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マイナス金利と退職給付引当金 その2 Negative Interest Rate and Retirement benefits liabilities. Part 2

記事作成日2016/05/11 最終更新日2021/06/30

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【はじめに】

前回に続き、マイナス金利が退職給付引当金へ与える影響についてお話しをします。

【2016年3月発表 マイナス金利に関する会計上の論点への対応について】

先日企業会計基準委員会は、退職給付債務の計算における割引率について議論を行い、その結果を発表しました。議論のきっかけは、マイナス金利と割引率についての問い合わせが相次いだためとのことです。

結論としては、退職給付債務の計算における割引率について、平成28 年3 月決算においては、割引率として用いる利回りについて、マイナスとなっている利回りをそのまま利用する方法とゼロを下限とする方法のいずれの方法を用いても、どちらでも良い旨を発表しました。

このため、前回数字を使ってご説明したマイナスの割引率適用により引当金の金額が膨らんでしまうことは避けられることとなりました。詳細は、財務会計基準機構のWeb サイトをごらんください。(著作権などの都合でリンクを貼ることができません)

【退職給付引当金の構成要素】

また、退職給付引当金は将来の支給額だけを考慮して計算すればいいのではありません。下記の要素等も含めて計算するので、マイナス金利がどのような影響を及ぼすか単純に説明できません。

例えば、

・退職給付債務:退職給付のうち、認識時点までに発生していると認められる部分を割り引いたものをいう。

→前回の説明のように20年後の支給額が10,000,000円だとしても、現時点で発生している金額のみを債務として認識すれば足りる(例えば30年勤続して退職すると仮定した場合、10,000,000円÷30年×10年=3,333,333円だけ債務とし、これを割引計算する)。

・年金資産:特定の退職給付制度のために、その制度について企業と従業員との契約(退職金規程等)等に基づき積み立てられた特定の資産をいい、退職給付引当金のマイナス要因(負債額を減少させる効果があるとなる)。

→将来の退職金の原資となる資産ですが、こちらも金融資産であれば利息がつきますので、金利変動の影響を受けます。

・数理計算上の差異:年金資産の期待運用収益と実際の運用成果との差異、退職給付債務の数理計算に用いた見積数値と実績との差異及び見積数値の変更等により発生した差異をいう。

→例えば、昨年末と異なる割引率を適用して計算したとしても、割引率の変動のよる金額は、ただちに損益に反映するのではなく、予想される退職時から現在までの平均的な期間(以下「平均残存勤務期間」という。)以内の一定の年数で按分した額を毎期費用処理する。

【次回】

次回も引き続き、マイナス金利が退職給付引当金へ与える影響をお話します。

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