今回はシンガポール法人の繰越欠損金についてお話をします。
シンガポールでは欠損金を3種類に分類
シンガポールの税制では、以下のように欠損金を分類しています。
1 過年度欠損金(Unabsorbed trade losses)
イメージとして、単純に業績が悪いために生じた欠損だと思ってください。
2 未控除減価償却費(Unabsorbed capital allowances)
減価償却資産の減価償却費のうち、発生時の所得から控除できなかったものをいいます。
3 未控除寄付金(Unabsorbed donations)
損金算入できる寄付金で、発生時の所得から控除できなかったものをいいます。
欠損金の種類によって扱いが変わる-欠損金を繰り越す場合
欠損金を上記の3種類に分類している理由は、それそれの欠損金により扱いが違うためです。
シンガポールでは、繰越欠損金は永久に繰越可能であると聞いたことがあるかもしれません。しかし、上記の3の未控除寄付金(Unabsorbed donations)は5年間を限度にしか繰越ができません。
例えば、繰越欠損金についての扱いは下記のとおりとなります。
繰越欠損金利用の条件 | 繰越期間 | 欠損金の繰越控除額の制限 | ||
同種事業テスト(A) | 株主変動テスト
(B) |
|||
過年度欠損金 | 不要 | 必要 | 無制限 | 無制限 |
未控除減価償却費 | 必要 | 必要 | 無制限 | 無制限 |
未控除寄付金 | 不要 | 必要 | 5年間のみ | 無制限 |
A 同種事業テスト(Same business test)とは?
未控除減価償却費の対象となった減価償却資産については、引き続き同一の事業に供している場合にのみ、繰越欠損金を損金として使うことができます。引き続き同一の事業に供しているかのテストを同種事業テストと呼びます。
B 株主変動テスト(Shareholding test)とは?
特定日において、発行済株式の50%以上を有する株主によって株式を引き続き所有されているかどうかを確認するテストをいいます。言い換えると、主要株主が変わってしまうと、繰越欠損金を使うことができなくなるということです。
なお、「特定日」とは、
1 損失が発生した事業年度末が属する年の12月31日(例えば、2016年3月31日が事業年度末としたら、2016年12月31日)
2 繰越欠損金を損金算入しようとする賦課年度の初日(例えば、2016年4月1日からの事業年度で繰越欠損金を使う場合は、2018年1月1日)
の2つの日を指します。このように非常に複雑な決まりとなっています。
また、「発行済株式の50%以上を有する株主」という要件は、企業グループの頂点の株主(Ultimate parent company)に変動がないかを確認することを目的としていますから、同一企業グループ内の中で株主が変動したとしても、企業グループの頂点の株主に変動がなければ、株主変動テストの要件は満たすこととなります。
欠損金の種類によって扱いが変わる-欠損金の繰戻し還付
シンガポールでは、法人の規模を問わず、繰戻し還付も認められています。繰戻し還付の扱いは下記のとおりとなります。
繰越欠損金利用の条件 | 繰戻し期間 | 欠損金の繰越控除額の制限 | ||
同種事業テスト(A) | 株主変動テスト
(B) |
|||
過年度欠損金 | 不要 | 必要 | 前事業年度のみ | 100,000シンガポールドルを上限とする |
未控除減価償却費 | 必要 | 必要 | ||
未控除寄付金 | 繰戻し還付は認められない |
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