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地域統括会社等と連結財務諸表の作成+アジア諸国は公認会計士又は監査法人の監査が必要となるケースが多い

記事作成日2014/12/15 最終更新日2021/02/09

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はじめに

シンガポールは東南アジアの地域のハブとしての機能もあり、この特性を生かして地域統括会社を設立する会社も多いかと思います。

地域統括会社も含め、日本法人を頂点としてシンガポール法人、他のアジアの法人と全体の構造を設計した場合、シンガポールの財務諸表の作成と監査がどのようになるのかをお話したいと思います。

なお、地域統括会社の詳細は1月7日(水)開催のシンガポール地域統括会社の活用セミナーをご受講ください。シンガポールの会計事務所であるSCS Globalより中瀬和正氏(日本税理士・シンガポール税理士)をお招きし、弊社の税理士斉藤哲と共にお役立ち情報をご提供します。

 

シンガポールの財務諸表は連結版が原則

シンガポールの会社は原則としてすべての会社でSFRS(Singapore Financial Reporting Standards、シンガポール財務報告基準)に基づいて財務諸表を作成しなければなりません(シンガポール会社法第201条)。

SFRSは国際的な会計基準であるIFRS(International Financial Reporting Standards,国際財務報告基準)にほぼ準拠しており、ほとんどIFRSと一緒と考えていただいて良いと思います。

SFRSやIFRSの厄介なところは、財務諸表は原則として<span style=”text-decoration: underline”>連結財務諸表(グループ全体の決算書)でなければならない旨を定めています(</span>FRS110 Consolidated Financial Statements、IAS27.9)。

また、シンガポールでの監査も財務諸表がSFRSに準拠して適正に作成されているか否かのチェックですので、<span style=”text-decoration: underline”>連結財務諸表を作成しなければ監査で適正意見が表明されません</span>。

 

具体的にお話しますと、シンガポールで作成すべき連結財務諸表は、シンガポールの財務諸表+他のアジア法人の財務諸表±連結調整仕訳となります。したがって、財務諸表を連結する作業が発生してしまいます。連結の作業は連結財務諸表の作成に慣れた人員を確保できればいいのですが、現地の会計事務所に追加の料金を支払ってお願いすることも多いです。

 

例外1

シンガポールにおいては日本の会計基準に準拠した連結財務諸表でかまわないという特別ルールが適用されているため、日本法人が日本の会計基準に従って作成した連結財務諸表を開示していればシンガポール法人で連結財務諸表の作成は免除されます(FRS27.16(a))。

ただし、日本法人で連結財務諸表を作成開示している会社は上場企業を代表とする有価証券報告書を提出する大会社に限られると思われます(日本会社法第444条第3項)。

 

例外2

シンガポール会社法によると、休眠会社と私的免除会社(Exempt Private Company,株主が20人以下の個人株主である会社)で年間の売上高5百万シンガポールドル以下の会社は監査が免除されます(シンガポール会社法205B条205C条)。

 

監査免除の改正

2014年10月8日に国会において可決された新会社法では、直近 2 会計年度のいずれかにおいて以下の 3 条件のうち 2 つ満たす非公開会社を小会社(Small Company)と定義し、当該会計年度における監査義務を免除しました(新会社法第 205C 条)。

・各会計年度の収益が 1,000 万シンガポールドルを超えないこと

・各会計年度末の総資産の価値が 1,000 万シンガポールドルを超えないこと

・各会計年度末の従業員が 50 名を超えないこと

なお、上記要件は、当該会社を含むグループにおいて連結会計を行っている場合、連結ベースで基準を満たす必要があります。

なお新会社法は2014年12月4日現在施行されていませんので、施行日等については注意を払う必要があります。

 

 

アジア諸国では小規模の法人でも監査が義務化されているケースが多い

シンガポールに駐在していて実感するのは日本以外のアジア諸国では比較的小規模の会社でも公認会計士又は監査法人による監査が義務化されていることです。

たとえば、タイではすべての会社について監査が義務付けられています(パートナーシップ、いわゆる組合形態の組織には例外がある。タイ王国の非公開会社の情報開示制度に意味はあるか、北山弘樹関西大学商学編集より)。

また、フィリピンでも5万ペソ以上(2014年11月現在、1ペソ約2.6円)の資産を持つ企業は監査が義務付けられています(フィリピン投資ガイド2013版PWC)。

 

このように比較的小規模の会社でも公認会計士による監査が義務付けられていますので、進出時には監査費用も見積もっておく必要があります。

上述の例をもとに具体的にお話しますと、他の各アジア法人の財務諸表について現地の公認会計士又は監査法人に監査をお願いした上で、シンガポールの連結財務諸表についてもシンガポールの公認会計士又は監査法人にお願いすることとなる可能性が高いと思われます。

 

なお、日本の会社法では資本金が5億円以上もしくは負債総額が200億円以上の大会社についてのみ公認会計士又は監査法人による監査が義務付けられています(日本会社法第328条、第2条)。筆者の私見ですが、日本は他のアジア諸国に比べると監査対象会社のとなる基準が大きすぎるように思います。

 

 

日本の非上場オーナー企業は進出費用に注意

日本の非上場のオーナー企業の経営者の方が、シンガポールに法人を作って他のアジアに現地法人を作って進出しようとするケースが多く見受けられます。<span style=”text-decoration: underline”>税制上は現地法人の株式の売却時に課税されにくいなど有利となる場面もありますが、会計や監査に関しては連結財務諸表作成のコストと各国の監査コスト(各国の監査免除の可否は要確認)がかかってしまうことに留意する必要があります。</span>

日本では監査が求められなかったり、連結財務諸表の作成が必要でなかったりしますから、感覚的にわからない経営者の方が多いのですが、進出時の見積もりには監査コスト等を織り込んでください。

 

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