同会社の社員の責任は、出資の範囲内に限られる間接有限責任です。個人事業主や合名会社の社員・合資会社の無限責任社員の場合、無限責任を負うことになっていますが、合同会社の社員の場合は、株式会社の株主と同様に間接有限にとどまるため、一定のリスクは回避できるという点が大きな特徴といえます。
しかし、出資者と経営が分離している株式会社と異なり、出資者が社員として経営にも関与するという特徴を持ちます。つまり、原則として合同会社の社員全員が代表権を持って経営にあたるということになります。また、出資者自らが業務執行を行うため、速い意思決定が可能になります。
職務執行者
合同会社の社員には、個人だけでなく、法人もなることが可能です。
法人が代表社員になるときは、当該法人に代わって職務を行う職務執行者を選任しなければなりません。また、職務執行者を選任した場合には、その者の氏名及び住所を他の社員に通知しなければなりません(会598条1項)。職務執行者になる人が就任を承諾することが必要です。
職務執行者の住所及び氏名は登記事項となっています。職務執行者の住所及び氏名が登記事項となっているのは、業務執行の責任の所在の明確にすることが目的とされています。
業務執行社員
社員は、原則として全員が代表権を持つと同時に、原則として社員全員が業務執行権を持ちます。しかし、実際には会社の業務の意思決定に参加しない社員も存在します。このような場合に、定款に「業務執行社員」と「業務執行権のない社員」を区別して記載することで、その区別を明確にすることができます。
会社の業務は、原則として社員の過半数で決定しますが、上記の区別をすることで「業務執行社員」の過半数で決定をすることが可能になります。
代表社員
業務執行社員の中から代表者を選ぶこともできます。この選ばれた代表者を代表社員といいます。また、代表社員を複数名置くことも可能です。
業務執行社員を決めていて、業務執行社員が1人の場合は、その業務執行社員が合同会社を代表する代表社員になります。業務執行社員を2人以上選んでいた場合は、業務執行社員の中から会社を代表する代表社員を選びます。
登記事項について
合同会社の登記事項のうち、社員に関するものは次の3つです。
・合同会社の業務を執行する社員の氏名又は名称
・合同会社を代表する社員の氏名又は名称及び住所
・合同会社を代表する社員が法人であるときは、当該社員の職務を行うべき者の氏名及び住所
①社員が1名の場合
合同会社の社員が1名のときは、当該社員が業務執行社員であり代表社員となります。ですので、当該社員の氏名及び住所は、業務執行社員、代表社員として当該合同会社の登記簿に記載されます。
②社員が2名以上の場合(2名とも業務執行社員になる場合)
社員が2名いたときに、定款に別段の定めがなく、また代表社員について何ら定めていない場合、2名ともに業務執行社員となり、かつ代表社員となります。ですので、社員2名の氏名及び住所が業務執行社員、代表社員として当該合同会社の登記簿に記載されます。
合同会社に向いている企業
最後に、合同会社に向いている企業をいくつか例示します。
子会社
子会社は親会社のブランド力や認知度に依存するので、会社の種類によって受ける影響は少ないです。加えて株主総会や取締役会もないため、迅速な意思決定ができます。アップルやアマゾン等海外の有名企業が日本法人を設立するときに合同会社を選ぶのもこのような理由が大きいでしょう。
会社の種類を前面に出さない事業
八百屋や美容室等会社名を表に出さない事業の場合は合同会社が適しています。
新規事業
DXに対応した新規事業等を行う場合は、合同会社を活用しやすいです。
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