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稲盛和夫の実学―経営と会計より ダブルチェックの原則 人に罪をつくらせないとは?【TOMAグループシンガポール支店】

記事作成日2018/02/05 最終更新日2023/11/13

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はじめに

今回は稲盛和夫氏の本、「稲盛和夫の実学―経営と会計」で紹介されているダブルチェックについて、その大切さを筆者の経験談を交えてお話します。

ダブルチェックとは?

ダブルチェックとは主に経理に関連する書類等について、複数の従業員や役員でチェックをすることをいいます。シンガポールでもDouble check, Counter checkという言葉でダブルチェックをしています。

私見ですが、タブルチェックの効果は以下のとおりに整理できます。

A 組織として作業の正確性を確保し、品質維持を図ることができる
B 間違いや不正を抑制する
C 上司(チェック者)から部下へ間違えた箇所を指導することにより部下の能力向上が図れる
D 上司が部下の仕事の進捗や能力等を確認できる

人に罪を作らせない-ダブルチェックによる保護システムとは

稲盛和夫氏の本、「稲盛和夫の実学―経営と会計」によると、ダブルチェックを組織化することにより、不正を起こさせない環境を構築することによって、従業員に不正に関与させない、すなわち、人に罪をつくらせないことに価値があると説いています。

不正は、

・不正行為の実行を可能とする環境
・不正行為をしようとする動機
・不正行為を正当化する事情

があると、不正は実行されるとの研究成果があり、不正行為は上記の条件が揃えば誰でも手を染めてしまいます。私は不正についてセミナーなどで説明する際に、以下のように不正防止の必要性を説明しています。

「皆さん、不正をしようと思って入社された方はいないと思います。不正はその企業の社風や環境が作り出すものなので、会社としての対策が必要なのです」

上記の説明は、誰でも不正や間違いを犯す可能性があること、また、契約主体である会社が率先してその対応を図ることが必要だということを意味しています。話が長くなってしまいましたが、ダブルチェックの体制を構築することは、従業員を守るとともに会社の健全な成長に寄与するものなのです。

意外とダブルチェック体制の構築が難しい

では、どのようにダブルチェックの体制を築けばよいのでしょうか。私見ですが、以下の点がポイントとなります。

・チェック回数

→チェック回数が多ければ多いほど、業務スピードが遅くなってしまいます。このためチェックの回数は必要な回数にとどめるべきです。

・チェック者の能力

→その書類が持つ意味、背景にある業務内容を理解している方がチェック者にならないと、チェックの意味が薄れてしまいます。また、チェック者に能力がなければ、部下へのフィードバック(今後に生きる指導やアドバイス)ができません。

・作業者

→一人で書類を作成したり、業務を遂行することができることが前提となります。もしそれだけの実務能力がない場合は、上司と一緒に仕事をおこない、慣れてきた段階で作業者・チェック者と分担することになるでしょう。

・コミュニケーション

チェック者と作業者に一定の信頼関係がなければ、実際の運用で頓挫する傾向があります。部下の方から現状や困っている点を気軽に相談できること、チェック者から状況に応じて的確な指示が出せることなど、ダブルチェックの運用にはコミュニケーション力が左右しています。これはダブルチェックのみならず仕事全般に言えるかもしれません。

チェック者は自分が作業者だったころの経験を思い出しながら指示を出すこと、作業者は自分の分担のみならず、仕事全体の流れを意識して報告することがポイントです。

チェック体制の構築は経験がものをいう

これらは、さまざまな会社に訪問している公認会計士などでなければ、皆様へ実践的なアドバイスができません。本を読んで考えましたという程度だと、なかなかうまくいかないものです。各従業員の置かれた立場や心理状況も考える必要があるかと思います。

一度外部の専門家に助言を仰いだほうが良いでしょう。詳細は弊社グループへお問い合わせください。

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