産業廃棄物の不法投棄により事業者の代表者が逮捕された、という報道を耳にすることがあります。また、公園などでは、「廃棄物をみだりに捨てた場合、刑事罰が科されることがあります」といった看板を目にします。この記事ではその廃棄物処理法の違反事例と罰則規定を紹介します。
【事例1:不法投棄事件】
島根県松江市のホテルで硫化水素が発生し、Aホテル元社長が廃棄物処理法違反の罪に問われた。松江地裁は、懲役2年4月、執行猶予3年、罰金150万円(求刑・懲役3年、罰金150万円)の有罪判決を言い渡した。
Aホテル元社長は、建設廃材の処理費用を安くしようと考え、「現場に穴を掘って産廃を捨て、最後にアスファルトで埋めてはどうだろうか」と発言。ホテルの地下室に廃材を投棄するという部下の提案についてメールで承諾したと指摘した。元社長は当時、同社の会長を兼務していた。
系列会社の副社長だった者らと共謀し、04年10月から12月にかけて、同社が請け負った内装工事で出た建築廃材約30トンを地下室に投棄させたとされる。地下に流れ込んだ雨水と廃材の硫酸カルシウムが反応して発生したとみられる硫化水素が地上に漏れ出し、近くにいた男女8人が気分が悪くなって手当てを受けた。
【事例2:産廃収集運搬許可取り消し】
B産業廃棄物処理業者は、東京破砕工場において、産業廃棄物の処理を受託したが、処分が終了していなかったにもかかわらず、産業廃棄物管理票(マニフェスト)の写しの処分終了日欄に日付をいれて、産業廃棄物の処理の委託者に送付した。 このことは、産業廃棄物管理票の取扱いを定めた法第12条の4第3項の規定に違反しているため、事業の停止命令の行政処分がなされた。
また、上記のB業者から収集運搬を依頼されたC収集運搬業者は、産業廃棄物管理票(マニフェスト)の交付を受けていないにもかかわらず、B業者から、産業廃棄物の引渡しを受けた。 このことは、産業廃棄物管理票の取扱いを定めた法第12条の4第2項の規定に違反しているため、事業の停止命令の行政処分がなされた。あわせて産業廃棄物収集運搬業許可の取り消し処分がなされた。
【事例3:業務停止処分、業務上過失致死】
千葉県野田市のD廃棄物処理施設で、廃油蒸留処理施設が爆発し作業員2人が死亡するなどした事故があった。事故は、廃油を蒸留処理する工程で、不純物を取り除く遠心分離機が爆発・炎上し二十数人が死傷した。
Dの支店長らはハイオクガソリン8560リットルに軽油の混ざった揮発性の高い「特別管理産業廃棄物」と知りつつ、高熱の発生する蒸留処理施設に流し込んでいた。社内規定では、特別管理産業廃棄物を高熱の発生する工程に投入してはならないが、D施設では日常的に同様の作業を行っていた。
【事例4:不許可営業、事業停止命令】
E会社は、管轄官庁から産業廃棄物の収集運搬業(積替え保管を含む。)の許可を受けていないにもかかわらず、一定期間、同社事業場において、収集運搬を受託した産業廃棄物の積替え保管を少なくとも2回行った。このことは、法第14条第1項の規定に違反(無許可営業)することから、事業停止命令がなされた。
【廃棄物処理法の内容】
廃棄物処理法では、産業廃棄物や一般廃棄物の定義、廃棄物についての国民、事業者、国・地方公共団体の責務、廃棄物処業についての許可制度、罰則などが規定されています。中でも、産業廃棄物の処理責任が、排出事業者にあることを明確にした点が特徴です。
また、法律違反に厳しい罰則が規定されている点も特徴です。冒頭の「廃棄物をみだりに捨てた」場合、5年以下の懲役若しくは1千万円以下の罰金が科されるおそれがあります(25条14号)。
【廃棄物処理法の罰則規定例】
(1)許可を受けずに産業廃棄物の処分を行った者:五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金(法25条1項1号)
(2)不正の手段で産業廃棄物処理の許可を取得した者:五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金(法25条1項2号)
(3)無許可の業者に産業廃棄物処理を委託した者:五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金(法25条1項7号)
(4)みだりに廃棄物を捨てた者:五年以下の懲役若しくは千万円以下の罰金(法25条1項14号)