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収益認識に関する包括的な会計基準の開発について ~国際財務報告基準が日本の売上に関する会計基準に影響を与えだしている~ その2 Japanese GAAP are gradually under the influence of IFRS.

記事作成日2016/07/19 最終更新日2021/06/07

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今回は、具体的な事例をつかって、新しい会計基準で検討されている事項についてお話をします。
前回ブログ
>>収益認識に関する包括的な会計基準の開発について ~国際財務報告基準が日本の売上に関する会計基準に影響を与えだしている~ その1 Japanese GAAP are gradually under the influence of IFRS.

なお、本文で使用する事例は、企業会計基準委員会「収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集」の事例をベースにして数値等は筆者が付け加えています。

本人か代理人かの検討(総額表示又は純額表示)、建設業およびシステム開発等のいわゆる仲介取引の会計処理

事例

建設業およびシステム開発業には、自らが行っていた業務、あるいは行おうとしている業務を、他の企業や団体等へそのまま業務委託する、いわゆる仲介取引をいう取引形態があります。

例えば、総合ショッピングモールの建設に参画した大手建設業者の下請け企業が複数の孫受け企業を使って建設を進めるとしましょう。下請け企業は大手建設業者および孫受け企業とのコミュニケーション役を果たしますが、自身では建設工事に従事しません。

大手建設業者からの受注金額は1億円、孫受け業者へは8,000万円で発注をしています。

下請け業者は工事の進捗について責任を負いますが、材料や人の手配は孫受け会社が全て行います。

現行の会計処理

事業年度中に本件工事が完成し、売上を計上することが出来たとしましょう。

○下請け業者
(ケース1)売上高1億円、売上原価8,000万円 利益2,000万円
(ケース2)売上高2,000万円、売上原価0円 利益2,000万円

新しい会計基準案及び国際財務報告基準やアメリカの会計基準の考え

日本の新しい会計基準案や国際財務報告基準やアメリカの会計基準の考え方はともに、下請け業者が本件工事を発注者である大手建設業者へ提供する立場であるかどうか(提供者本人か)、それとも、単に工事業者を手配しているに過ぎないのか(代理人に過ぎないのか)で会計処理を変えるとしています。

本事例では、下請け業者は工事の進捗に責任を追っていますが、工事自体に主体的に関与し提供しているとはいえず、単に孫受け会社の代理として、工事を取りまとめるサービスを提供しているに過ぎないと解釈される可能性が高い事例です。

そうなりますと、上記の(ケース2)の会計処理を求められることとなります。

実務上は、(ケース1)の会計処理をしている企業も少なくありません。

(ケース1)と(ケース2)で比較した場合、利益の金額は同額の2,000万円ですが、売上高については、(ケース1)が1億円、(ケース2)が2,000万円となり、(ケース1)は売上規模が5倍大きく見えることとなります。

会計基準の導入やIFRSの導入により、売上高が1億円から2,000万円に減少してしまい、売上の規模が業界内で重視されている場合は、決算書の見栄えに影響が出てきます。

なお、新しい会計基準が、このような考え方を正式に導入するかどうかはまだわかりません。しかし、国際財務報告基準やアメリカの会計基準が(ケース2)の考えを導入しているため、日本の新しい収益認識の会計基準も(ケース2)の考え方をベースにしてくる可能性が高い状況です。

影響が生じると予想される業界

収益認識に関する包括的な会計基準の開発についての意見の募集第146項にて、影響を受けると考えられる取引例として、「例えば、卸売業における取引、小売業におけるいわゆる消化仕入や返品条件付買取仕入、メーカーの製造受託の取引や有償支給取引及び電子商取引サイト運営に係る取引等の会計処理が影響を受ける可能性がある」としています。

これらの業界の方は、売上の会計基準の動向に注意を払った方がいいように思います。

実は今回の事例と似た事例が、国際財務報告基準の公開草案(Exposure Draft、Clarifications to IFRS 15、Comments to be received by 28 October 2015)で取り上げられていますので、ご紹介致します。
>>収益認識に関する包括的な会計基準の開発について ~国際財務報告基準が日本の売上に関する会計基準に影響を与えだしている~ その3 Japanese GAAP are gradually under the influence of IFRS.

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