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小売業における消化仕入(収益認識に関する会計基準適用の具体例)

記事作成日2017/10/25 最終更新日2021/12/13

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今回は収益認識に関する会計基準(案)で取り上げている、いわゆる消化仕入に関する取り扱いについてお話しをします。

消化仕入とは?

日本のデパートなどで、テナント(デパートからみると仕入先に該当)がお客様に商品を販売したときに、帳簿上、売上高と仕入高を同時計上する取引をいいます。

通常商品を仕入れるときは、商品の購入者に相当するデパート側が商品を検収したのち、デパートの在庫として扱います。

しかし、消化仕入では、商品がデパートに納品されたとしても、その商品はテナントの所有物として扱います。そして、お客様が商品を買い上げた時に、商品の所有権が、テナント→デパート→お客様と瞬時に移転することとなります。

消化仕入の取引が定着した背景

なぜこのような取引形態が登場したのか定かではないですが、テナントとデパートそれぞれで以下のような思惑があるのではないでしょうか?

テナントの視点

商品が売れ残った場合はテナントが損失を被る。このため、売れ残りのリスクを負うことを理由として、デパートに対してお客様に対する売上価格の決定権をもつと主張する。そうすることによって、テナント側の都合で利益率を決定することができる。

デパートの視点

デパートのブラントイメージを維持するために値引き販売は避けたい。また、デパートの立地やブランドから、多数のお客様が来場すると見込まれるので、利益率が多少低くても、販売量の拡大で一定の利益額が確保できるし、在庫管理の手間隙もかけたくない。

会計処理

消化仕入の会計処理については、企業会計基準適用指針公開草案第61号「収益認識に関する会計基準の適用指針(案)」の設例29を一部変更して説明をします。

1.前提条件

(1) 小売業を営むA 社は、仕入先より商品を仕入れ、店舗に陳列し、個人顧客に対し販売を行っている。

(2) 消化仕入契約では、A 社は、店舗への商品納品時には検収を行わず、店舗にある商品の所有権は仕入先が保有している。また、商品に関する保管管理責任及び商品に関するリスクも仕入先が有している。A 社は、店舗に並べる商品の種類や価格帯等のマーチャンダイジングについて一定の関与を行うが、個々の消化仕入商品の品揃えや販売価格の決定権は仕入先にある。顧客への商品販売時に、商品の所有権は仕入先からA 社に移転し、同時に顧客に移転する。A 社は、商品の販売代金を顧客から受け取り、販売代金にあらかじめ定められた料率を乗じた金額について、仕入先に対する支払義務を負う。

(3) A 社の履行義務は、商品を自ら提供することである(そのため、A 社は本人に該当する。)のか、あるいは商品が仕入先によって提供されるように手配することである(そのため、A 社は代理人に該当する。)のかを判定するために、A 社は顧客に提供する財又はサービスを識別し、当該財又はサービスを顧客に提供する前に支配しているのかどうかを評価した。

消化仕入取引においては、A 社は、商品の法的所有権を、顧客に移転される前に一時的に獲得しているものの、在庫リスクを一切負っておらず、また、当該商品について、顧客に販売されるまでのどの時点においてもその使用を指図する能力を有しておらず、商品を支配していないため、当該商品について顧客に提供される前に支配していないと判断した。

したがって、A 社は、消化仕入取引においては、自らの履行義務は商品が提供されるように手配することであり、自らは代理人に該当すると判断した。

(2) 消化仕入契約による商品の販売

A 社は、消化仕入契約の対象の商品Y を10,000 円で顧客に現金で販売した。同時に、商品Y の仕入先B 社との消化仕入契約に基づき買掛金を8,000 円で計上した。

 (借)現金預金10,000円 (貸)買掛金8,000円
(貸)手数料収入2,000円 (*2)

(*2) A 社は代理人として、B 社により提供された商品を顧客に販売したことにより受け取った対価10,000 円とB 社に支払う対価8,000 円との純額で収益を認識する。この結果、手数料収入は純額の2,000 円で計上される。

代理人に該当するかの検討の意味

事例のA社もしくはデパートが商品の提供者そのものであるのか、それとも、単に商品の提供を手配したに過ぎないのかで、会計処理を変えることとしています。

商品の提供者そのもの、すなわち本人であれば、在庫を抱えるリスク等を負いながら得た収益であることから、その努力と成果を示すため、売上高と売上原価に分けて開示するという考え方をとります。

しかし、単に商品の提供を手配したに過ぎない場合、すなわち代理人として収益を得たのであれば、単に手数料を獲得したとして、手数料分を売上高として開示するという考え方をとります。

詳細は下記のブログをご覧ください。
>>収益認識に関する包括的な会計基準の開発について ~国際財務報告基準が日本の売上に関する会計基準に影響を与えだしている~ その2 Japanese GAAP are gradually under the influence of IFRS.

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