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ワイン100本買ったのですが・・・原材料や貯蔵品の会計処理

記事作成日2016/02/29 最終更新日2017/01/27

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[小冊子03:海外赴任と外国人雇用]

【はじめに】

シンガポールに勤務している中で、こんな質問をいただきました。「会社で販売促進のため、ワインを100本まとめて購入したのですが、帳簿上どのように処理しましょうか?」という内容です。珍しい事例ですが、日本の会計や税務、シンガポールの会計や税務に照らして考えてみたいと思います。

今回の事例については、筆者の私見であることにご留意ください。

 

【日本の会計や税務のルールに準拠した処理】

企業会計基準第9 号棚卸資産の評価に関する会計基準第3項にて、「棚卸資産は、商品、製品、半製品、原材料、仕掛品等の資産であり、企業がその営業目的を達成するために所有し、かつ、売却を予定する資産のほか、売却を予定しない資産であっても、販売活動及び一般管理活動において短期間に消費される事務用消耗品等も含まれる。」と定めています。

ワインは会社への販売活動の一環としてお渡しする品とのことですので、決算日時点でワインが残っていた場合は、棚卸資産(貯蔵品)で処理するのが妥当と思われます。また、実際にワインを引き渡した場合は、販売促進の費用として販売費及び一般管理費の科目から適切なものを選択して費用処理することとなります。

また、日本の法人税法でも、法人税法施行令の第10条(棚卸資産の範囲)で「消耗品で貯蔵中のもの」と定義しており、これにワインが含まれると思われます。

そうなりますと、日本においては、期末日時点でワインが残った本数だけ貯蔵品とし、実際に会社にお渡しした分は販売費及び一般管理費として費用処理するという結論になります。会計と税務で違いはないと思われます。

 

【シンガポールの会計や税務のルールに準拠した処理】

シンガポールの会計基準FRSの第2 Inventoriesの第6項(国際財務報告基準の第2の第6項と内容が同じです)で、棚卸資産の定義をしており、この中で「in the form of materials or supplies to be consumed in the production process or in the rendering of services.」(原材料や貯蔵品で、生産過程で消費されるものもしくは役務の提供にあたり消費されるもの)とあります。

ワインは、このうち貯蔵品で役務の提供にあたり消費されるものに該当します。

また、税務上も「there shall be deducted all outgoings and expenses wholly and exclusively incurred during that period by that person in the production of the income」とあり、損金算入される支出や費用は、事業年度内に所得に貢献する支出や費用が該当する旨の記載がありますので、実際にワインを会社にお渡ししたときに始めて損金に算入できると読めます。

結論ですが、シンガポールでも日本と同様の処理となります。

 

【仮に事務用ボールペン100本購入した場合は?】

日本の会計基準とシンガポールの会計基準で相違があるのは、事務用消耗品に関する扱いです。日本は明確に棚卸資産の対象とすると明記していますが、シンガポールの会計基準や国際財務報告基準では明確な記載がありません。実務上は監査人の判断になるかと思います(諸外国では監査が強制されている会社が多いため)。

 

 

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