[小冊子03:海外赴任と外国人雇用]
【はじめに】
今回は、株式の減損処理について、日本とシンガポール(国際財務報告基準IFRS)の違いを記載します。
【減損処理とは】
減損とは、保有資産の収益性が低下している場合、資産の評価を切り下げるとともに、差額を損失として計上する処理をいいます。
例えば、親会社が子会社株式を保有していたとしましょう。1億円出資して100%子会社を設立したものの、毎年赤字続きで債務超過になり、かつ、今後も子会社の収益が見込めない場合は、当初出資した1億円は回収できないでしょうし、配当も期待できないところか、売却しようとしても値段が低くなってしまいます。
このような場合は、子会社株式の評価を1億円からゼロ円に切り下げる可能性が高くなります。この切り下げ処理を減損(Impairment)と呼びます。
【日本の会計処理】
金融商品に関する会計基準第21項において、「時価を把握することが極めて困難と認められる株式については、発行会社の財政状態の悪化により実質価額が著しく低下したときは、相当の減額をなし、評価差額は当期の損失として処理しなければならない。」としています。
「実質価額が著しく低下したとき」という言葉には、客観的な指標があり、少なくとも株式の実質価額が取得原価に比べて50%程度以上低下した場合(金融商品会計に関する実務指針第92項)としています。
このため、日本の実務においては、子会社の純資産価額が株式取得時の50%を下割らなければ減損はないと思っている実務担当者が多くいます。
【シンガポールの会計処理(国際財務報告基準IFRS)の処理】
ところが、シンガポールにおいては、50%という客観的な数値基準がありません。考え方としては、子会社(=出資先)の収益性が低下している事実(これを減損の兆候と呼びます)があれば、株式の取得原価と公正価値(株式の売却価額と思ってください)もしくは使用価値(株式を保有し続けることによって得られる配当や将来の売却益と思ってください)と比較して、取得原価の方が高ければ、減損損失を計上する旨が定められています(シンガポール会計基準FRS第36号の第9項と第10項)
このため、日本よりも早いタイミングで減損を求められるケースがあります。この点注意が必要です。
しかし、シンガポールの監査人の実務を見ていると、設立直後など赤字でも仕方がない事情等があれば、勘案されて判断される傾向があります。減損を避けたいのであれば、当初の予算と現状の実績値の乖離をどのように説明するか、また、今後の計画、直近の損益がポイントとなってくるように思います。
なお、日本の会計基準と違い、減損後、収益力が回復した場合、過去の減損損失を取得原価に戻す処理もありえます(シンガポール会計基準FRS第36号の第9項と第10項)。
【Japan Tax Guide – for Beginners – 英語による日本の税務のご説明ブログ】
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