「売上に関する日本基準と国際財務報告基準(IFRS)の考え方(有償支給を題材として)その2」で取り上げた有償支給についての仕訳例と決算書への影響を記載します。
「売上に関する日本基準と国際財務報告基準(IFRS)の考え方(有償支給を題材として)その2」のブログは下記の通りです。
設例
例えば、パソコンを製造するにあたり、部品を100円仕入しましたが、特定の加工が必要なので、台湾の会社へ加工をお願いするとします。なお、加工した部品はすべて支給元が買取りをし、部品の陳腐化のリスクなどはすべて支給元が負うという条件とします。
また、支給元は部品の仕入値を台湾の会社へ知られたくないので、150円の価格(マスキング価格という名称にします)で支給するとします。
また、台湾の会社へは加工賃250円を渡すとしましょう。
最終的な販売価格を900円とします。
そうしますと、
仕入値100円→+マスキング価格設定による上乗せ分+50円→有償支給150円→+加工賃250円→買戻し400円→売上900円
トータルの製造コストは100円 +250円=350円となります。
【仕訳例】
(ステップ1)外部の業者から部品を仕入れ
(借)仕入 100円 (貸)買掛金100円
(ステップ2)台湾の業者へ部品の加工を依頼。なお、仕入値100円が知られたくないので、150円で部品を渡す。
(借)未収入金 150円 (貸)仕入 150円
(ステップ3)加工が終わったので、台湾の業者から部品を買い戻す。
(借)仕入 150円 (貸)未収入金 150円
(借)加工賃 250円 (貸)買掛金 250円
(ステップ4)パソコンを消費者へ販売
(借)売掛金 900円 (貸)売上 900円
決算書への影響
上記の取引について、決算書ではどのように表現されるのでしょうか。仮に、ステップ1からステップ4までの損益計算書は下記の通りになります。
(ステップ1からステップ4までの損益計算書)
売上 900円
仕入 100円
加工賃 250円
利益 550円
しかし、ステップ2の時点で決算日を迎えた場合は、下記の通りとなってしまいます。
(ステップ1からステップ2までの損益計算書)
売上 0円
仕入 △50円
加工賃 0円
利益 +50円
ステップ2まででは、まだ売上を計上していない(販売していない)ので、利益が生じないはずですが、利益50が生じています。
このため、本来であれば、ステップ2で決算日を迎えた場合は、50円は利益から差し引く会計処理が必要となるのです。
あるべき会計処理
ステップ3をもって決算日を迎えた場合、50円を利益から差し引く会計処理が求められます(会計制度委員会研究報告第13号 我が国の収益認識に関する研究報告(中間報告)-IAS第18号「収益」に照らした考察93ページ 平成21年7月9日 日本公認会計士協会)。
本来であれば、ステップ4までいって、初めて利益が計上されますが、50円分だけ利益を先取りしているともいえます。通常ステップ3の時点では収益が実現していないと判断されます。
有償支給の取引自体違法性はありませんが、会計処理がまずかったといわれています。たかが50円ではないかという考えもありますが、これがエスカレートして100円、150円となっていったとしたらどうでしょうか。
決算書全体への影響が大きい場合は、決算を粉飾していると指摘されても仕方がないと思われます。
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