[小冊子03:海外赴任と外国人雇用]
【はじめに】
今回は、日本とシンガポールにおける役員報酬に関する課税関係について、具体例を交えながらご説明します。
【設例】
日本で代表権をもつ常務取締役が、シンガポール法人の社長として赴任したケースを例とします。
日本法人から支給される日本法人の役員報酬が10,000,000円、シンガポール法人の役員報酬が100,000シンガポールドルとしましょう。
なお、当該役員は通常シンガポールに住むとともにシンガポール法人に勤務していますが、年間80日程度日本に戻ります。
【日本の税法による課税関係】
当該役員は、1年以上日本を離れ、シンガポールで勤務することを前提として出国していますので、日本の所得税法上、非居住者として扱われます。このため、通常は日本国内で生じた所得(国内源泉所得といいます)にのみ課税されることとなります。
当該役員は、シンガポールの銀行口座へ日本法人の役員報酬が10,000,000円、及びシンガポール法人の役員報酬100,000シンガポールドルが振り込まれています。役員報酬は共にシンガポール払いで日本で支払いが行われていないため、一見すると、日本では課税されないように見えます。
しかし、日本法人の役員の場合、海外勤務中に日本法人の役員報酬10,000,000円をシンガポールで受け取る場合でも、支払われた場所にかかわらず、当該報酬は日本の国内源泉所得とされます。このため、日本法人側では、シンガポールの銀行口座に報酬を支払う際に、20.42%の税率で源泉徴収(所得税法第212条、第213条)をする必要があります。
なお、シンガポール法人の役員報酬100,000シンガポールドルについては、非居住者が受け取る国外の源泉所得となりますので、日本では課税されません。
【シンガポールの税法による課税関係】
当該役員は、シンガポールに285日(365日-80日)程度滞在することとなりますので、シンガポールの居住者として扱われます。このため、シンガポール法人勤務により生じた所得について課税されます。
シンガポールの税法によると、役員報酬(Director’s Fee)については、シンガポール法人の役員報酬であれば課税される旨が定められています。このため、シンガポール法人の役員報酬100,000シンガポールドルについて、シンガポールの課税所得となり、シンガポール居住者に適用される税率で課税されることとなります。
Where director’s fee is taxable in Singapore, it will be treated as income of the year in which you are entitled to the fee. This is usually the date of the company’s annual general meeting or when the director’s fee is approved by the board of the company.
なお、日本法人から支給される日本法人の役員報酬が10,000,000円については、シンガポールの課税対象とはなりません。なぜなら、シンガポールの税法によると、役員報酬の課税は、法人の所在国で課税すべきという方針があるためです。
Generally, director’s fees are sourced in the country where the company is resident. This is because all the functions of the directors in determining and controlling activities to earn the profits of the company are carried out in that country
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