はじめに
日本で会計帳簿を作成する場合は、当然日本円で記帳すると思います。しかし、海外の子会社や支店で記帳する場合はその国の現地通貨で記帳をするとは限りません。今回は機能通貨という国際会計で用いられている概念を説明いたします。
国際財務報告基準で定める機能通貨とは?
通常は、現地国の通貨で売上代金を請求し、お給料や経費を払うケースが多いですが、資源関連(石油・ガス・鉱物等)や海運業等ではアメリカドルで取引をするケースがあります。国際財務報告基準(International Financial Reporting Standards)やシンガポールの会計基準(Singapore Financial Reporting Standards)では、機能通貨という概念を導入し、機能通貨で記帳しなさいと定めています。
機能通貨とは、企業が営業活動をおこなう主たる経済環境の通貨をいうと定義されています。噛み砕いて説明すると、売上代金の回収や仕入・人件費の支払時に使う通貨を認識し、海外子会社や支店にとって最も影響を与えている通貨を機能通貨というと考えてください。
たとえば、売上代金の請求・仕入代金の支払はアメリカドル、人件費とその他経費の支払いはシンガポールドルでおこなっている場合、機能通貨はアメリカドルとシンガポールドルのいずれかになりますが、仕入代金や人件費等は販売活動で獲得した資金を元に支払うのが通常ですので、売上代金の請求のときの通貨であるアメリカドルが機能通貨になる可能性が高いと思われます。
実務上の注意点
機能通貨の決定は、会計基準で決定時の考慮項目が明文化されている(国際財務報告基準21.9、シンガポール会計基準21.9)のでこれに従うとともに、その国の外部監査人(公認会計士もしくは監査法人)の判断を仰ぐ必要があります。また、事業年度の途中から変更することはできませんので、帳簿をつけ始める前に決定する必要があります。