はじめに
2015年6月に中小企業庁が発表した「中小企業の海外事業再編事例集」について、その記載内容を引用しながら、シンガポールに駐在している筆者から見た感想やブログ読者への提案を記載します。
引用と筆者の感想や提案
細字で「 」が引用箇所、太字が筆者の感想や提案です。
最初は教えてもらうことばかり。人とのつながりを大切にしましょう
1.2.2 海外事業の運営上の留意点 現地でのネットワークを構築しよう
→特に海外進出したばかりのころは、仕事もプライベートもわからないことばかりです。このため人の助けを借りる必要があります。筆者の経験としては、ビジネスでは日系の不動産業者や会計事務所など、私生活では私的に開催されている日本人の集まりや出身大学の集まりに参加すると有益な情報が得られますし、気持ち的にもなんとなく楽になる傾向があります。
このため積極的に動き、いろんな方と接点を持つことをお薦めします。
人件費・家賃が上昇している国が多い、派遣労働の規制などに注意
1.2.2 海外事業の運営上の留意点 人件費の高騰に備えよう
「新興国の経済発展に伴う人件費の高騰は、昨今、進出企業にとって深刻な問題となっている。進出前の段階で、進出国において労働法が改定される可能性があるかなど、できる限りの情報収集を行い、リスクを想定しておくことが望ましい。」
「また、廉価な労働力や原材料を特に期待して海外進出する場合、コストの増加を見込んだ事業計画も策定しておくことが望まれる。今回であれば、正社員や派遣社員の人数を最低限に圧縮しておき、繁忙期のみ季節工、臨時工などの短期労働者を採用するなどして、固定費を削減し、人件費を変動化することも検討すべきである。」
→日本ではGDPの成長率は良くて2%台ですが、海外では日本と違い7%台などと高くなっています。このため人件費のみならず賃料相場等も上昇しています。インドネシアなどでは急激に上昇している地域もあります。
また、人材に関しては常に売り手市場のエリアも多ったり、日系企業への就職を望まない方もいるなど、希望する人材が確保しづらくなっています。
人件費や家賃の上昇そのものを防ぐことは出来ませんが、物価自体が上昇していますので価格転嫁のチャンスもあるのではないかと思われます。
私見ですが、人件費の変動費化については、日本で流行っている派遣による人材の確保は他の国では規制の対象となっている場合が多く、事前に調査が必要だと思われます。たとえば、中国では、臨時的、補助的又は代替的な業務職位に限定され、派遣先における派遣労働者の数が労働者総数の10%を超えてはならないとされるなど、派遣に関する規制が強い状況です。また、残業時間についての規制もあり、行政に摘発されそうになると賄賂を渡さざるを得ない国もあると聞いたことがあります。
賄賂について
1.2.2 海外事業の運営上の留意点 海外現地の公務員等への賄賂で逮捕されることも
「多くの国で公務員への賄賂が認められていないのは勿論のことだが、国によっては、公務員への賄賂だけではなく、民間企業同士のリベートのやり取りが『商業賄賂』として処罰されることもある。この場合、刑事罰が科せられ、罰金、有期懲役などの不利益を受けるほか、営業許可証の取消しを受け、海外現地での事業運営ができずに清算を余儀なくされることもある」
→シンガポールで勤務している日本人弁護士によると、日本と同じ感覚で行政への対応ができるのは、シンガポールとマレーシアぐらいで、他のアジア諸国は法律が適切に運用されていないケースが多いそうです。
また、海外でビジネスをしていると賄賂を渡す状況になるとの話を時々聞くことがあります。
この件については難しい判断が求められると思いますが、一度逮捕されますと日本と違い言葉もわからないので現地の警察・検察などの言いなりになる可能性が高いと思われます。法律を犯すようなことは極力避けることが無難です。
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