はじめに
今回はシンガポールの個人所得税の話です。2014年度(2015年賦課年度)から住宅家賃の課税方法に改正があり、駐在員の所得税額が増加することがシンガポールで話題となっています。そこで今回はこの件についてお話しします。
基礎知識
会社から従業員に支給される給与・手当等に対して、個人所得税が課税されるのは理解できると思います。実はこの他に、従業員の住居の家賃を従業員に代わって会社が支払っている場合も、従業員に対して個人所得税を課税することとなっています。
従業員の住宅に関する所得税改正の内容
シンガポールでは会社が契約主体となり家賃の支払いもすることが多いので、そのケースでご説明をします。
改正前は、住宅家賃以外のすべての課税所得の10%相当または家賃の実額のうち、どちらか小さい方が課税対象となりました。実務上、ほとんどのケースで家賃の実額のほうが大きいので、住宅家賃以外のすべての課税所得の10%相当が課税対象となっていました。言い換えますと、いくら家賃が高くても税金の計算は家賃を除く個人所得税の1.1倍以上にならないという課税上の上限がある制度となっていました。
しかし、改正後は不動産の年間の評価額(Annual Value)金額が課税所得となります。この評価額は日本の国税庁に相当するIRASという機関から有料で入手することとなりますが、家具が一切備え付けられていない住居の年間の家賃と近似の金額です。
従いまして、改正前は課税上の制限がありましたが、改正後は年間の評価額(Annual Value)が高ければ高いほど、すなわち家賃が高ければ高いほど個人所得税も高くなる制度となりました。
しかも、シンガポールの家賃は世界屈指の高さです。改正の影響は大きいです。
計算例
通常は、家具も考慮して税金計算をしますが、今回はわかりやすくするため家賃だけで計算してみましょう。
家具が一切備え付けられていない住宅家賃が年間4,500,000円、住宅家賃以外の課税所得が10,000,000円としましょう。
改正前は、10,000,000円×10%=1,000,000円<4,5000,000円で1,000,000円が課税所得となりました。
家賃がどんなに高くても住宅にかかる課税所得は家賃以外の課税所得の10%相当額以上にはならないのが改正前の計算でした。
しかし、改正後は、おおよそ4,500,000円全額が住宅にかかる課税所得となります。もちろん実際はIRASより不動産の年間の評価額(Annual Value)を入手して計算しますが。
仮に所得に対する税負担割合が6%だとしても(4,500,000-1,000,000)×6%=210,000円納税額がアップします。
納税資金の確保に注意・日本法人側の理解も大切
シンガポールは毎月のお給料から源泉徴収がなく、一括で納税するため、納税資金の確保には気をつけないといけません。昨年から申告している駐在員も2014年12月末の計算では税額が増えますのでびっくりすると思われます。
また、私見ですが日本法人側もこの事実を認識しておいた方が良いでしょう。駐在員の現地の税金を日本法人が負担するケースが多く、たとえば予算を作成する時は会社の負担額がどれだけ増えるのかは把握しておく必要があると思われるからです。
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