資産除去債務の算定に際して用いられる割引率についてお話をします。
前回ブログ
>>資産除去債務 その3 賃借建物に係る原状回復費用の処理 Provision for clean-up cost Part 3
割引率の決定方法
資産除去債務に関する会計基準第6項で下記のように定めています。
「割引率は、貨幣の時間価値を反映した無リスクの税引前の利率とする。」
実務上は、国の利付国債の流通利回りなどを参考にして決定することが多いです。なお、国際財務報告基準(IFRS)では、信用リスクを加味した割引率を使います。
国際財務報告基準(IFRS)の37 ”Provisions, Contingent Liabilities and Contingent Assets”の第47項で下記のように定めています。
The discount rate (or rates) shall be a pre-tax rate (or rates) that reflect(s) current market assessments of the time value of money and the risks specific to the liability. The discount rate(s) shall not reflect risks for which future cash flow estimates have been adjusted.
また、資産除去債務の割引率は、除去費用の見積りに大きな変更がない限り変更がありません(同会計基準第11項)
流通利回りがマイナス=割引率がマイナスの場合
現在、日本の国債の利回りを見ると、償還期間が7年ぐらいまでの国債はマイナス金利となっています。このため、そのままマイナス金利を割引率として採用すると、将来の除去債務よりも大きな金額が貸借対照表の負債として計上されることとなります。
例えば除去費用が1,000、除去前の期間が5年とした場合、2017年2月1日時点の5年もの国債利回りは△0.1%ですので、除去費用の現在価値は1,005→1,004→1,003→1,002→1,001→1,000と推移しますので、初年度の負債額は1,005となり除去費用1,000よりも大きくなってしまいます。
現在のところ、日本の会計基準等で、マイナス金利への対応については、退職給付債務については割引率マイナスもしくはゼロのいずれかの選択適用を認める旨の発表がありましたが、資産除去債務に関しての発表がありません。
筆者はシンガポールに勤務していますが、シンガポールはマイナス金利となっていないため、そのような議論もありませんし、国債財務報告基準(IFRS)の動向をみても、マイナス金利に対する対応について明確な扱いを発表していないと思われます。
実務上は、マイナスの割引率で割り引くことについて実務上可能であれば、そのまま割引するという解釈しかできないのかなと筆者は思っています。早く対応に関する指針が発表されればよいのですが。
資産除去債務シリーズブログ
>>資産除去債務 その1 定義と仕訳例 Provisions for clean-up costs Part.1
>>資産除去債務 その2 仕訳例の解説 Provisions for clean-up costs Part.2
>>資産除去債務 その3 賃借建物に係る原状回復費用の処理 Provision for clean-up cost Part 3
>>資産除去債務 その4 割引率の決定方法 Provision for clean-up cost Part 4
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