目次
【はじめに】
2015年6月に中小企業庁が発表した「中小企業の海外事業再編事例集」について、その記載内容を引用しながら、シンガポールに駐在している筆者から見た感想やブログ読者への提案を記載します。
【引用と筆者の感想や提案】
「細字で記載」が引用箇所、太字が筆者の感想や提案です。
【日本法人からみた海外子会社の管理のあり方。不正の有無・現地状況把握や従業員のモチベーション】
7ページ 1.2.2 海外事業の運営上の留意点 現地での経営管理を徹底しよう
「事業が軌道に乗っても現地任せにせず、日本本社の経営陣や海外事業担当者は必ず、定期的に自分の目で現地法人の状況を確認し、細かく状況を把握する必要がある。」
「最終的には、現地従業員が主体的に運営できる自律的な会社を目指すべきであるが、人事や財務といったヒトとカネに関係することは日本本社できちんとルールを決め、定期的に海外現地からの報告を求めるようにすべきである。」
「日本人駐在員を現地に派遣する際は、技術的な能力のみならず経営能力のある人材を送り込むことが望ましい。また、人材育成の観点からも、一人に全て任せきりにせず、後継の担当者を並行して育てる必要がある。」
→多くの中小企業様は、社長もしくは幹部の方が現地を訪れ状況を確認されています。また、合わせて得意先等へあいさつ回りもされているケースも多いです。
現地従業員の立場から見ても日本から役員や従業員が来ることで、緊張感も保てますし重要な仕事を任せてくれているのだとの気持ちにもなりますので、有益なことだと思います。
気をつけていただきたいのは現地法人の不正・横領など内部管理に関する話です。もともと海外は日本よりも雑に仕事をする傾向が強いのもあり、日本側で求める管理レベルの管理をしない可能性が高いです。ローカルの従業員に管理を任せたが、全く管理ができていなくてこまっているというケースも目にします。お薦めは日系の会計事務所の支援を求めて管理体制を構築するとともに、定期的に内部監査を実施することです。
駐在員の人選も気をつけたいところです。能力の視点からは、事務処理能力よりも営業能力や現地への対応力、情報収集をして日本へ適時適切に報告でき、積極的な行動をする駐在員を選ぶことをおすすめします。いいかえれば、新たに最初からビジネスをおこなうのと似ている状況なので、独立したら成功しそうな人(自営業者向き)が進出初期の駐在員として向いているように思います。
また、駐在員を単身でいかせるか家族でいかせるか悩まれている企業も多いかと思いますが、単身で駐在させる場合は住居費コスト等が抑えられるメリットがあり、家族で駐在させる場合は、現地での駐在員の私生活の監視及び駐在員のモチベーションの維持がしやすいのがメリットとして挙げられます。
駐在員一人の場合は、30後半から40前半ぐらいまでの方が多く、二人以上になると、50台と30代前半の方のケースを多く見ます。
【ローカルの従業員に日本人従業員と同じものを求めてもうまくいかない】
7ページ 1.2.2 海外事業の運営上の留意点 現地従業員に組織の一員としての自覚を持たせよう
「日本人駐在員は、現地従業員と一緒に現地法人を運営していくという意識を持ち、現地従業員(特にリーダークラス以上)とのコミュニケーションの中で、目標や企業理念を共有することが重要である。」
「現地従業員に対し、品質管理やコンプライアンスなど、現地法人の運営に必要と思われる教育・研修を定期的に行うことが、問題の拡大を未然に防止するために重要な土台となる。」
「現地従業員に対する表彰制度やレクリエーションの機会を設けることなどで、会社に対する親近感、愛社精神を醸成していくことも大切である。」
→シンガポールの現状からお話しますが、現地の従業員に日本人と同じ労働観を持たせようとすることは反発を招きますのでお薦めしません。シンガポールでは日系企業への就職は長時間労働や言葉の壁があるイメージからか人気がありません。日本のやり方を押し付けようとすると退職してしまう可能性もありますので、この点は十分留意する必要があります。
また、従業員を人前でしかることはやめてください。シンガポール以外でもアジア諸国の従業員は文化の違いからか、日本人のように怒られることになれていない方が多くいますので、この点は要注意です。説教した翌日に退職したというケースも聞いたことがあります。
対応策としては、日本企業の長所である従業員の長期雇用の方針を掲げたり、人材育成の重視・社員旅行やバーベキュー(食事に関してはハラルやベジタリアン対応なども必要ですが)などのイベントの開催をお薦めします。
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