コロナ禍が本格化してから2年目に突入し、マスクの着用やオンライン会議の実施など感染症対策はビジネスの場面においても標準化するようになりました。
2021年3月期決算企業の株主総会が6月にピークを迎え、多くの企業がインターネットや郵送による事前議決権行使の呼びかけや、株主に来場を控えるよう求めました。オンラインによる株主総会の実施企業は320社に上り、2020年3月期の122社から約2.5倍に増加しました。
今後も、コロナ禍が完全な収束に至るのは難しく、引き続き企業には対策が求められる状況が続くと思われます。そうした状況の中で株主総会をどのように開催すべきか、方法や注意点などをご紹介させて頂きます。
例年通りの通常開催は難しい
コロナ禍での株主総会の開催は非常に悩ましい問題です。通常開催し、できるだけ書面による議決権行使を促す方法は考えられますが、十分な会場の感染対策も必要となってくる上、予想以上の株主が出席し感染リスクが高まってしまう可能性があります。
WEB会議システムを利用する方法
WEB会議やオンライン飲み会が浸透しつつありますが、それを株主総会に取り入れる方法があります。会場を準備せず、全員がオンライン上で行うケースや、一部の株主がオンラインで参加するケース(ハイブリッド型)等、様々なケースが考えられます。
ITを活用した株主総会を行う利点としては、リモートワークのような形で出席できるため、普段遠方で総会に参加が難しい株主でも参加することができ、参加者の拡充を見込めることがあげられます。
欠点としては、開催側、参加者側双方でのオンライン会議システムやインターネット環境の整備が必要になることが挙げられます。また、細かいルール整備等も必要となってきます。
開催自体を省略してしまう方法
開催自体を省略する方法は「書面決議」という方法です。書面やメール等で株主全員からの賛成の同意を得たことにより、株主総会の決議があったものとみなすものです。利用するにあたって、定款による定めは不要で、コロナ禍に限らず、特別決議、特殊決議であっても利用できます。
また、会場や招集通知等の準備が不要のため、コスト削減にもなり、書面やメールで済みますのでお手軽です。欠点としては、決議の成立要件として「株主全員から」の賛成が必要になりますので、株主の数が多い場合や、連絡の取りにくい株主がいる場合等、この方法は難しいと考えられます。
決議要件について
①実開催が有る場合
議決権を行使することができる株主の議決権の過半数を有する株主が出席し、出席した議決権を行使できる株主の議決権の過半数をもって行います(定足数は定款に別段の定めがある場合を除く)。
なお、委任状の勧誘、議決権行使書の活用により出席者を減らすことは可能です。
②実開催が無い場合
会社法319条1項により全ての議決権のある株主が、株主総会で決議する事項について賛成・同意する旨の意思表示を書面または電磁的記録による意思表示をした場合は、株主総会の開催および決議を省略できます(定款の定め不要)。
オンラインで株主総会を行う際の注意点
オンラインで株主総会を開催するにあたってはどのような点に注意するべきなのでしょうか、以下主要な項目を抜粋致しましたのでオンライン開催を考えられている方は一度ご確認ください。
・安定したネットワーク回線の確保(主催・参加者)
・機材トラブル発生時の処置・対応(主催・参加者)
・セキュリティ対策(ID・パスワード、他)
・様々なケースを想定したリハーサルの実施
・参加者にストレスのかからない進行・シナリオ作成
以上に加え、参加者に対して会社としてどういったことを伝えたいかを考慮し、それを実現出来る機能などを追加していくと良いと思います。
Q&A
Q1:WEB会議による開催の場合の議事録の書き方は通常開催時と違いますか。
A:WEB会議により一部の株主や取締役が株主総会に出席した旨を記載する必要があります。
<記載例>
・出席した株主
開催場所に出席しない株主:5名(WEB会議システムにより参加)
・開催前文
議長は、本日の定時株主総会は、WEB会議システムを用いて開催する旨を宣言し、各出席者の音声と画像が即時に他の出席者に伝わり、出席者が一堂に会するのと同等に適時的確な意見表明が互いにできる状態となっていることを確認して…
Q2:開催自体を省略した場合は議事録に押印は必要ですか。必要な場合は、押印者は誰になりますか。
A:株主総会の開催自体が省略されているため、押印義務はありません。ただし、開催した証拠として、議事録の作成者や取締役全員が押印するケースが多いでです。
Q3:株主総会の開催時期に関する定款の定めがある場合、開催が困難な状況でも開催する必要がありますか。
A:開催が困難な状況が解消された後、合理的な期間内に株主総会を開催すれば足ります。会社法第296条第1項(事業年度の終了後一定の時期に招集しなければならない規定)は、事業年度の終了後3カ月以内に株主総会を開催することを求めているわけではありません。
Q4:定款で株主総会の議決権行使のための基準日の定めがある場合、基準日から3カ月以内の開催が困難な場合は?
A:新たに議決権行使のための基準日を定め、当該基準日の2週間前までに当該基準日及び基準日株主が行使することができる権利の内容を公告する必要があります。(会社法第124条第3項)
各企業に合った方法を
株主の数が少なく、全員が日頃より連絡の取りやすい状態にあるのであれば、書面決議の方法が良いかもしれません。反対に、株主の数が多かったり、連絡の取りにくい株主がいる場合、通常開催もしくはオンラインを利用した開催方法が良いかもしれません。
コロナ禍で全国的にリモートワークが進み、働き方が変わってきています。まだWEB会議システムを導入していない企業はこれを機に検討してみてはいかがでしょうか。
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