シンガポールにおける税務上の居住者判定の話をします。
居住者とは
多くの国では、所得税を課すにあたり、納税者を居住者と非居住者に分類し、それぞれ異なるルールを適用しています。このため、所得税を収めるべきか、いくら収めるべきかについて、まず、納税対象者がその国において、居住者にあたるのか、非居住者にあたるのかを検討しなければなりません。
ざっくりとしたイメージでお話しますが、居住者とは、その国を住まいや労働の本拠地としている納税者、非居住者とは、別の国が住まいや労働の本拠地だが、一時的にその国でも仕事をしていたり住んでいるというイメージです。
なお、居住者・非居住者の分類方法(定義)は、各国で異なりますので注意をしてください。
シンガポールにおける居住者とは?
シンガポールにおける居住者とは、以下の条件に当てはまる納税者をいいます。
なお、シンガポールの所得税の課税対象期間は、日本と同じく暦年(1月から12月)となっています。
A.その年の1月から12月までの間に少なくとも183日以上シンガポールに滞在(仕事も含む)していた人
B.連続した2年間で少なくとも183日以上シンガポールに滞在(仕事も含む)していた人
C. 3年連続でシンガポールに滞在(仕事も含む)していた人
実務上多いのは、AまたはBに該当するケースです。
なお、Bは、9月にシンガポールへ駐在もしくは転職してきた方が、その年の9月から12月までの所得税を翌年の4月中旬までに納付する場合に該当します。
シンガポールにおける非居住者とは?
D.61日以上182日以下シンガポールに滞在(仕事も含む)していた人
E.シンガポール法人で働いていた日数が60日以下の人
D.は頻繁に出張に来ている方が該当するかもしれません。なお、日本とシンガポールでの租税条約では、Dの方を対象に一定の要件を満たせばシンガポールでの納税を免除する取り決めがあります。
居住者に該当した場合の納税
Aに該当した場合、その年の1月から12月までの所得に対して累進税率(0%から22%)を適用した税率を乗じた金額について、原則、翌年4月中旬までに申告書を作成して税務当局へ提出しなければなりません。
なお、シンガポールでは納税は申告時に行いません。シンガポール税務当局が申告の内容を精査したのち、後日納税すべき金額を示した納税通知書(Notice of Assesmentという書類です)を発行しますので、その発行日から1ヶ月以内に納付することとなります。
Bに該当した場合、連続した2年間それぞれの年について、居住者として扱われます。Aと同様に申告・納付をする必要があります。
Cに該当した場合、連続した3年間それぞれの年について、居住者として扱われます。
非居住者に該当した場合の納税
Dに該当した場合は、その年の1月から12月までの所得に対して、15%計算した金額と累進税率が適用されていると仮定した場合の金額をそれぞれ計算し、いずれか高いほうの金額について、原則、翌年4月中旬までに申告書を作成して税務当局へ提出しなければなりません。
なお、先ほどお話しましたとおり、租税条約による免税制度がありますので、こちらも検討する必要があります。
実務上は、税率については15%となるケースがほとんどで、また、一定の要件を満たせば租税条約による免税を適用できるケースもあります。
なお、非居住者に該当した場合の申告については、扶養控除などの所得控除適用ができません。
Eに該当した場合は、原則課税されません。
なお、DやEに該当した場合でも、シンガポール法人の役員に就任しており、その役員報酬を受け取る場合は、22%の税率で納税することとなります(報酬から22%源泉され、残額を受け取ることとなる)。
なお、日本居住者がシンガポール法人の役員報酬を受け取っている場合、日本の所得税申告時に外国税額控除の適用を受けることができるケースがあります。弊社税理士などにお尋ねください。
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