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引当金についての日本基準と国際財務報告基準(IFRS)の違い

記事作成日2015/09/14 最終更新日2021/12/13

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【はじめに】

今回は引当金についてお話します。

【引当金とは】

噛み砕いて説明しますと、引当金とは,実際にはまだ発生していないその費用や損失を当期の費用や損失として前倒し計上し,同額を負債に計上することをいいます。お金の支払いは来期以降になるものの、将来の費用の発生原因が当期の事業活動にある場合、費用を早めに決算書に計上しなさいというのが引当金設定の趣旨です。ここで、注意したいのは、引当金計上の要件を満たす場合は、引当金を計上しなければなりません。選択制ではありませんのでご注意ください。

【日本おける引当金】

日本においては会計ルール(=決算書の作成ルール)の一つである、企業会計原則の注解18に引当金計上の要件が記載されています。

注解18では引当金計上の要件として以下の四つを挙げています。

① 将来の特定の費用又は損失であること
② その発生が当期以前の事象に起因すること
③ 発生の可能性が高いこと
④ その金額を合理的に見積ることができること

なお、現在の法人税法(=税金の計算ルール)では貸倒引当金など一部を除き、原則として引当金は損金として扱うことができません。このため、決算書で引当金が計上されていても、税務申告書上は引当金がなかったものとして処理します。

【国際財務報告基準(IFRS)における引当金】

多くの国に影響を与えている国際財務報告基準において、引当金とは,時期又は金額が不確実な負債として扱い、下記の3つの要件を満たした場合に計上することとなります。

(a) 企業が過去の事象の結果として現在の債務(法的又は推定的)を有しており、
(b) 当該債務を決済するために経済的便益を有する資源の流出が必要となる可能性が高く、
(c) 当該債務の金額について信頼性のある見積りができる場合

【日本基準と国際財務報告基準(IFRS)の違い】

上の要件だけみても良くわからないかもしれませんが、引当金を計上するかしないかについての日本と国際的財務報告基準の最大の違いは、日本は債務性のない引当金も計上するが、国際財務報告基準は、債務性のある引当金のみを計上することです。

たとえば、日本では修繕引当金は引当金の要件を満たせば計上しなければなりませんが、国際財務報告基準では、上記3要件のうちの(a)の債務性の要件を満たさないため、引当金として計上しないこととなります。

債務性があるかないかですが、いいかえると引当金計上の根拠となるお客様等の契約があれば債務性があるといえます。たとえば、製品販売の際に、販売日から1年以内に製品が故障したら無償で修理しますという取り決めがあれば、もし、製品が1年以内に故障した場合に、無償で修理に応じる義務が発生しますので、販売日が属する事業年度に修理費用を見積もって引当金として計上をすることとなるでしょう。

先ほど債務性がない引当金として取り上げた修繕引当金は、修繕する行為は会社内部の意思だけで決定できますので、修繕する行為に関する外部との契約は通常ありません。そのため、国際財務報告基準では引当金として計上できないこととなります。

【実務において】

公認会計士又は監査法人の監査を受けている会社では、会計士から引当金を計上しなさいといわれてしまうと、決算書の費用と負債が大きくなり、利益が小さくなるので極力計上したくないという気持ちではないでしょうか。しかし、会計基準に従って引当金を計上する必要があるときには引当金を計上して決算書を作成しなければなりません。

これに対し、監査義務がない会社は、企業の業績が良い場合に、引当金の要件を満たしていないにもかかわらず、引当金を計上しているケースを散見します。筆者の推測ですが、業績の良いときに引当金を計上し、業績の悪いときに引当金を取り崩して、利益を調整することを目的としているのではないでしょうか。しかも、税務申告書上は引当金がなかったものとして処理するため、税理士も異議を唱えてくることはありません。

しかし、このような会社様が海外進出をして監査を受けたり、上場準備のための監査法人の監査を受け始めたりすると、引当金についていろいろ指摘されることとなります。監査を受ける立場になった場合は、引当金の会計ルールを事前に確認しておくことをお薦めします。

※参考文献:日本公認会計士協会 平成25年6月24日 会計制度委員会研究資料第3号「我が国の引当金に関する研究資料」

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