[小冊子03:海外赴任と外国人雇用]
【はじめに】
今回も減損会計について日本と国際財務報告基準の違いを見ていきます。今回が減損シリーズの最後です。
【減損損失の損益計算書上の表示】
日本は原則特別損失として表示する旨を定めています(固定資産の会計基準 四 財務諸表における開示)。
しかし、国際財務報告基準(IFRS)では特段定めがありません。なお、アメリカの会計基準も含めて、特別損益項目は原則設けないというスタンスを取っています。
私見ですが、特別損益項目を定めると、収益や費用ごとに異常性・臨時性の判断が必要になりますが、この判断が恣意的になってしまうおそれがあること、また、企業の活動から生じた損益であり、最終的にその企業が受け入れなければならない損益には変わりがないことから、国際財務報告基準(IFRS)では特別損益項目を設けていないのだと推測しています。
【参考事例:株式会社東芝の2016年3月期決算発表】
とある報道機関によると、2016年3月期の東芝の決算発表について、下記のように報じています。
「経営再建中の東芝が12日発表した2016年3月期連結決算は、本業のもうけを示す営業損益が7191億円の赤字(前期は1884億円の黒字)に転落した。赤字額は、金融機関を除く上場企業では過去最大。米原発子会社の事業、資産の価値を引き下げる減損処理や家電事業の不振が響いた。」
今東芝の連結決算は米国会計基準で作成され、販売費及び一般管理費にのれんの減損損失3108億円入っています。
このため、日本の会計基準ではのれんの減損損失が特別損失として表示されるものの、東芝の場合は営業損失を大きくする要因となっています。仮に減損損失を除くと、営業損失は4003億円まで圧縮されます。
とある報道機関は、赤字額は金融機関をのぞくと過去最大の旨を報道してしますが、減損損失の件を考慮すると営業損失の金額は過去最大ではないかもしれません。
営業損失が7,000億台と4,000億台で結構印象が変わるのではないでしょうか。
このように、アメリカの会計基準により作成された決算書をあたかも日本の会計基準で作成した決算書と同様に扱ってしまうと、決算書の読者は誤った解釈をしてしまう可能性があります。
国際財務報告基準IFRSが誕生した経緯の一つとして、どの国でも統一した会計基準を適用すれば、どの国の決算書も比較できるということが背景としてあります。今回の東芝の決算発表をみて、IFRSが誕生した経緯を思い出しました。
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