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取締役会を廃止するにはどのような手続きが必要か

記事作成日2018/09/19 最終更新日2023/08/04

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取締役会を廃止するには、まず定款を変更する必要があります。定款を変更するには株主総会の特別決議が必要です(会309条2項11号)。

必要になる定款変更

取締役会設置の旨の規定を廃止するときは、「取締役会を置く」規定を削除するだけではなく、代表取締役の選定方法や株主総会の招集通知権者などの「取締役会の決議によって決定」する旨の記載についても定款の大幅な変更が必要になります。例えば、以下のような定款変更、登記事項の変更が生じる可能性があります。

①株式の譲渡制限に関する規定

株式譲渡承認機関を取締役会としている場合には、株主総会や代表取締役などに変更しなければなりません。

②代表取締役

取締役会を廃止する際に、特に代表取締役を定めない場合は、それまで代表権がなかった取締役にも代表権が付与され、各自が代表権を有することになり、取締役全員が会社を代表します(会349条2項)。この場合、代表取締役の登記も必要になります。

③監査役

取締役会を廃止した場合、資本金が5億円以上又は負債が200億円以上の大会社でない会社であれば、監査役を設置する必要がありません。したがって、名目上の監査役であれば、監査役設置会社である旨の定款規定も廃止してよいでしょう。

④取締役等の責任免除規定

取締役等の責任免除規定を定款に置くには、取締役2名以上がいて、かつ監査役を設置している会社でなくてはなりません(会426条)。ここでいう監査役は、業務執行に関する権限を持っている監査役のことを指します。取締役会を廃止して監査役を置かなくなるのであれば、取締役等の責任免除規定を置いておく必要もないため、当該規定を定款から削除することも可能です。

⑤責任限定契約

会社法423条1項の賠償責任を負う役員が善意で重過失がない場合は、その責任の一部を免除することができる契約を、業務執行権のない取締役や監査役等と締結することができる旨を定款で定めることができます(会427条1項)。

業務執行権のない取締役や監査役等と責任限定契約を締結することができる旨の定款の定めは登記事項とされています。

取締役会を廃止し、取締役が1名となることにより、業務執行権のない取締役や監査役等が会社にいなくなるタイミングと合わせて責任限定契約にかかる定款規定を定款から削除することも可能です(会309条)。

会社の業務執行

取締役会を設置した場合、会社の業務執行は取締役会で行います。したがって、株主総会で決議できるのは、会社法に規定された事項及び定款で定められた事項に限られます。反対に、取締役会を廃止することで、株主総会で会社に関する一切の事項を決めることができるようになります。

株主提案権

取締役会を設置していない会社において、1株でも所有している株主は、取締役に対し、一定の事項(当該株主が議決権を行使することができる事項に限る。)を株主総会の目的とすることを請求することができる(会303条)。

取締役会設置会社においては、総株主の議決権の100分の1(これを下回る割合を定款で定めた場合にあっては、その割合)以上の議決権又は300個(これを下回る数を定款で定めた場合にあっては、その個数)以上の議決権を6ヶ月(これを下回る期間、を定款で定めた場合にあっては、その期間)前から引き続き有する株主に限り、取締役に対し、一定の事項を株主総会の目的とすることを請求することができる。また、この場合において、その請求は、株主総会の日の8週間前までにしなければなりません。

取締役会設置会社と取締役会を設置していない会社の相違点

取締役会設置会社

取締役会を設置していない会社

株主総会の招集

書面又は電磁的方法

口頭でも可

監査役の設置

必須

任意

計算書類等の株主への提供

必要

不要

中間配当

不可

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